表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/51

和解

38

 その日の部活が終わり、リンとカノンを帰すと、部室には俺とアイ、カイトが残った。


「アイ」


 俺が彼女に話しかけると、背中を見せたままの彼女がこちらを見ずに、


「ん~?」


 と明るい声を出した。


「二人で話したいんだけど…」


「!」


 アイの肩が一瞬上がる。だが、こちらを見るわけじゃない。


「じゃあ、僕は下で待ってるね」


 カイトは俺が何をするのか察して、荷物を持ち上げるとそう言った。


「っ!カイくん……」


 彼女の視線がカイトに向く。助けを求めるような目をしているのだろうと、声色で分かった。


「ま、頑張って」


 そんなアイにカイトは少しだけ微笑んだ後、俺の肩を叩いて耳元でそう囁いた。そうして、カイトは部室から出て行った。





「………」


「………」


 アイと一緒にいるとき、こんなに沈黙が続いたことがあっただろうか。彼女と目が合わないことが不安で、悲しくて、寂しい。


「アイ、こっち…見て」


 俺はアイの背中にそう声をかけるも、彼女は振り向いてくれない。まあ、顔が見えない方が話しやすいか。


「じゃあ、そのままでいいから聞いて」


「………」


 彼女の無言を肯定と捉え、俺は話を続ける。


「俺がアイに言ったこと、忘れて欲しいんだ」


「!」


 俺がそう言うと、彼女はすぐにこちらを向いた。その顔は驚きと少しの戸惑いを入り混ぜたようなものだった。

 言葉が足りなかったと焦った俺は、すぐにこう付け足した。


「ごめん、告白したことを忘れて欲しいわけじゃなくて…。アイが俺を変に意識してるのは、俺が告白した時、これからアピールするとか言ったからだよね…?」


 ほとんど確信していたことだったが、一応疑問形で聞いてみた。

 俺が話しかけるたびに彼女が挙動不審になったのは、どんなアピールをされるのか、身構えてしまっていたからだろう。そして、彼女はその気持ちに応えることができないから、そもそも話をすること自体避けていたのだと思う。


 アイは俺から視線を逸らして、下を向いた。それは肯定を意味しているものだった。


「それを一旦、忘れて欲しいってこと」


「………」


「最初は、アイが俺を意識して狼狽えてるところを見るのが、正直面白かった。でも、今は…アイと今までみたいに話せなくなる方が嫌だって思った、から」


 何だか告白した時より緊張している気がする。それに、あの時より言葉が上手く出てこない。

 自分の気持ちを伝えるのって難しい。


「俺は…文化祭のステージを成功させたい」


 カイトのためにも、自分のためにも。


「だから、そのために…アイにはいつも通りに戻って欲しいんだ。……ごめん、自分勝手で」


 自分から告白しておいて、忘れて欲しいなんて言って、俺は今わがままを言っている。


「…………レン、は…それでいいの?」


 それでいいの?とは、俺の話を一旦忘れて欲しいと言ったことだろう。


「うん」


 俺がそう頷くと、アイは少しだけ目を伏せて考えた後、


「分かった。…私こそ、ごめんね」


 俺と目を合わせて、少しだけ微笑んだ。


 こんなに真っ直ぐ彼女の目を見たのは、久しぶりだ。

 最近は後ろ姿ばかり見ていたから、目が合っただけでも嬉しくて泣きそうになる。

 それを言ったら、またアイの様子がおかしくなってしまうだろうから、内緒だけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ