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おねがい
空の色もいつもとおなじ。
葬儀も無事におわり、男たちはまたいつものように漁にでた。
ここ二日、とれた魚がほとんどないので、女たちは村長のところにゆかずに浜のちかくでまた貝をとり、海藻をとってそれをわけあい、家にもどった。
貝をみるたび、タキちゃんのところの死んでしまった子を思い出す。
これから先もずっと、思い出すだろう。
あのときよみがえった婆様の声にしたがって正しかったのか?
トン
戸がたたかれて顔をあげたら、あけてあったそこに、タキちゃんが立っていた。
「 ・・・・た・・・」
「なあ、お願いがあるんよ」
「 な、なに?」
タキちゃんはやつれた顔で、すこしわらっていた。
「 あのな、海の神様の祠がある島に、行きたいんじゃ」
「祠の、島? ・・・どうして?」
「ちょっとまえ、嵐があったあとに、この浜にあやしい《薬売り》が寄らんかった?」
「 く、・・・すりうり? む、村長のところに?」
村長のところにはよらないといったくせに。




