その女、召喚師ミル
前話のミルの言葉遣いを若干修正
キャラは定まらないよね。
構成力をくれ。
「あたしの名前はミル、これでも召喚師なんだ。よろしく!」
見たところ腰に保管石らしきものを付けたホルダーを着けている。
確かにきっちり召喚師ではあるようだ。
(ストレージがないのか?それとも、保管石をわざと見せてるのか?)
「よろしく、召喚師のソロモンだ。こっちは、ミネルバとダビラ。これはリビングウェポンの召喚体だ。」
「どうも、神官長ミネルバと申します。」
「儂は、ダビラじゃ。」
差し出されたミルの手を取り、挨拶を交わすソロモン。
「も、もしかして、そっちのお方たちは英霊?」
ミルは驚愕に目を見開きながら問う。
「英霊?なんだそれは。」
「完全人型の召喚体の事さ!滅多に召喚に応じてくれないうえに、同時に一体しか召喚に応じない高潔な存在!とてつもない力を秘めた遥か神代・古代の英雄達!召喚できたんならこれくらい知らなくちゃ。」
よっぽど熱があるのか、早口で捲し立てる。
「お、おう。そうなのか、いや田舎から来たもんで知らなかったぜ。」
「英霊も知らない田舎なんてどんなところなのさ。まぁ、始まりの街だなんて大昔の名前を知ってるってことは相当長い所なのは分かるけどね。」
「それだよ、俺は始まりの街って名前しか知らないが他にどんな名前があるんだ?あと、長旅で今は何年の何月だ?」
大きな瞳をさらに大きく開きながら、
驚いた様子を見せるミル。
「本当に知らないのかい?こりゃ驚いた。この街の名前はマリバル、マリバル伯爵の街だよ。あと今は神歴514年の土の月の表だね。」
「神歴514年?まじかよ。」
神歴とは、無幻召喚物語で用いられていた独自の暦で、
サービス開始日を1年としてリアルタイムで時間を
経過させていた。
属性に沿った火、水、風、土、光、闇の月で表し、
表と裏で分けて12ヶ月としていた。
表の月にはその属性が活性化し、
裏の月にはその属性が衰退化する。
そして、ソロモンが記憶している無幻召喚物語の
神歴は14年の土の月 表。
つまり、この世界は無幻召喚物語の500年後の世界だった。
「突然呆けてどうしたんだい?そろそろ、門が見えてくるよ。あとあんた、入街税分のダラは持ってる?」
「え?いや、ダラは持ってない。あるのは道中で倒した魔物の素材くらいだ。っていうか、入街税?そんなのあるなんて聞いたことないぞ。」
「やっぱりそうだ、なーんか無一文の気がしたんだ。声掛けてよかった、下手したら牢屋行きだよ?まったく、ほんとに長命種だったりしないかい?入街税がなかったのなんていつの時代さ。」
見えてきたのは雄大な門と外壁だった。
綺麗に磨かれた石で出来た外壁は陽の光を反射し鈍く輝いている。
様々な彫刻の施された大きな門は見るものを圧倒し、これをくぐることを名誉とすら感じさせる。
(外観は変わっているわけじゃないのか。)
「はいこれ、とりあえず貸しにしとくからね。まぁ、ギルド証を貰ったら、ダラは返ってくるからちゃんと返すんだよ。」
「え、いいのか?」
手渡されたダラを手の中で持て余しながら、硬貨を確認する。
(ゲームの時のフレーバー内の画像と同じ...。ここは変わっていないのか。)
「いいんだよ。あたしは、困ってるやつはとりあえず助けることにしてるのさ。それに、あんたはいい恩返しをしてくれそうだしね!」
輝かんばかりの年上姉御系美人の笑顔に、恐らく(転移前後の記憶がないためシュレディンガーの童〇
状態である、まだ分からない)生涯童〇だったソロモンの眼と脳髄を焼き尽した。
「おっf、いやありがとう。恩に着るぜ。」
「精一杯恩に着るんだよ。じゃ、門の先で待ってるよ。」
「え?」
「召喚師ギルドに行かなきゃだろう?」
「そ、そうだな。ありがとう。」
小さく手を振りながら、門の先に消えていくミル。
「恋熱は心地よいのう?主よ。」
「女性を口説くときは焦ってはいけませんよ。主様、じっくりと関係を深めなければ。」
するりと横に並び立ち、野暮なことを言う二人。
「いや、いやいやいやまだ出会って10分も経ってないし。これはまだ恋じゃないでしょ。恋できる時間なかったし。」
「恋に時間など必要ではありませんよ。」
「次!」
年老いた門衛の声が響く。その門衛は、年老いてなお精悍な様相をしており、肉体は鍛え上げられている。
「あ、今行きます。」
「いずれかのギルド証、もしくは住民証を出してくれ。」
「いえ、持っていなくてこれから作る予定なんです。」
「なるほど、では入街税をいただく、1人につき500ダラだ。」
「この二人は召喚体ですが、どうしますか。」
「ああ、召喚体だったのか。召喚体には入街税はかからない。500ダラでいい。」
「はい、これ500ダラです。」
ソロモンは、銀貨を5枚手渡す。
「ちょうど受け取った。1週間以内にギルド証を見せてくれればこの金は返却させてもらうから、気を付けるように。ところで、この街に来るのは初めてかね?おい、"真実の目"を持ってきてくれ。」
門の中に作れらた部屋の中に声をかける門衛。
「そうですね、初めてではあります。」
「君が先ほどミルが言っていた青年だね。話は聞いているが規則なのでね、犯罪歴を調べさせてもらう。
召喚体の君らも確認させてもらおう。召喚体は、これに手を翳しても光らないからね。これからは煩わしいと思う場合は、初めから保管石に戻していることだ。よし、これに手を当てて。」
奥から他の門衛が持ってきたのは、木の台座に収められた手のひら大の透明な宝玉だった。
「分かりました。」
ソロモンが宝玉に手を翳すと宝玉は淡く青に光り、モニターが現れる。
「うおっ。」
「ん?どうしたかね。よし、青だな。問題なし。」
「いや、これ...。」
「何か問題があるかな?ああ、これが珍しいのか。これは"真実の目"といってだな。犯罪を犯していれば赤く犯していなければ青く光る代物だ。まぁ、その犯罪の大小は問わないみたいだがね。」
(これは、このモニターが見えていないのか?)
モニターには、
名:ソロモン
同時召喚枠:5
保管枠:10
所持召喚石:1
所持召喚体:金剛鬼ダビラ・リビングウェポン(槍)・神官長ミネルバ
所持クエスト:なし
と書かれていた。
(これはゲームで鑑定石と呼ばれていた、NPCの鑑定に使えるフレーバーアイテムだったはず。犯罪歴の診断なんて機能はなかったはずだ。やっぱりかなりゲームと差があるな。気を付けないと。)
「もういいかね?」
「あ、大丈夫です。すいません。」
「では、そこの二人も頼む。」
二人も順に手を翳すが、光ることはない。
「二人も問題なく、召喚体か。いやしかし、英霊を見るのは久方ぶりだ。もっと、栄えている街に行けば多少は多く見ることができるだろうが、それでもSR級以上に限られるだろう。」
「は、はぁ。」
「はっは。つまり、君は最低でもSR級にはなれるだろうってことだよ。さて、ここに名前を書いて。入街証を発行する。筆記ができないなら、こちらで代筆もできるが?」
そういって、羊皮紙を取り出す門衛。
「ああ、えっと。」
そこに書いてある文字は視たことはなかったが、理解でき自分の名を書こうとすれば、勝手に手が動いた。
「大丈夫...です。」
「そうか、なら少し待っていてくれ。おい、入街証の発行を頼む。」
名前を書いた羊皮紙を奥の部屋に宝玉と共に持っていく門衛。
しばらくすると丁寧にくるまれた羊皮紙を持ってくる。
「これが、入街証だ。さぁ、行きたまえ。ああ後、これは助言だが、武装系と一定以上の大きさの召喚体は保管石に戻しておいた方がいい。変に警戒感を抱かせたくないのならばね。まぁ、武装系は鞘だったりを作るなら別だがね。」
「あ、ありがとうございます。そうします。」
ソロモンはリビングウェポンを、保管石に戻す。
「よし、あとでぴったりの鞘を作ってやるからな。」
--------------------------
「お、やっとかい。こんなにいい女を待たせたんだ。借しは高くつくよ?」
「あ、あはは、出世払いでお願いするよ。」
「早速、召喚師ギルドへ行くよ。期待の新人のデビューだ。」
一行は、ミルの案内で召喚師ギルドへ向かう。
召喚師ギルドは、しっかりとした石造りの建物で、軒先には召喚石の形が刻まれた鉄製のエンブレムが掲げられていた。
(召喚師ギルドもそのままか、街中もゲームで描写されてない箇所以外はほぼ同じだった。クエストは変わらずなのか気になるな)
「ここが、召喚師ギルドさ。さぁ、早速いこうか。」
スイングドアを押し開け、中に入ると中に居たほとんどの人物の視線が刺さる。
「おー、ミルさんじゃねーか。また人助けか?」
「見ねぇ顔だな。感謝しとけよ。ミルさんは誰彼構わず助けちまうからな。顔に泥塗るんじゃねーぞ。」
併設されている酒場から声がかかる、そんな客らも召喚体を出しているのを見て確かに召喚師ギルドに来たのだと感じられる。
「下手なこと言うのはやめてくれ。まだ登録も済んでないひよっこに凄んだって、ダサいだけだよ。」
「じゃあ、登録を済ませてくるな。」
そういって、登録と書かれたカウンターに赴く。
「あれ?登録の仕方知ってるのか?」
「まぁ、一応な。」
受付へいくと、すんごい美少女が座っていた。
肩ほどの長さでそろえられた栗色をした髪はサラサラでちょっとした空気の流れにもはためき、髪と同じ栗色の目はまん丸で大きくまるで引き込まれるように輝いている。そして何より頭の上に鎮座する垂れた犬耳が時折動くことで、可愛らしさを倍増させる。カウンター越しに見える細身の肢体は健康的な魅力にあふれている。また表情は、強い興味に惹かれておりちょっとした油断で恋に落ちてしまうほど魅力的であった。
「召喚師ギルドへようこそ!登録の仕方はご存じですか?ギルドの詳細はお聞きになりますか。」
「あってるか分からないから、一応聞こうかな。あ、詳細も一緒にお願い。」
聞くといった直後、後ろから視線を強く感じたが知らぬふりをして続行する。
「はい!ではまず、こちらの石板に手を当ててください。魔力紋が刻まれて、ギルド証が発行されます。」
「はい。」
黒曜石のような素材に細かな魔方陣のようなものを刻んだ石板に手を当てると淡く光りだす。
「はい。完了です。では、ギルドの説明に参ります。規則は、召喚者・召喚体の犯罪の禁止、召喚体同士での私闘の禁止、他者の召喚体への故意の襲撃・誘拐などの禁止の三項となります。これ以外は基本的に自由ですが、他者からの訴えが多い場合、真眼判定による裁定を受けていただきます。また、三項を破った場合、即刻ギルド証が崩壊し失効、およびギルドより即座に討伐部隊が出動いたしますので、お気をつけてください。」
「ひえ~、おっかないな。」
(討伐部隊は恐らくゲーム内での粛清システムの名残だな。ゲーム内ではプレイヤーキルをすると速攻出てくるえげつない性能の召喚体だったが、そこらへんはどうなっているのやら。ゲームとの違いは真眼判定ってやつだな。)
「本当におっかないので絶対にしないでくださいね。まぁ、私は見たことないですけどね。」
「ああ、そうするよ。所で、真眼判定ってのは何だ?」
「え、知らないんですか。あ、いやそんなこともありますよね。真眼判定というのは、真眼の能力持ちの判定官もしくは召喚体による真偽判定のことです。これの結果は公に認められておりますので、最も信憑性のある証拠になります。主に、複数の質問を行い判定されます。」
「なるほどねぇ...」
(真眼か。確かにフレーバーテキストには真実を映すと書いてあったが、現実だとしっかり有効活用されているんだな。)
「いいですか?なら次の説明に移ります。次はギルド員のランクについてですが、下からC級、UC級、R級、SR級、SSR級、UR級となります。まぁ、ずっとUR級になったなんて話は聞きませんし、SSR級も世界に数人しかいませんから、実質的にSR級が最高位って感じですね。」
「UR級がいないのか?!」
「うぇっ?え、ええ大昔はいたみたいですが今はいないと思われます。」
「そうか、いや大声出してすまん。」
(ギルドランクはゲームと変わらず召喚体のレアリティと同じ。だが、URがいないか。SSR以上のクエスト・イベントが発生していない可能性があるな。)
「いえいえ、ではこちらギルド証になります。」
銅色の手のひら大のプレートを手渡される。チェーンがついていて首からかけられるようだ。
銅のプレートを持つと、"真実の眼"の時と同じ内容のモニターが表示される。
「おぉ。」
「初めてのギルド証は感慨深いね。ルーキー。」