表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ開始】身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです  作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第四章・蓬莱を求めて――肥前と猫、方士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/69

四トントラックと猫又

 フロントパネルには、なぜか猫の夜さんがガムテープで貼りつけられている。

 さらに全身に何か呪符が貼ってあるような状態で、ベッタベタだ。


「なぜ!?」


 真っ先に出た感想はこれだ。

 部屋をバッキバキにしながらドリフトを決める四トントラック。

 徐福さんは叫んだ。


「ちょっと! 修理費請求しますよ!」


 窓を開けて紫乃さんが反論する。


「請求も何も、全部霊力で構築した空間じゃないか。湯以外は全て方術の幻だろ?」

「そうなんですか!? ということは、私が食べた飲茶も……?」


 トラックから降りた紫乃さんが、夜さんをフロントパネルから引っぺがしながら答える。


「幻だよ。あれだけがめ煮を食べといて入るわけないだろ?」

「た、確かにお腹いっぱいではない……」

「どうしてここに入ってこれたのです、筑紫の神よ」

「夜のおかげだ」


 紫乃さんは夜さんから呪符をべりべり剝がしながら説明する。


「佐賀の武雄温泉には東京駅の丸の内口と繫がったゲートがあるのは有名な話だが、あれはお互いに足りない干支のモチーフ同士で連結している。そして夜は肥前の猫又。肥前の猫又に丸の内口の干支の絵を貼りつければ簡易的な武雄温泉へのゲートとなる。佐賀県に侵入さえできれば、あとは任意の湯壺に突っ込めばここの掛け流しにたどり着く」

「確かによく見たら夜さんびしょ濡れだ」

「楓殿!」


 最後の呪符を剝がされ、夜さんが泣きつくように飛びついてきた。


「楓殿を助けに来るために体を張ったぞ、あの筑紫の神は邪神だ、鬼だ、ひどい」

「よしよし、よく頑張ったね」

「ほら、楓が濡れるだろ拭け」


 紫乃さんが夜さんを私から引っぺがす。そして一応ねぎらうように、タオルで包んでもみもみと拭いてあげている。夜さんも不服そうにしながらも、ヘソ天になってされるがままだ。態度ほど悪い仲ではないらしい。

 紫乃さんは私を見た。


「すまない、危険な目に遭わせてしまって。無事だったか楓」

「はい。温泉とマッサージで気分爽快です。いただいた飲茶が消えたことだけが残念でなりません」

「ここの温泉は俺も好きなんだ。湯は最高だからな。そうだ、入っていいか徐福」

「冗談じゃありませんよ、まったく」


 徐福さんが呆れたふうに扇で口元を覆って言う。


「相変わらず息の合ったマイペースですねお二人とも。本当に記憶が消えているのか疑わしいくらい」

「記憶が消えても楓は楓、魂は変わらないからな」


 紫乃さんは当たり前のことのようにさらりと答えると、私に手を差し伸べる。


「帰ろう、楓」

「はい」


 紫乃さんの手を取り立ち上がり、私は決意を新たにする。

 徐福さんの言葉に惑わされない。私は日記と、紫乃さんの言葉を信じる。仮に紫乃さんに何か隠していることがあったとしても、それはきっと悪意からではない。

 最後に改めて、私は徐福さんを振り返った。


「今日は温泉ありがとうございました。怪しい勧誘はともかく、温泉はよかったです」


 攫われたのはともかく、温泉はとてもよかった。

 ぺこりと頭を下げると、徐福さんがふっと目を細めた。


「ふふ、誘拐された側というのにお礼とは、やはりあなたは不思議な子だ」

「俺の育て方がいいからな」

「何か言ってる筑紫の神は放っておいて、またおいでなさい。一人でね」

「いえ流石にそれは無理です」


 そんな会話を繰り広げたあと、私たちは四トントラックで再び屋敷へと帰ることができた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
୨୧┈┈┈┈┈┈連載開始のお知らせ┈┈┈┈┈┈୨୧
連載告知画像
『身に覚えのない溺愛ですが そこまで愛されたら仕方ない 忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです』
漫画:月森のえる 原作:まえばる蒔乃 キャラ原案:とよた瑣織
2025/09/30連載開始

コミックパッシュで読む
୨୧┈┈┈┈┈┈୨୧
原作はこちら
原作書籍画像
『身に覚えのない溺愛ですが そこまで愛されたら仕方ない 忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです』
原作:まえばる蒔乃 キャラ原案:とよた瑣織

詳細はこちら
୨୧┈┈┈┈┈┈୨୧

୨୧┈┈┈┈┈みに愛PR漫画┈┈┈┈┈┈୨୧
漫画:藤峰やまと 原作:まえばる蒔乃 キャラ原案:とよた瑣織
Zの順番でお読みください左から右に
新刊告知画像
新刊告知画像

୨୧┈┈┈┈┈┈┈୨୧

藤峰やまと先生コミックス予約受付中
コミックス告知画像
『婚約破棄だ、発情聖女④』\11月7日(金)発売です/
୨୧┈┈┈┈┈┈୨୧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ