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裏の《百物語会》 ― 人魚のはなし ー  作者: ぽすしち


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もっとおかしな空の色




 三、




    つぎの日も、空はおかしな色をしていた。




 いや、まえの日よりももっとおかしな色だった。


「嵐じゃねえんだ。きのうだって沖は変わらなかったしな。ただよお、魚はなんだかとれんかったな。親方のみたてでも、どこもとれんかった」

 ゆうべ漁から帰ってきた夫はそういって、あたしがとってきた貝をひとつずつ匂いをかぎ、食べるものと捨てるものをわけた。



 そのおかげで毒のある貝にあたらなかったのかもしれない。




 きょうも男たちは漁へ出る。



 親方はあまりでたくなかったようだが、海も荒れていないのにきのう少ししかとれなかったので、どうにかきょうこそ、ということになったのだろう。



 貝にあたった者の世話は残った女たちが寄り集まって手分けする。


 この浜の者たちは、むかしからずっとそうやって暮らしてきた。


 だから、タキちゃんが村長の家に嫁いだ時、みんなタキちゃんのおかげでなにかいいことがあるんじゃないかと待っていた。


 待っていたが、なにもなかった。


 それは、タキちゃんの家がなにも変わっていないのをみれば、わかることだった。

 おまけにタキちゃんのととさんもかかさんも、タキちゃんの下の妹や弟に「タキは親不孝モンじゃ」といつもきかせていたようで、それはすぐに、浜のちいさいこどもたちまでくちにするようになってしまった。



 だから、あたしにだけ米や野菜をくれることを、あたしは浜のだれにも言っていない。


 だって、あたしだけがもらっているのなら、タキちゃんの父さん母さんよりよくしてもらっていることになって、それはきっと、よくない。




 まえに一度だけ、「この米、タキにもらったのか」と夫にきかれたことがある。

 だけど、首をふってみせた。

 すると、「タキがこのクズ米をよこすンは、おまえをばかにしとるからじゃ。もうもらうな」と怖い顔で火にかけた鍋をにらんだ。


 でも、たまには団子鍋じゃねえものが食いてえと言ったのは夫だ。


 そうは思ったが、それから米をもらっても夫にだすのはやめた。


 夫の漁場が、きょうは遠方だというときに、ひとりでそっと食べている。




 タキちゃんが米や野菜をくれるのは、あたしをばかにしてるからじゃなくて、きっと、忘れてほしくないからだ。


 『親不孝モン』のタキちゃんには、もうだれも話しかけないから。



 


 きょうの漁も、どうやら遠くまで出るようだった。



 嵐ではないのに、空の色はずっとおかしい。


 沖の方は、さらに濃く、気味の悪い色をしている。



 男たちは気休めに海に塩をまき、海の神様の祠に酒をあげてから、漁へとでていった。












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