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 ぱちぱちと火球の心地良い音が暗く静かな小屋の中に響く。部屋の隅で縮こまりながら目を閉じ眠りに身を委ねる。

 火球の音に混じって断続的にガレスの豪快ないびきが響いていた。男同士なので宿や野宿で眠りを共にする機会は多くいまでこそ慣れたものだが、最初の頃はあまりの五月蠅さでまるで寝付けなかった。女性陣二人は果たしてちゃんと寝付けているだろうか。


『スクエアはどうでしょうか?』


 リシアからの提案で私達は今それぞれが部屋の四隅で眠っている。


『何かがあった時の為にすぐ行動出来るように、一人は必ず起きておいた方が良いかと』


 彼女の提案はこうだ。一時間ごとに順番に反時計回りに四隅にいる相手を起こす事で緊急事態に備えるというものだ。

 最初ガレスは自分達が起きているからそんな必要はないと反論したが、険しい雪山を超えていく為に体力の温存は必須という最もな意見は承諾せざるを得なかった。

 


●スタート

     壁


 ①リシア ←  ④レオン


壁  ↓       ↑   入口


 ②ヴァルド → ③ガレス


     壁


     

●一人目

     

   ×   ←  ④レオン


   ↓       ↑  


 ①リシア

 ②ヴァルド →  ③ガレス


     

 


 ーー寝なければ。


 心身共に疲れは溜まる一方だ。気付けばすんなりと私は眠りに落ちていた。







 ゆさゆさ。

 

「……ん?」


 身体を揺すられる感覚。曖昧な意識が一瞬で覚醒する。


「ありがとうガレス」


 一時間が経過したらしい。ぱちぱちと鳴る火球の音。部屋はほんのりと暖かい温度が保たれている。ただ光という点では頼りない。魔力の温存の為と力を抑えた火球は灯りまでの役割は果たしておらず、部屋の隅まで離れてしまえば目の前の自分の掌すら視認できない。


 あまり音を立てて周りを起こしたくはない。静かに這うように動き自分の場所をガレスに譲り、気を引き締め眠りにつかないよう一時間を数えはじめた。ほどなくして横からまた豪快ないびきが聞こえ始め思わず小さな笑いが零れた。


 ーーさて、寝ないように気を付けなければ。


 私は目の前に聖剣を置き、腰に備えた短剣を握りながら意識を集中させた。





 




「レオン、これはどういう事だ」


 太陽が昇り朝を迎えた。襲撃を受けることなく無事一夜が過ぎた。

 はずだった。


「どうして……」


 困惑するヴァルドと悲壮に暮れるリシア。

 もう誰も死んでほしくない。そう願ったばかりだったのに。


 部屋の隅でガレスは仰向けで倒れていた。

 心臓を貫くように、彼の胸には真っすぐ短剣の柄が突き出ていた。


「お前が、殺したのか?」


 二人の視線が突き刺さる。咄嗟に自分の腰に手を当てる。


 ーーない。


 ガレスの胸に刺さった短剣は、紛れもなく私のものだった。

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