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自覚

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「——はぁ」


「どうしたの? ため息なんて、珍しい」



 部活帰り、リビングの椅子に座ってため息をついた私に、キッチンで夜ご飯の準備をしていた母が問いかけてきた。


 カイトに話を聞いてもらって、少しは気持ちが晴れたと思っていたけれど、やっぱり部室にレンの姿が見えないとモヤモヤしてしまう。



「…お母さんはさ、お父さんと一緒にバンドやってたでしょ?」


「うん、そうだね」



 野菜を切る、心地いい音が部屋に響く。



「……もし、どっちかが別のバンドにいくことになったら…どうしてた?」


「ええ、何急に。引き抜きってこと?」


「たっ、例えばの話ねっ!」



 母は結構勘が鋭いから、話す時は気を付けないといけない。



「うーん……お父さんが望んで決めたことなら、応援してたかもしれないけど…」


「………」



 やっぱり、素直に応援できない私は、ダメダメなんだな…。



「まあ、でも嫌かな」


「……え?」



 続いた言葉に、驚いて顔を上げる。母はおちゃめな顔をして、微笑んだ。



「だってぇ、お父さんってとっても素敵な人じゃない? 他のバンドの子と仲良くしてるのとか想像したら、嫉妬しちゃう」



 片手で頬を覆って甘い声を出し、惚気はじめた。いつもはやれやれと思いながら聞くことでも、今日だけは違った。



(え……嫉妬…?)



「もちろん、それだけじゃないよ。お父さんと一緒にバンドやるのが、すごく楽しかったから、悔しいとか寂しいとかも思ってただろうねぇ…」



 私の中で脳内パズルががっちりとハマったような感覚になった。



(え、嘘でしょ。私…そうなの?)



「ただいまぁ」


「あ、おかえり~」



 頭の中がぐるぐるしている所に、父の声が遠くで聞こえた。母もバタバタと父の元へお迎えに行く。



「アイ、ただいま」


「おかえり…お父さん」



 母との話はそこで終わり、帰宅した父と三人で夜ご飯を食べたあと、イチャイチャする二人を横目に私は自分の部屋へ戻った。











 明かりもつけずにベッドの上に座る。


 さすがにそこまで鈍い私じゃない。

 ここまできて、自覚しないのはもう意図的だ。

 これは……紛れもない事実、認めざるを得ないこと。



「……気づくの、遅すぎ」



 ポツリと呟いて、乾いた笑い声を漏らした。











 私は……——レンが、好きだ。




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