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裏の《百物語会》 ― 人魚のはなし ー  作者: ぽすしち


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23/32

ほりかえして

。。ご注意を。。  残虐な表現などがございます。。。





 八、



   小舟が島についても、どちらもくちをひらかなかった。



 海の神様がまつられるほこらは、島にある大きな岩が割れたような中にある。海が荒れて高波になろうとも、波はこの祠まではこない。


 その、祠のうしろにまわったところへ、ニンギョの親子は埋められていたのだ。



「ああ、ここか」


 土と砂がまじったそこには、線香がそえられている。タキちゃんはそこへかがみこんだ。




「 タキちゃん、もう、むくろはのこっとらんよ。あの男がほりかえして、包んでもってかえりよったんじゃ。もう、なにものこっとらん」




 あのとき《薬売り》といっしょにここにきて、あの男が掘り返すのをそばでみていて、でてきた女の骸をめにしたときに、これはニンギョなんかじゃない、とすぐにおもった。


 なにしろ、ほりかえしたときの匂いはすさまじかったし、肉はどうみても腐っていた。



 だがあの男は「この匂いは人魚の死骸にまちがいない」といい、この女の人魚が腐りはじめているのは内臓をフカ(サメ)にやられたからだと、知っているようなことをくちにし、いっしょに埋められていた布にまかれたちいさなむくろをとりだすと、鼻を近づけ「おもったとおり」と、うれしそうに布をひらいた。



 頭のない、子どもの人魚のからだは、ひとつも腐っていなかった。




 その、こどもの骸をあの薬屋は木箱へしまった。


 穴に残った腐ったほうの骸は、驚いたことにひきずりだして、海へほうった。

「 みたかい? 肉は腐ってるようでほんとうにはまだ腐ってねえんだよ。骨にしっかりくっついてて、ひとつもはがれなかっただろオ?これをあとでほりかえして、干して売ろうなんてやつができてきたらこまるからねエ。 商売敵しょうばいがたきはいないに越したこたアないよ」


 だから、この穴にはもう、ほんとうになにも埋まっていない。







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