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【コミカライズ開始】身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです  作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第五章・祭り

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北九州も豊前も、まあだいたい筑紫島の範疇だし。

「ほっほっほ、気を抜いてはいかんぞ楓殿。あと残り四つだな」


 彼女は口元に手を添え笑う。

 私が距離を取って警戒態勢を取ると、彼女は袖を振って高らかに叫んだ。


「行け! 我が同志、ニホンカワウソたちよ!」


 海御前様の扇に導かれ、カワウソたちが俊敏に私を追ってくる。

 みんな赤い幟をつけている。平家だろうか。

 河童は緑のもの以外にも、カワウソっぽいものもいるらしい。

 彼らはふかふかと追いかけてくる。可愛い。


「コツメカワウソから覇権を奪うぞー」

「楓殿からリボンを奪ったら、我々を福岡市動物園に持ってってもらうのだー」

「ニホンカワウソにあらずんば平家にあらずー」

「大発見だー」

「そ、それは今真剣に研究者さんの迷惑になりますーッ!」


 可愛い見た目でありながら動きは俊敏で、かつ言ってることは結構過激だ。


「それっ、九月蚊帳!」


 彼らは叫びながら、網のように私に蚊帳をかぶせてくる。

 海御前さんが解説する。


「九月にも蚊帳を出してるとよくないですよという、筍の産地、合馬のあやかしだ!」

「うわー、教育的なあやかしーッ!」


 蚊帳はごそごそと動いて私を捕らえようとする。


「ごめんなさい! ちゃんと衣替えや布団の入れ替え頑張るので許してください!」


 私は彼らの隙をついて、はやかけんを構える!


「はやかけんビーム!」

「効かぬ! 九月蚊帳の中は強力な結界となっているので、ビームを飛ばしても効かぬ!」

「えーん、かくなる上は鈴に頼るしかない!」


 私は神楽鈴を振り回しながらやたらめったら鳴らす。もうそれしか対抗策がない。

 するともがく私の動きが巫女神楽判定となったのか、急に九月蚊帳さんが緩んだ。

 緩んだところで、私は九月蚊帳さんの中から脱出。

 九月蚊帳さんと河童のカワウソさんたち、そして海御前さんに向けて親指と人差し指でカードを構えて、打つ!


「はやかけん……ビームッ!!」


 ドドドドド!

 吹き出す温泉のような霊力で、彼らは吹っ飛ばされて宙を舞う。


「ああ~」

「二日酔いに、効くわぁ~」


 彼らはひゅるひゅると、中洲を囲む川、那珂川まで落ちていく。

 私は那珂川に架けられた西大橋まで走り、橋から博多湾へと向かう彼らを見た。

 ぷか……と水面に浮かんだ彼らは、恍惚とした顔でそれぞれ両手を繫ぎ合って数珠繫ぎになり、流れに乗って博多湾まで運ばれていった。


「溺れないでくださいね! いくらあやかしでも、お酒呑みすぎちゃだめですよー!」


 声を張り上げつつ見送っていると、海御前様が片手を上げ、私に何か指さして示す。


「袖? ……あっ」


 巫女服の袖の中に、赤の五色布が入っていた。どうやら勝利を認められたらしい。


「ありがとうございまーす!」


 ぐ……っと親指を立てたまま、海御前様は潮に流されていった。


「これで、二枚目か。梅の花は残り四つ……」


 中洲と天神の境界。

 川を挟んでビジネス街、歓楽街、そして繁華街が分かれる中間地点の景色を望む。

 空が広いのも相まって、風が気持ちよく流れていった。


「いたぞ! 楓殿だ!」

「見つけたぞ!」


 穏やかな時間なんて一瞬だ。空を彗星のように、一対の天狗が滑空(かっ くう)してやってくる。


「あっさっき舞台にいたTNG四十八の中のお兄さん!」

「正解であるっ! 某は高良山筑後坊ッ! いざ参る!」

「我は英彦山豊前坊ッ! 我と筑後坊、司会の高林坊以外は県外からの観光目的だッ!」

「それはありがたいことです、ね……!」


 私は、はやかけんをすぐに構えて迎撃態勢に入る。


「はやかけん……ビーム! ビーム! ビーム!」

「ははは! 修行が足りぬ、足りぬぞッ! 楓殿ッ!」


 何度も何度もビームを放つも、ひらりひらりと躱してくる天狗には全く当たらない。笑いながらきりもみ回転を入れつつ、彼らは私をあざ笑うように降りてくる。


「は、早すぎて全部避けられるーッ!」

「ははは、覚悟ッ!」

「わーっ!!」


 反射的に橋に伏せる。

 すると目の前で爆発音が響く。男の人たちの叫び声が聞こえる。

 箒に乗った魔女さんペアが、これまた彗星のように彼らに向かい、閃光で迎撃を始めた。


「楓は私たちのものです! あなた方には譲りません!」

「な、なんだと……南南西大学の教授か!」

「私たちはブルターニュの魔女! 南南西大学の外国語学部には極秘に魔女専攻科があることを、知らないとは言わせないわよ!」

「そして私たちは専任教授でーす!」

「いえーい!」


 彼女たちは私を見てウインクをする。


「楓、日本の忘れられた旧き巫女、私たちは興味がとってもあるのよ♡」

「あとで花を散らしてやるわ、負けたら大学に来るのよ、ハニー♡」


 爆発でアフロになった天狗さんたちが、なにおう! と野太い声で応戦する。


「楓殿は我が英彦山にて研鑽(けん さん)を積み、たくましい巫女になってもらう!」

「なんですって!? 聞き捨てならないわね!」

「そちらこそ! 楓殿をかけて、いざ尋常に!」

「か、勝手にかけないでくださーい!」


 両者の熱意に身の危険を感じ、私はダッシュでその場を離れる。しかしまた空から陸から地中から、私を狙うあやかしや神霊さんたちの手が襲いかかる!


「あそこに楓さんがいるぞ!」

「楓殿!」

「えーい! はやかけんビーム……あれ!?」


 全部吹っ飛ばすしかない! と思ったけれどビームが出ない。

 先ほど天狗さんを撃墜しようとしたときに、霊力(タマ)切れになったらしい。


「う、噓でしょー!」

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2025/09/30連載開始

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