表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

娘の生きづらさを否定し続けた私

作者: 趣味C

娘は、(母親)の事を思い出せなくなった。

「お母さん、今日は何して遊ぶ?自分、お母さんの手作りのハンバーグが食べたいなー」

大きなくまのぬいぐるみに抱きつきながら、今まで私に見せたことのない、笑顔で甘えている。

娘には発達障害がある、社会人になってもまともに働けなかった。

私にも発達障害がある、私は、負けなかった。冷たい環境で頑張って生きてきた。

だから、娘にも、同じように。接してきた。

娘は、発達障害のせいだ。頭がオカシイから、上手くいかないんだ。ばかり言う。

私は言った。言い訳だと。発達障害のせいして甘えるな。発達障害で出来ないことがあるからこそ、逆に頑張ろうと思えるじゃない。

言い続けた。結果徐々に家族との溝も深まり、

とうとう娘が壊れてしまった。


「美香?お母さんは私、それは違うの」

「誰?他人の事が嫌いなんだ。話しかけないでよ。ねぇお母さん、あの人怖いよ。守ってよ!」

娘に私の声が聞こえない。

「お母さん、今日ね、絵を描いたんだ。お母さんを描いたんだ」

引き出しを開け、出したのは、私ではなく、くまのぬいぐるみだった。

「そんな褒めないでよ母さん、照れてしまうだろう(照)」

「美香!!!」

娘を勢いよく抱きしめる。

「ごめん、ごめん。ごめんねお母さんが悪かった」

娘が引きつった顔で、鳥肌が立っているのを嫌でも感じてしまった。

「やめて!本当にやめてよ!!気持ち悪い。あんた誰?この家にいるのは私と()()()()だけだよ!?分かったら出てけよ、ババア」


娘は私を突き放した。


「私人が嫌いなんだ。お母さん。あの人怖いからさ、もう此処から出ていこ?だってあの人、出ていくつもりなんてなさそうじゃん」


そう言って娘は、テキパキとリュックに荷物を詰めた。

大きなくまのぬいぐるみを抱きながら、無言で家を出ていった。

静寂の中で、扉の閉まる音が空しく、響き。

取り返しのつかない事を感じながら、涙を流す。


愛する娘を失った悲しみ。


「美香は帰ってくるよね・・・好きだった、ハンバーグを作って待っとくべきよね」


私はキッチンに行って、作った。愛情を込めて出来上がったハンバーグは、良いにおいがする。

私は待った。日付が変わっても。


でも娘は帰ってこなかった。


何日も一週間経っても帰ってこなかった。


警察に捜索依頼を出して一か月。でも見つからなかった。


「ごめんなさい、美香。もっと受け入れてあげればよかった」


後悔の念は日が経つにつれて、強くなる。


ポトポトと涙は終わりを知らずに落ちる。


『お母さん』


あの声は二度と



娘の口から聞けないのだろう。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ