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召喚とクエスト

遅筆ですまない(某英雄風)

 小鳥の声がする。

 朝が来たのか木枠の窓の隙間から日の光がさしているようだ。


(異世界の鳥の声もあんまり変わらないもんなんだな。)


「主様、おはようございます。」


「おはよう...。おはよう?あ!ミネルバ、それにダビラも!昨日は保管石に戻すのを忘れてたみたいだ。すまなかったな。昨日は眠れたのか?」


「主よ、儂らに睡眠は必要ない。儂らは飯を食うことも意識を落とすこともできるが、元来それらを必要とはせんのじゃよ。」


 ダビラが絨毯に寝転がりながら言う。


「そうです。気遣いはとても嬉しくございますが、私共を使う覚悟を決めていただかなくてはいけません。私共を優先して主様が倒られれば、本末転倒でございます。私共は召喚石という重要なリソースを使用いたしますが復活ができますので。」


 寝転んでいるダビラを杖でつつきながら言うミネルバ。


「あ、あはは...。まぁ、それはほんとに余裕がなくなった時ってことで。それより、机にあるのはなんだ?」


 宿に備え付けられた簡素な机の上には試験管のようなものや、薬研が置かれていた。


「ああ、時間が出来ましたので回復薬を作っていたのです。気休めにしかなりませんがね。浄化が使えませんので品質もかなり怪しいですが。多少の傷なら効果はあります。」


「呵々、ミネルバは殊勝じゃのう。儂は、リビングウェポンの調子を見とっただけじゃというに。」


「ミネルバもダビラもありがたいよ。じゃあ、早速召喚行ってみようか。とにもかくにも戦力増強は急務だ。素材を集めるにしろ金を稼ぐにしろ...ね。」


 ストレージを意識して召喚石を取り出す。


「確か、ゲームの時の演出は...。」


 3つの召喚石を一度強く握った後、前方に軽く投げる。

 すると、床に虹色の魔方陣が現れる。


「おあ!いきなりSSR以上確定演出?!おおお!UR来い!」

(あれ?これでかいやつが来ると宿がぶっ壊れるんじゃないか?)

「まずい!人間大のすごいやつ来い!ついでに女の子でよろし...!」


 魔方陣が一度強く光ると黒い光を宿した魔方陣に代わる。

 その魔方陣は、黒い煙を発しており大変禍々しいものであった。


「闇...。この演出はSSRか。」


 魔方陣がゆっくりと浮上していく。

 見えてきたのは人間の形をしたものだった。


「こいつは...。」


 それは、漆黒の羽根を持ち、長い黒髪を後ろで

 1つ括りにした青年風の男だった。

 顔には片眼鏡を付け、薄く笑いを浮かべている。

 その外見はこの世のものとは思えぬほど美しく、

 優雅で権威に満ちていた。


 SSR☆☆☆☆☆ 悪魔族/闇・火 サポーター・アタッカー

 無価値の悪魔王 ベリアル

 特性:絶世の美貌 悪魔の詭弁 悪魔王

 能力:灼炎の馬車 誘惑(チャーム) 闇魔法 思考誘導 軍団召喚   


「ベ、ベリアル。」


「お初にお目にかかりマス、我が主(マイ・ロード)。無価値の王 ベリアルと申しマス。どうぞ良しナニ。」


 無価値の悪魔王ベリアル、それは無価値の称号とは

 裏腹にゲーム時代にはアンチキャラが実装されるまで

 完全にぶっ壊れキャラと化し、

 とんでもない猛威を振るったキャラクターだ。

 その性能は炎の馬車による圧倒的火力に

 軍団召喚の超範囲攻撃、

 誘惑(チャーム)・思考誘導による敵への遅延行動、

 闇魔法のHP・MP吸収及び豊富な状態異常攻撃と

 やりたい放題で様々な神がモチーフのUR勢に対して

 一部とはいえ完封できるほどの性能を持っていた。

 無機物・植物系や雌雄の存在しないキャラなどは

 誘惑(チャーム)・思考誘導は効果を発揮しない弱点はあったが、

 圧倒的火力によりそれらを吹き飛ばしていた。


「さて我が主(マイ・ロード)、我は何をすればよろしいでしょウカ?」


「ま、まずはギルドへ行く支度からかな。まぁ今は特にやることはないから、待機でいいよ。」

(一番の問題はこいつは元ネタの悪魔からの流用で...)


 この悪魔、神話においてある街を二つ、男色の流布等で滅亡へ追いやっている。

 つまり、同性愛者なのである。


(召喚体とは言え相手は悪魔...。現実になった今、結構まずいのでは???主に俺の貞操が。)


 --------------------------


 -召喚師ギルド


 朝早くもそこそこの人数が酒場で今日の仕事を吟味している。


 依頼受理カウンターに、昨日の美少女が座っていた。

 今ちょうど、列が空いたようだ。


「おはようございます!今日はお1人?何ですか?」


「ああ、まぁ1人っちゃ1人かな?えっと。」


「私、ロココって言います。」


 ロココは初対面の時と変わらないくりくりとした目を輝かせている。


「あっ、ッスー。はい、ソロモンって言います。えっと、C級の依頼お願いします。」


「はい!ご依頼ですね。ただいま残っているのは、こちらになります。」


 ソロモンの前に依頼書が差し出される。


 雑用 荷物の運搬

 雑用 用水路の掃除

 納品 薬草の納品

 納品 スライムの核の納品

 討伐 ウィードゴブリンの討伐

 討伐 グリーンスライムの討伐


「ふむ...。」

(さすがにC級に土蜘蛛の荒野の依頼はないか。周辺には火も闇もダンジョンがないから、取り合えずダビラの育成を優先していきたいが、クエストをこなさないと恐らく召喚石が増えない。しかし、風吹く草原は風属性がメインのダンジョンだ、ここは速攻リビングウェポンの進化を終わらせた方がいいか?)


「あのー、どうされました?」


「ああいや、とりあえず納品と討伐の依頼全部受けます。」


「え?全部ですか?だ、大丈夫ですか?」


「あー多分大丈夫です。これって基本的に常設依頼ですよね?」


 依頼の詳細を確認しつつ確認する。


「はい。そうですね、でも大丈夫ですか?」


「本当は雑用とかしといた方がいいかもしれないんですがね。外に用事があって。」


「いえまぁ、英霊を召喚されているようですから戦力には不足はないかもしれませんが...。」


「えっと、これどうしたらいいんですか?」


 依頼書を手に手持ち無沙汰になるソロモン。


「あ、ああ。では依頼を受理しますね。ギルド証を出してください。」


 ロココにギルド証を渡すと依頼書と共に何かの装置に翳している。

 すると、依頼書が光りその光がギルド証に吸い込まれていく。


「はい、受理完了です。目標を達成しましたら、そのままこちらのカウンターへどうぞ。気をつけてくださいね?」


「胸に刻んでおきますよ。」


 ギルド証をストレージにしまうとモニターが現れる。

 名:ソロモン

 同時召喚枠:5

 保管枠:10

 所持召喚石:4

 所持召喚体:金剛鬼ダビラ・リビングウェポン(槍)・神官長ミネルバ・無価値の悪魔王ベリアル

 所持クエスト:薬草の納品/スライムの核の納品/ウィードゴブリンの討伐/グリーンスライムの討伐


 薬草の納品

 薬草を10個以上納品(0/10)

 10個以降は5個毎に報酬増加(上限30個)

 報酬:50ダラ(追加報酬30ダラ)


 スライムの核の納品

 スライムの核を5個納品(0/5)

 報酬:200ダラ


 ウィードゴブリンの討伐

 ウィードゴブリンを5体討伐(0/5)

 報酬:500ダラ


 グリーンスライムの討伐

 グリーンスライムを10体討伐(0/10)

 報酬:300ダラ


(よし、これでいいな。)


「ルーキー、いきなり根詰めるものじゃないよ?」


 一度見たら忘れない、あの紅髪が目にはいる。


「ミル!おはよう。」


「おはよう。ルーキーはしっかり、雑用の仕事からって思ってたんだがな。新しいお仲間もいるみたいだし、大丈夫だとは思うけど気をつけるんだよ。あんたはまともな防具も身に着けてないんだから。」


「自衛はしっかりするよ。ああ、後昨日渡し忘れていたこれ。」


 銀貨5枚をミルに手渡す。


「入街税か、律儀だねぇ。ま、いいさ、じゃ借りは返したもらったよ。また何かあれば言うといい。」


「ああ、助かるよ。じゃ行ってくる。」


 -西門


「すいません、入街税を返してもらいたいんですが。」


「ん?ああ、入街証はもってるかい?」


 その門衛はまだ年若く見え、けだるげにしていた。


「はい、これです。」


「ソロモン、ね。ん?後ろの方たちの分はないのか?」


 手渡した入街証を一瞥して、疑問を呈す若い門衛


「彼らは召喚体で。」


「お、じゃあ召喚師か。才能があるんだね。一応規則なんで召喚体の検査は受けてもらうよ。あと、ギルド証も見せて。」


 ギルド証を差し出すと奥に向かって、声をかける若い門衛。

 奥から持って来られたのは入るときに触れた"真実の目"


「はい、じゃあ召喚体の皆さんはこれに触れてくださいね。ギルド証の確認も取れたから、これ500ダラね。」


 召喚体が触れていくがどれも反応はしない。


「反応なし、と。じゃあ通っていいよ。とりあえず、記録はしてるから今日は大丈夫だけどなんか識別証?かなんかがあったはずだから、早いとこつけるのをお勧めするよ。一々めんどくさいでしょ?これ。」


「そうですね、ありがとうございます。それでは。」


 -風吹く草原


「しかし、これは移動が面倒になってくるな。」


「それならば、我の馬車に乗ればよろしいでショウ。我が主(マイ・ロード)の為ならば如何様にも致しまスヨ?」


「いや、でも炎の馬車は攻撃スキルだろう?騎乗出来なかったはずだが。」


 悍ましい馬の嘶きが響き渡る。

 深淵の闇を集めたような大穴が開き、

 炎を纏った鈍く光る黒色の骸骨馬が

 炎で形作られた馬車を引き現れる。

 馬車には、骸骨の御者が乗っていた。


「我の馬車は限りなく万能デス。灼き尽くす対象さえ選べば騎乗することも可能でございマス。」


「呵々、頼もしいのぉ。儂らの出番はなさそうじゃ。のうミネルバよ。」


「私達には私達の出来ることがありましょう。戦力としては微妙かもしれませんがね?」


「これが現実補正ってやつか。まぁいいか、馬車で移動しつつ依頼の対象を討伐して北の荒野まで行こう。まずは始まりの街で石を貯めて、リビングウェポンとダビラの限凸をしつつ、ギルドランクをR級に上げたら王都へ出発だ。光と闇の進化素材を両方集めるなら王都がかなり効率がいいからな。じゃ、今言ったことを目標に頑張ろう!」


 炎の馬車が目の前に移動してきてタラップが下ろされる。


「全員乗られましタネ?おい、出セ。グリーンスライムとウィードゴブリンは見つけ次第轢き殺セ。」


 ”ハイヤー!!”

 恐ろしい加速で馬車が走り出す。

 後方を見ると轍が炎上している。


「おい、ベリアル!周りに被害は出すなよ?!」


「ええ、ええ、分かっておりますトモ我が主(マイ・ロード)()()には被害は出しませンヨ。」


 人を喰ったような笑みを浮かべ、頷くベリアル。


(これはまずい。さっさとアンチキャラを引かないと制御出来ないかもしれん。)


「前途多難ですね。」


 光がソロモンのストレージに飛び込んでくる。


「おや?早速何かを轢き殺したようでスネ。」


「なんだろうか。」


 ストレージには


 ウィードゴブリンの腰布×1

 スライムの核×1


「あ、あはは、こりゃ楽だな。」


「どうでショウ。我の馬車は、素晴らしいとは思いませンカ?」


 隣に座ったベリアルが艶めかしく手を合わせてくる。


「おあ、ああそうだな。」


 手を外そうとするが、巧みに躱され徐々に恋人繋ぎに移行していく。


「そこまで、主様が困っております。お辞めになりなさい。」


「ほう、聖職者らしい説教でスネ?まぁ、良いでしょう。悪魔は待つのは得意なノデ。じっくり、ゆっくり、仲を深めると致しまショウ。」


 -土蜘蛛の荒野


「空も飛べるとはな…。」


「それくらい出来なければ悪魔共を従えるなど夢物語でございマス。」


 順調に依頼を達成し、残るは薬草の納品だが街から草原に移動していた道中に採取した分と元々持っていた物で依頼は達成しており、早々に土蜘蛛の荒野に移動していた。


「これは結構やばいぞ。土属性が活性化しているせいか魔物の数がかなり多い。しかも、Rの魔物がちょこちょこ見えるな。」


「我の馬車を本格的な攻撃スキルとして用いると、騎乗しながらではそのまま死んでしまわれまスガ…。」


「それは勘弁だから、ここからは徒歩で行こう。風属性のリビングウェポンはここではお守りにしかならないから、みんな護ってくれよ。」


 荒野を進んでいくと、角が岩のようになった牡牛が群れになって突撃してくる。


「ロックホーンブル!しかも群体か、全然Rは超えてるぞこれ!ミネルバ結界!行けるか、ベリアル!」


「承知致しまシタ。薙ぎ払エ!灼炎の馬車(ブレイズ)


 "ハイヤー!!"


 複数の闇穴から先程の物とは比べ物にならない

 熱量を持った馬車群が飛び出す。

 群体の牡牛を轢き潰していく。


「これが…SSRの力か。とんでもねぇなこりゃ。今日中にダビラの限凸1回分は溜まっちまうぞこれ。」


 目の前に集中していると、背後から物音がした。


「主ッ!」


 鋭利な爪が振り下ろされる。

 ガラスが割れるような音の後に、

 金属同士が衝突したような甲高い音が響く。


「儂の金剛に一片の曇りなし!」


「土蜘蛛か!SRだ!拘束攻撃に気をつけろ!」


 奇襲が防がれたことが不満なのか、

 牙を剥いて威嚇する土蜘蛛。


「貴様ァ、我が主(マイ・ロード)に牙を剥くとは何たる不敬か分かっているノカァ?!我が炎で細胞の一片までも灼き尽くしてやロウ!灼炎の馬車(ブレイズ)!まずは脚をもぎトル!」


 "ヒィィィィハァァァァァ!!"

 強い熱量を持った馬車が土蜘蛛に吶喊する。


 "ギギギチチィ!"

 片方の脚を灼き尽くされて苦悶の鳴き声を上げる土蜘蛛。


「地面に逃げるぞ!リビングウェポン、ベリアルに追風!」


 ベリアルの周囲に強い風が吹く。

 すると馬車の炎上が一際強くなる。


「我の炎から逃れる術ナシ。麻痺の呪い(カーススタン)


 "ギ…ギ…"

 スタンが入った土蜘蛛はそのまま馬車に

 焼き尽くされて息の根を止める。

 素材の光がソロモンのストレージに入っていく。


 土蜘蛛の硬爪×2

 土蜘蛛の硬糸×1


「ふぃー、危なかったな。これからはもうちっと索敵をしっかりしないといけないな。でも、ドロップは美味い。これでダビラを限界突破出来る。」


「主様、そろそろ戻りますか?」


「ああ、戻ろう。依頼達成の報酬で入用の物を買いに行こうか。ミルが居たら、会いたいしな。」


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