リプレイ1回目(9)
月日が流れるのは早い。あれから4年の月日が流れた。シュンも15歳となった。低かった身長は順調に伸び、今では172ほどはあろうかというほどだ。日々の運動がシュンの体から余分なものをそぎ落とした。パワープレイではない剣術のためか、筋肉隆々ではなくどちらかというと細身、引きしまった身体をしている。
服を着ればその身体も隠れ、整った顔立ちから黙っていれば寧ろはかなげな美少年と言えなくはない。
そうでないことはこの町なら誰でも知っていることだったが。
フリューゲルらはあれから半年ほど村に滞在してからこの街を離れた。避暑にしては長い長い期間だったが、シュンは顔を合わせないように日々修行に邁進するのみだった。
しかしその修行の日々もいよいよ終わりを告げようとしていた。シュンはそろそろこの町から出て行くことを考えていたからだ。
この町ではこれ以上強くなれない。それがシュンの偽らざる思いだった。シュンの剣術の腕前はそこらの大人にも負けぬほどになったし、実はウルア師匠にも勝ち越せるようになっていた。
始めて師匠から一本とったときは、弟子の成長が嬉しいのか笑みを浮かべていたのだか、最近は負けこすとどんより沈んで手を付けられなくなった。「もうシュンには私が必要ないんだ。捨てられるんだ」といっていじける始末である。
なにより一番驚くべきは気の上達の方であろう。才能にも恵まれシュンは二つ目の丹田をみつけるに至っている。気の使い方に関しては一流の一歩手前まできている状態だった。
そんなシュンもこの街で一番強いかというとそうではない。結局ムーアさん(ウルア師匠より強かった人)には五戦して一勝すればよい方である。
これだけ差があるのは、地力の差。つまり元々の力の差が出てしまっているのだ。前も言ったように気の力は掛け算の力である。5と10の基礎力がある人が同じ10倍の力出したら50の差が出てしまうのだ。
気の力では多少ムーアを上回っていたが、地力の差があり過ぎた。
そしてなにより一番に不足しているのは実戦経験だろう。正直本当の殺し合いになったら、師匠に勝てる気はしない。傷はつけられるからもしれないが、最後に死んでいるのは自分であろう。盗賊討伐についていったことはある。その時人を殺したこともあったが、今シュンに必要なのは命を賭した実力が伯仲した死合い(勝負)であった。
それをウルアも悟っているのか、最近は彼女がまだ冒険者で、国のあちこちを回っていたときの話をしてくれるようになった。