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第一話 盗人獣人


第一話


 今日も僕は盗みをする。それでしか生きていけないから。大丈夫僕は獣人だ、そこらの人間に追いつかれることはない。今日も何事もなかったかの様に家に帰る。


「ただいま、母さん。」


 僕がそう言うと、母さんはベットの上で身を起こし


「おかえり、プレ」


「今日も仕事疲れたー。ほら母さん八百屋のおじさんからいくつか果物を貰ってきたんだ。あとで剥くから食べてから、薬を飲みなよ。」


「ごめんね…」


 そう言うと、また横になった。母さんは僕が盗みを働いている事に気づいているのだろうか?


 この世界には昔、主に人間、亜人(エルフ、ドワーフ、獣人妖精)、魔族、三つの人型の種族が存在した。だけど今から100年ぐらい前に存在した、超常的な力を持つ恐怖公と呼ばれる支配者が人間と魔族、それ以外で住む世界を分けようとしたそうだ。でも恐怖公に対抗する力を持っていた、一部の亜人がこの世界に取り残された。それから、人間の亜人に対する差別が広まった。


 僕は別の種類の獣人を両親に持つらしい。でもどっちも僕が生まれてすぐに死んじゃったらしくい。僕は両親の知り合いだと言う人に引き取られた。それが今の母さんだ。それから、実の子でもない僕を12年間も本当の子供の様に愛情を込めて育ててくれた。


 でも、そんな母さんも去年、大きな病気になってしまった。だから、母さんの薬代を稼ごうにもこんな田舎じゃ獣人に対する差別も酷くてまともに雇ってくれるところがない。だから僕は母さんに内緒で盗みを始めた。


 今日も今日とて、僕は盗みを働く。今日は珍しくこんな田舎に裕福そうな奴がいた。さりげなくそいつの横を通り財布を盗んだ瞬間、全速力で走り始める。だけど僕が財布を盗み走り始めた瞬間、僕は腕を掴まれた。だけどこんな事は前にもあった。でも僕は大の大人3人がかりにも負けないほど力は強い。僕は体を捻りそいつの頭に蹴りを入れる。その男はびくともしない。


「おぉー坊主なかなか良い蹴りだな何もんだお前?」


 僕の蹴りの勢いで僕のフードが外れ獣人特有の耳が出てくる。


「おぉー獣人かぁ、だとしてもお前筋がいいなぁお前俺と一緒に来ないか?」


「あんた、何者?」


「俺は冒険者のローサだお前は?」


 冒険者かこの辺りじゃなかなか見ないな


「プレだ。」


「よろしくなプレ」


 彼は僕の方に手を伸ばしてきた。だが僕はその手を握らず、質問を投げかけた。


「なんであんたみたいな強い冒険者がこんな田舎の町に来たんだ?」


「この町のどこかにいるって言う元冒険仲間を探しにな」


「どんな人なの?」


「魔術師の女の子…いや、まーもうおばさんでな、パレンって言うんだけど知ってるか?」


 パレンだってそれは母さんの名前だ。


「えっ…魔術師かどうかはわかんないけど、パレンって言うのは多分僕のお母さんだ。」


「マジか!て事はお前が例の獣人のガキか」


「お前の母ちゃんはな元々俺の仲間で、その後この国の宮廷魔術師になったんだけど、ガキを引き取る事になったつって仕事を辞めたんだよ。」


 母さんは滅多に昔のことを話さない。そんな過去があったのか。


「母さんってそんな凄い人だったんだ。」


「だから、早くお前ん家案内しろ。」


 彼は僕を急かす。でも彼はきっと病気のことを知らない。


「良いよ。でも母さん去年から重い病気になっちゃって。」


「本当か?」


 神妙な顔をして僕に聞いてきた。


「うん。」


「だからお前は盗みをしてたのか」


 少し優しい顔をして男は言う。


「うん。ごめん」


「お前の母ちゃんの病気は俺がどうにかしてやる。行くぞ。」


 僕は彼を自分の家まで案内した。


「母さんただいま。」


「あら、今日は早いわね」


「よっパレン久しぶりだな」


「その顔ローサ、老けたわねぇ」


 母さんの声が珍しく少し大きくなる。


「そりゃお互い様だろ。」


「それでなんのようなの?」


「王様からこの前呼ばれてな、攻略してほしいダンジョンがあるんだとよ。でも、その様子じゃできそうにないな。」


 なるほどだから母さんを探してたのか


「代わりにこのガキ貰ってって良いか?」


 そう言って僕の頭に手を乗せる。僕は振り返って驚いた表情を見せる。


「こいつオクナインさん達のガキだろ素人だがなかなか筋がいい。」


 彼は笑顔で言う。


「こいつはいい冒険者になるぜ。」


 母さんは僕のことを心配そうに見ながら


「プレは行きたいの?」


 僕は覚悟を決める。


「うん。母さんには黙ってたけど、僕仕事をしてなんかないんだ。僕、獣人だから誰も雇ってくれなくて…」


 そう言うと母さんは驚いた顔をしてその後泣きそうになりながら


「ごめんねぇ」


 とだけ言った。


「でも昔読んだ本に書いてあったんだ。ダンジョンにはお宝がたくさんあるんでしょ。そのお宝があればお母さんの病気を治せるかもしれないから。僕ダンジョンに行きたいんだ。」


 僕もなぜだか泣けてきた。


「良い感じのこと言ってるとこ悪いんだけど、パレンの病気なら多分治せるぞ。」


 ローサは申し訳なさそうに僕らの会話に入り込んできた。


「俺は王様お抱えの冒険者だからな金ならいくらでも持ってる。パレンは仲間だ、良い病院も紹介してやるし、治療費も出してやるよ。」


「だから、俺と一緒に来いプレ、お前ならきっと強くなれる。」


 彼はまた僕の方に手を伸ばした。僕は迷わずその手を握り


「うん、あんたに着いて行くよ。」


 そうして僕はローサの仲間になった。ローサは次の日魔法で母さんを王都の病院まで運び、入院させてくれた。


「よしっ、これでお前の心配事は無くなったな。これから一ヶ月みっちり修行して、一緒にダンジョンに行くぞ。」


「うん。」


 なんだか僕の人生が大きく動き始めるそんな気がした。


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