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交錯する想い

26


「う~ん美味し~!」


 アイはリビングで席に着くなり、さっさとパンケーキを口に運んだ。俺は彼女の隣に座ると、頬杖をついてそれを眺める。とても美味しそうに食べている。


「ねえ…レンさ、私の部屋来た?」


「!?」


 口にパンケーキを頬張りながら、思い出したようにアイが言った。

 何も悪いことはしていないのに、心臓が飛び出そうになる。自分の罪を突きつけられた時、こんな感じになるんだろう。


「………アイのこと、起こしに行った。でも起きなかった」


 たどたどしくも、嘘偽りなく話した。変なことはしていないのだから、緊張する必要は全くない。


「あーやっぱり? なんとなーくレンがいると思ったんだけど、夢なのか現実なのか分かんなかったんだよね~」


 アイの寝言はそういうことだったのだろうかと納得する。

 二人で話していると、リンとカイトも遅れてリビングにやってきた。


「アイは本当に起きないよね」


 カイトが話に加わりながら、アイの前に座る。その隣にリンも腰を下ろす。


「いやぁ、休みの日はいっぱい寝ないとね! カイくんにはいつも迷惑かけてます」


 アイが形だけ申し訳なさそうに、えへへと頭をかく。そのやりとりに、また俺は嫉妬している。醜い自分…


「レーン! これ食べ終わったら、練習しようね!」


 なのに、アイのこんな言葉でも俺の機嫌はすぐに良くなってしまうのだから、チョロすぎる。


「俺…先に戻ってるから」


「はーい!」


「レン先輩、俺も行きます」


「…………」





 防音室に入る。すぐ後ろにリンもいる。カイトは、ついてきていなかった。


「あの…レン先輩……」


 リンが言いづらそうに声を出す。


「何?」


「………すみません、何でもないです…」


「……?」


 リンの様子に不思議に思ったが、カイトが戻ってきたので、そこで話は終わった。







 **


「アイ」


「ん~?」


 レンとリンが出て行った後もパンケーキを頬張っていると、カイトが名前を呼んだ。食べ物を含んでいるので、なるべく口を開けないように返事をする。


「…明日の朝七時、海に来て欲しいんだけど」


「……え、起きれるかなぁ」


 パンケーキを飲み込み、そう返す。

 今日も遅くまで寝てしまったし、少し心配だ。


「起きてよ。大事なことだから」


 でもいつになく真剣なカイトの様子にただ事ではないと察する。


「分かった……今じゃダメなの?」


「うん、明日がいいかな」


「そっか、頑張って起きるね!」


 珍しいカイトの表情と言葉に、元気よく宣言した。


「ありがと。………アイ、は……僕のことどう思ってる?」


 不安そうに、声を小さくしてカイトがそう聞いてくる。


「え……?」


「いや、なんでm」


「好きだよ」


 どうしてそんなことを今更聞いてくるのか、分からない。ずっと一緒にいるのに。


「っ!! それって……」


 私の答えに、なぜか一瞬顔を赤くした後、すぐにいつもの笑顔に戻る。


「カイくんは私にとってお兄ちゃんみたいなもんでしょ? 家族家族!」


 そう言うと、どこか悲しそうに微笑んで、


「そうだよね」


 と言った。


「カイく」


「僕も…先に行ってるね」


「あ、うん……」


 その言葉にそれ以上言及ができなかった。様子が変だけど、踏み込んでほしくなさそうで、その理由が分からなかった。

 こんなに近くにいるのに、まだ分からないことがある。


「アイ、僕も好きだよ」


 部屋を出て行く直前に、カイトはそう言って笑った。

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