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 ガレスの密室下での死という衝撃を皮切りに更なる真実が明るみになった。

 ガレスは我々の敵だった。それによってラザルの死もガレスによるものだったという説が濃厚となった。


「ガレスはずっと機会を狙っていたのだろう。魔王討伐のパーティーが確定した頃合いで一人ずつ、もしくは全滅を狙う。思えばこの雪山を超えるルートもガレスの提案だった。この山小屋の存在も知っていたのだろう」


 地理を把握している彼の事だ。時、場所、機会に応じて我々勇者一団を消す手段はいくらでも持っていたと思われる。


「だが、結局まだ分からない事ばかりだ。ガレスが殺されるに値する人間だったとして、誰が殺したのかは分からない。ここにいる全員が否定している以上、誰かが嘘をついているか、謎の五人目かのいずれかが犯人ということになる」


 一体誰が。謎はいまだに解けていない。

 もはやガレス殺害について嘘をつく理由も分からない。ヴァルドかリシアが犯人だったとしても咎める事はない。だが彼女達も犯人ではないと言う。


 仮に彼女達が犯人であれば、私と大きく違う事がある。

 魔法だ。彼女達には私にはない手段を持っている。しかしこの点は既に否定されている。


「ガレスの死は短剣による刺殺。もし殺すのなら、わざわざ物理的手段に講じる必要もない」


“道具扱いするならお前を燃やして薪の代わりにでもしてやろうか?”


 冗談めかした会話が懐かしいが、人を殺す手段としては容易な攻撃魔法はいくらでも持ち合わせている。


「それに、同時に二つの魔法を発生させる事はできない。夜中の間、暖の為に使った火球がある限り、あたしには他の攻撃魔法は出せない。当然、火球でガレスを殺したわけでもない」


 これについてはリシアも同様の事が言える。

 彼女はシールド魔法を山小屋全体にかけている。その間別の魔法を使用する事はできない。もっともリシアの場合攻撃魔法は使えないのでヴァルドとは状況が異なるが。


「ただ、私の場合位置関係上ガレスさんを物理で殺すことは……」


 スクエアの導線上、確かにリシアがガレスに近づくことは少々難しいだろう。それでいえばヴァルドの方が機会には恵まれているが、結局先述した諸々の理由で決定打にかける。


「リシア。一つ聞いてもいいか?」

「はい」


 何も分からない。ただ一つ思ったことがあった。


「何故スクエアを提案した?」

「え?」


 スクエアというものを私は聞いたことがなかった。反応からしても私以外の皆も知らないようだった。


「それは、状況下において最適じゃないかと思っただけですが……」


 言うものの、リシアはどこか言い淀んでいる様子だった。

  

「何かまだ、言っていない事があるんじゃないのか?」


 リシアにぐっと一歩迫る。彼女はすっと顔を伏せた。

 私にも分かる。彼女は何か嘘をついている。


「ガレスは敵だった。君が犯人だとしても咎める理由はどこにもない」

「私ではありません!」


 今まで聞いたことない悲鳴のような大声。

 日頃纏う空気と同じほどに柔らかい声音はまるでない、劈くような強烈な否定だった。そしてその言葉に嘘はないようだった。


「……ただ」

「ただ?」


 しばしの沈黙。ヴァルドが追求しようと迫ったところを私は制して彼女の言葉を待った。 

「ラザルさんが教えてくれたんです」

「ラザルが?」

「はい。そういった逸話があると」

「逸話?」

「聞いた事がない話だったので、きっとラザルさん達の間に口伝か何かで伝わったものだと思います。現にラザルさんも魔術や魔法といった類が使えるわけでもなかったようでしたし」

「リシア、分かるように説明してくれ」

「降霊術です」

「降霊術だと?」


 ヴァルドが声を上げた。リシアは曖昧に頷く。


「あくまでラザルさんに聞いた話です。昔スクエアを行った者がいて、死んだはずの五人目が現れたと」

「馬鹿な! それじゃ今この空間には訳の分からない亡者が紛れ込んでいるとでも!?」

「違うんです!」

 

 リシアは大粒の涙を零していた。


「その話を聞かせてくれた時、ラザルさんこう言ったんです。”もし俺が死んだら、スクエアで呼んでみてくれよ”って」

「ラザルが……」

「本人も半分冗談だったと思います。でもラザルさんが消えてしまって、小屋の中の状況を見た時にこの話を思い出したんです」

「だから、ラザルを呼ぼうと?」


 こくりとリシアが頷いた。


「蘇生魔法は禁忌です。そもそも私程度の白魔導士では扱えも出来ませんが。だから、大切な仲間を生き返らせる力はありません。でも、もしスクエアという儀式が本当に死んだ仲間を呼べるのだとしたら……私は、ラザルさんとまた会いたいと思ったんです」


 リシアはぽつぽつと涙の雫を床に零した。


「ラザル。いるのか?」


 到底信じられない話、とも思わなかった。

 逸話の全てが実際に存在するものとは言えない。ただ、魔物、魔法、儀式といったものが存在する世界なら、理屈を抜きにしてもあり得ても良い世界だと思った。


「ラザル。いるなら返事してくれ」


 スクエアが本当に降霊術だったとしたら、一つ繋がる所があった。

 一週目。ガレスはまだ生きていた。そしてありえないはずの二週目。ここでガレスは死んだ。


 私が触れなければ、二週目以降はありえなかった。

 私が触れた誰かの肩。あれはーー。


『気付くのがおせぇんだよ、間抜けな勇者様よ』


 火球が急に不規則に揺れたその刹那、視界が明転した。そして同時に聞き慣れた皮肉っぽい笑い声が響いた。

 

『また会えたな、お前ら』


 紛れもない、死んだはずのラザルの声だった。

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