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日常のトマト

作者: ラム肉
掲載日:2026/04/20

僕は一般的な家庭菜園が好きな男子大学生。

今日も穏やかな変わらぬ日常を送っている。


――こいつらさえいなければ!


「うーん、今日のボクもいい艶をしている…」


「キモイ、ナルシスト、枯れろ。」


「おいおい、それだと俺らも巻き添えだぞ」


こいつら――喋るトマトがいなければ…


出会いは数日前。

突然、僕が室内で育てていたトマトが喋り始めた。


何を言っているか分からないと思うが…僕もわからない。


だがそんな僕にも一つ分かったことがある。それは、喋る野菜はうるさいということだ。


「おい人間、早く水をくれ。早くしないとボクの艶が無くなってしまう」


「…無くなればいいだろ。」


「なんだって?ボクの魅力が分からないとは、それでも君はトマトかい?」


「魅力なんかないだろ。私はお前のキモさならよく知ってるよ」


「まぁまぁ、二人とも落ち着いてくれ」


と、まぁこんな感じで毎度毎度二つのトマトが喧嘩して残り一つのトマトがなだめている。

一つのトマトだけ苦労が絶えないな、と流石に同情する。


トマトだけど


「おい人間まだか」


「はいはい、少し待ってね」


僕は土が飛ばないようにそっと水をあげる。前何も考えず飛んだ時は一日中グチグチと愚痴を言われた。愚痴だけに。


「ペロッ、この水、中性?!」


「何回やるんだい、君のそのネタ」


「いいでしょ!私だってたまにはボケたいのよ」


「…痴呆か」


「なんだとこのナルシスト!」


「いや、まぁ。俺らの成長度合い大体一緒だから。それだと俺らも痴呆になっちまうぞ」


「そ、そんな。ボクが…痴呆?」


そこじゃねぇだろ。


「そこじゃねぇだろ、私の痴呆ごと否定しろよナルシスト」


と、まぁこんな感じの生活、これが今の僕の日常だ。慣れると案外気にならなくなってきてね。


「じゃあ、そこの人間に聞いて決めてもらおうじゃないか!」


「あぁいいよ、もちろん私が正しいけどね!」


前言撤回こいつらめんどくさい


「さぁ人間!私とこいつどっちが正しい!」


「おい人間、こいつが痴呆だよな?」


「やめろお前ら。ほら、人間も急に難しい問題聞かれて困ってるじゃねぇか」


いやまぁ、困ってるんだけど、困ってるんだけど!…違うんだよ。


「なんだ、頭の悪い人間だな」

「なんだ、頭の悪い人間ね」


「おいお前ら…」


そうか、言いたい事は分かった


「お前らの生殺与奪は僕次第なんだけどな」


「いや、ほんとすいません。これからも優しく賢い人間でいてください。あ、水ありがとうございます」


「いやほんと、いつも感謝してますよ。あ、靴舐めますね。私、舐めれる舌ないけど」


「「お前も謝れぇ!」」


「なんで俺まで…俺なんもしてねぇぜ…」


二つの圧に負けたのか渋々謝り始めた


「…すいません、俺もいつも感謝してます。美味しい水に丁寧な世話ありがとうございます」


不憫な…


「それじゃ、僕は大学行くから。喧嘩するなよ」


そう言い残し僕は家を出た、いつも通りトマトのいる窓際の、窓を開けていた事を後悔するとはこの時は思ってもみなかった。


帰ると何やらトマト達が騒がしい、また喧嘩かな。

そう思い部屋のドアを開けると離れていくバサバサッと聞こえる羽音、黒い影。


「あ、人間!今カラスがきて、」


「あぁ、分かってる。あのカラス許しはしないぞ。」


「「人間…」」


「俺のとっておきのクッキーを食べやがって!」


「「え、そっち?!」」


「あいつが、トマトが、カラスに咥えられて持っていかれたの!」


「あ、あぁそうなんだ!何とかしてくれ人間、頼む!」


すると外から声が聞こえてきた。


「俺の事はいい、だが二人のことは美味しく食べてやってくれ」


カラスはトマトを咥えながらすぐそこの電線に止まっていた。


「そんな、嫌だよ!君もいい艶が出てきたばかりじゃないか!」


「そうよ!あんたがいなかったらこいつの異常さに

拍車がかかっちゃうわ!」


「は?」


「いや、俺の事はいいんだ。どのみちもう助からねぇだろう。人間、そいつらの事、頼んだぜ」


そうトマトが言い切ると同時にカラスは飛び立って行った


「じゃあな…達者で過ごせよ!」


「「「トマトー」」」


ペッ――ポチャ。プカプカ


「「「「…」」」」


「人間今だ!早くあいつを助けるんだ!ふふっ。」


「今なら!ふっ。今なら助けられるわ!」


カラスは意外とすぐにトマトを落としトマトは小さい用水路に落ちた。僕が取りに向かうと顔を真っ赤にして、元からか…


「頼む人間、いっそ、いっそ、殺してくれ」


「そんな事!ふっ、出来ないよ!んふふ、君を見捨てるだなんて!」


「おめぇも笑ってんじゃねぇか人間!」


僕とトマトは家に帰った――


「「ただいま」」


「「おかえり」」


もう数日しか無理だろうが、もうしばらく隣で仲良く喋るトマトを眺めるこんな日常が続くのもいいかもしれないな。良かったなトマト…


「俺の事はいい、だが二人の事は美味しく食べてやってくれキリッ」


「いや、俺の事はいいんだ。どのみちもう助からねぇだろう。人間、そいつらの事、頼んだぜキリリッ」


「辞めろ、二人とも。もう辞めてくれ…」


不憫な…

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