表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/51

馬鹿野郎?

44


「アイ……」


 声の方に視線を向け、その姿を捉える。

 肩で息をした彼女が、そこにいた。少し怒っているような表情だ。


「……ごめん、カイくんと話してもいいかな?」


 アイは、メイコの方に目線をずらし、真っ直ぐにそう言った。

 メイコは一瞬戸惑いを見せたけれど、アイの言葉に大人しく立ち上がった。

 そして僕を見て、


「先輩、私…頑張ります」


 と宣言して、その場を立ち去った。

 僕は何も声をかけることができず、ただその背中を見つめていた。


「隣、いい?」


「うん…」


 僕の答えとほぼ同時に、アイは隣に腰を下ろした。


 今、アイの顔を真っ直ぐに見れない。それは、どこか後ろめたい気持ちがあるからだ。


 ここにアイが来た時、彼女が話す内容を察した。レンの差し金だろう。本当に、意地悪で優しいんだから。


「カイくん、バンド…続けないって、ほんと?」


「うん」


 アイの問いに、僕は頷く。いずれはバレることだ。


「っ! ど、どうして…? 部活引退するのは分かるけど、どうしてバンド続けないことになるの?」


 彼女は柄にもなく苦しそうな表情で僕を見つめた。どんな状況でも、しっかりと目を合わせてくるアイは、やっぱりすごいなと思った。

 でも、その言葉や行動に期待してしまうからやめてほしいとも思う。僕が、アイの特別な存在みたいに思わせないでくれ。


 内心そんなことを考えつつ、表情には出さなかった。アイの疑問に、僕はレンに聞かれたときと同じことを言った。


「……だから、僕はバンド続けないつもり」


「そんな…」


「それに…」


「?」


「アイのこと、僕の代わりに守ってくれる誰かが現れたからね」


(なんて…言ってみたり)


 僕が結構勇気を出して言った言葉に、アイは黙って俯いてしまった。


 やばい、さすがに気持ち悪かっただろうか。自分がアイを守ってきたみたいな言い方は、偉そうだっただろうか。


 ここからどうフォローするか、必死に頭を回転させて考えていたが、アイのとった行動によって、僕の思考は停止した。


 彼女は無言のまま、勢いよく立ち上がったのだ。


 勢いがよすぎて風が巻き上がっていたし、僕の見上げた視界からはアイのスカートの中が見えてしまいそうだった。

 思わず顔を逸らしていた。僕にそれは刺激が強すぎた。


 すると、アイは僕の隣から、目の前まで移動してきた。

 僕がもう一度彼女を見上げると、今度は仁王立ちで僕を見下ろすアイがいた。


 彼女の表情がどこか怒っているように見える。やっぱり、言い方が良くなかったな。



「カイくんのっ…馬鹿やろぉぉぉぉ!」



 怒りを含んだ泣きそうな声、この声を幼い頃にも聞いたことがある気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ