だれをうらなう
「ち、ちがう、タキちゃん、あたしもあんとき薬をわたそうとおもうたんじゃ。でもな、むかし、村長のところのウラカタをする婆様にいわれたことをおもいだしたんじゃ」
『 おまえはそれをこどもにやろうとするが、やめておけエ。
いまと変わらず用心しておけえ、用心しておけえ 』
「 ・・・ああ・・・。なんじゃ・・・、あんたに言われとるおもうたん?あんたに?だって、『いまとかわらず用心』しろゆうたじゃろ?それを、・・・おもいだして・・・?」
タキちゃんが泣きながらいきなりわらいだす。
わらいがおおきくなって、こえをだしてわらい、からだをゆらし、くびを前にふってわらう。
「 はあ?どうしたってあんたじゃなかろオよオ、それをおもいだしたア?あんたがア? ―― あんたも、あの婆さんのゆうたことを?『用心』して薬をわたさんかった・・・」
ひどく楽しそうにわらい、あたしをみた。
「 ・・・うちも、ほんとうはあの肉入りの粥なア、うちの子にやろうかどうか、ものすごオまよおたンよ。殿様の薬じゃゆうたら、きっとからだにいいもんじゃ。 ・・・だけどなあ、あのウラカタの婆さまのことばをおもい出してなあ・・・。ありゃあ、あんたにじゃなくて、こっちにむけて言っておったんよ。ほら、うち、むかしっから『用心』しとるから。 ・・・あんたが、やっぱり薬をくれんから・・・あの、『肉』いりの粥も、まずはあんたにやって、どうなるかみて、『用心』しようおもうてなあ。だって、 ―― あんたより、あの《薬売り》のほうが信じられるとおもうたんよ」
タキちゃんはこえをひそめるようにして、あたしをわらった。
「 そうじゃろ? あの《薬売り》は、ここで『人魚の親子』がとれたのをおしえてくれて、うちがひろったこどもの頭も、その『人魚の子ども』じゃゆうて、あんたらがかくしてたことを教えてくれた。ひろったあの子どもの頭もな、あんな岩場にうちあげられておったのに、顔にひとつも傷がなかったんよ。ふつうの水死体じゃねえとおもうたわ。 ―― たくさん嘘をついとるのは、あんたのほうじゃ」




