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欲しい言葉

33

 レンの話を聞いて、どう言葉をかけるべきかずっと考えている。それでも、


「えっと……レンは、頑張ったね」


 そう呟いた。もし自分が同じ立場だったら、そう言って欲しいと思ったから。


「……何でっ、何でアイがそれを言うんだよ…」


 レンは、目から零れ落ちた雫を手で隠しながら、鼻声で言った。

 彼の泣き顔を見たのは初めてで、泣かなそうな彼が泣く姿は、失礼ながら可愛いと思ってしまった。


「レン…」


 私の手はゆっくりレンの頬に伸びていた。

 レンは自然と覆っていた手を外し、私の手のぬくもりを静かに受け入れた。まるで小さな子供のように、それを見て私の心臓がギュっと掴まれた感じがした。



 その頬に、触れていたいって思った。ずっと……





 二人は視線を交わして、お互いしばらく見つめあった。


「…俺、間違ってないよな?」


 私の手に頬を包まれながら、震える声でそう言う。


「間違ってない…よな」


 そして、縋るようにそう続けた。


「間違ってない!」


 不安そうなレンに、私はきっぱりと言い切って、両手でレンの両頬を包み込んだ。




 しばらくして、レンの涙が止まってくると、包まれていた私の手の間をすり抜けて、そっぽを向いた。


「照れちゃったの?」


 私は面白おかしく、レンの顔を後ろから覗き込む。


「うるさい…」


 いつも通り返そうと必死になっているレンに、私は思わず吹き出していた。さっきまで二人で深刻そうな話をしていたはずなのに変な感じだ。でも、レンも落ち着いてくれたみたいで、安心した。


「じゃあ帰ろっか!」


 私はそう言うと、くるりと後ろを向いて歩き出した。すっかり当初の目的を忘れている。

 すると、


「…やる」


 歩き出した私の後ろ姿に、レンが声をかけた。


「え…?」


「バンド、やる」


「うそ……うそ! ほんとに!? …やったー!!」


 私は歩き出していた足を再びレンに向け、彼に向かって勢いよく抱きついていた。


「敵わないな……本当に」


 レンが耳元で何かを呟いていたけれど、嬉しい気持ちが大きすぎて聞こえていなかった。




 いずれ、レンのことをバンドに誘うつもりではいた。それがこんなに早く現実になるなんて。これからのことが楽しみで仕方なかった。

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