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【コミカライズ開始】身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです  作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第二章・あやかしたちのサードプレイス――羽犬と人魚たち

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「当然愛しているよ」

 夕食後、お風呂に入る前に少しだけと、私は紫乃さんと一緒に改めて修行していた。

 しかしやはり、何度かっこいいポーズを決めてはやかけんを構えても、一向にビームは出ない。くしゃみが出そうで出ないような、気持ち悪い感じはあるのだけど。


 私の後ろで見守っていた紫乃さんが、タオルを私の頭にぽんとのせる。


「楓、明日にしよう。今日は疲れているんだ」

「うーん、あと一発だけやらせてください」


 私は汗を拭って、最後の一発のために姿勢を整える。


「無理はよくないと言いたいけど、楓が納得するのが一番だ。応援してるよ」

「はい」


 紫乃さんの激励が嬉しい。

 再び的を睨みながら、私は別のことを思う。


 私は紫乃さんと、これからどういう関係でいたいのだろう。

 人魚さんの言葉を思い出す。

 ─紫乃さんのことも楓ちゃんのことも、いろんな奴らが狙ってるからね。

 紫乃さんが誰か別の人を好きになったら、私はどう思うのだろう。


 どーん!


 一瞬のことだった。目の前が閃光に包まれる。

 気がつけば私は、道場の隅まで吹っ飛ばされていた。


「楓、大丈夫か」


 背中の温かな感触に後ろを仰ぎ見る。

 壁にぶつからないよう、紫乃さんが私を庇ってくれていた。


「あ……ありがとうございます」


 髪を乱れさせた紫乃さんが、私を見下ろして屈託なく笑った。


「できたじゃないか。やったぞ」

「えっ」


 前を見ると、道場の壁にかけられた的が破れていた。合格だ。


「巫女服も出せたな」


 言葉に促されて見ると、私は巫女服を纏っていた。

 紅一色の巫女服に千早を上から纏った、少し普通の巫女さんとは違う派手な姿だ。


「はー……これが変身……」

「霊力で構築したものだから、こうしないと出ないんだよ」

「私、早く復帰できるように頑張りますね。皆さんの力に早くなりたいです」

「うんうん、頑張れ」


 紫乃さんが微笑む。慈愛に溢れるその表情は、いかにも家族愛という感じだ。


「紫乃さん」

「ん?」

「私がどう思ってたかって話はしましたけど、紫乃さんはどう思ってるんです?」

「何を?」

「私のことをです」


 紫乃さんは表情を変えずに当たり前のことのように言う。


「当然愛しているよ」

「あ、愛……ちなみに、どんな意味の愛ですか?」

「楓の好きな愛で解釈してくれて構わないよ」

「好きな愛って言われても」


 紫乃さんは私を見下ろしながら、片手で頰を包み込むように撫でる。それは夫婦としてというよりも、子どもや妹に触れているような感じに思えた。


「楓はどんなふうに、俺に愛して欲しい?」

「うー、わかんないです……」

「はは、まあゆっくり考えるといいよ」

「そういえば」


 私はふと、仮定を思いつく。


「例えばですよ? 今日の人魚さんが言ったみたいに、私が他の人と結婚したいとか、一緒にいたいって言ったらどうなるんですか?」

「当然楓の希望を優先する。これまでずっと楓の人生を独り占めしてきたんだ。楓の希望があるなら、なるべく応えたい」

「……愛ですね」

「淋しくないと言えば嘘になるけどね。けれど楓が人間と夫婦になって、子供を見せてくれるのも悪くはない未来かもしれない」

「そ、そこまで」

「実際にそうなったとき、どう思うかは分からないけどな。でもなるべく、楓の希望を俺は受け入れたいって思うよ」

「うーん……他で結婚する予定は今のところないですが、紫乃さんのお気持ちは分かりました」


 ここまで深く愛されてしまえば、他の男性を好きになれることなんてないのではないか。元々の楓は、この重い愛をどんなふうに受け止めていたのだろう。

 紫乃さんは気にするなと言うけれど、気にはなる。


「ありがとう。もちろん一緒にいてくれると言うのなら、俺は嬉しいし大事にするよ」


 紫乃さんは私を見下ろしながら、優しく何度も頭を撫でてくる。


 神様の感覚というものが分からない。

 けれどあまり深く考えないことにした。考えても答えは出なさそうだから。


「あの」

「ん?」

「少なくとも現時点では、私は紫乃さんと一緒にいたいと思ってます。一応。紫乃さんの愛情が嫌だとか、離れたいとか、他で恋したいとか、そういうのは全然ないです」

「そっか」


 紫乃さんは屈託なく微笑んだ。

 神様の感覚はわからない。

 けれど少なくとも紫乃さんは、なんだかとっても嬉しそうだ。



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