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虚無編第1話「妹」との出会い

俺はとある女性の部屋を訪れていた。

「そんなに落ち込まないでよ。私まで暗くなっちゃうじゃん。」

女性は言う。

「安心できるわけないだろ。あんな考えられないことで大切なものを失ったんだ。お前には分かるか?大切なものを中途半端に、何の約束も守れず消えるこの孤独感が…」

パチン

女性は俺を叩いた。

「私の知ってる有間はこんなことで動揺なんかしない!あんたは私を暗闇から救ってくれたんだから!きっと妹さんだっていつもの貴方なら救えるのよ!」

俺はこの言葉を聞き、昔を思い浮かべた。



小さい頃の俺はとある孤児院にいた。いつ頃からいたかは定かではないが、記憶のあるうちはずっとあそこにいた。俺は騒がしいのが嫌いだった。だから、2人部屋を一人で使っていたのだが、ある日彼女が入ってきた。

彼女の名前は未波遥みなみはるか。父子家庭だったのだが、父親から過度の性的暴行を頻繁に受け、それが発覚しこの孤児院に引き取られたらしい。彼女はそのせいで極度の男性恐怖症だった。だが、院長は他人に興味のない俺を彼女のリハビリとして利用したのだ。

彼女が入ってからしばらくは沈黙が続いた。俺は特に彼女のことなんて目にも入っていなかった。ただ本を読んでいただけだった。そんなとき彼女から言葉が出た。

「…貴方は、どうして私のことを見ないの?」

今思えば彼女の反応は当然だっただろう。彼女にとって男性はただ一方的に襲ってくる化け物として見ていただろう。だが、おれは彼女に何の興味も示さず気にも留めていなかった。彼女にとって自分に興味を持たない異性自体が異質だったのだろう。

「…なんでお前なんか気にしないといけない。その余裕があるなら俺は自分の在り方でも考えるよ。」

その時はただ何の気もなく適当に返しただけだった。

それから彼女は俺にくっついて行動するようになった。元々同部屋な上、食堂に行くのも食べるのも一緒、自由時間に俺が部屋で本を読んでいても彼女はそばでじっと俺を見ていた。俺は群れるのが嫌いだったが、悪い気はしなかった。たまに人が寄り付かないほど不気味な俺をからかいに男が集まることがあった。元々そういう連中は無視をしていたが、この時は彼女が男たちを倒した。俺はこの時から彼女のことを不思議に思ったんだ。男嫌いの彼女が俺の為に男に手を出した。そこに俺は興味がわいた。

それから彼女と共に孤児院を出て、共に暮らしていた。そんなある日、オレは雨の中家へ帰ろうと歩いていたら、塀に寄りかかり座る少女がいた。

「どうしたんだ?」

思わず声をかけてしまう。

「…………」

少女は何も言わずこちらを見つめていた。

「はぁ…、どうしたものか。」

ため息をついていると何か無性にこの少女を助けなければならない気がした。

「俺の“妹”になるか?」

自分でも驚いた。特に何もなく、家に連れて帰ろうと思っていただけだが自然と口に出てしまった。

「………うん。」

少女は頷いた。この時から不思議な運命だった。まるで何かに手繰り寄せられているかのような感覚に陥った。


それからその少女未離と生活をした。二人でいると未波とはいつの間にか疎遠になっていたが気にも留めなかった。先ほど叩かれたのはそのせいだろう。

「すまない。」

「こんな見た目が好かれないようなあんたのことが…その、あれよ。気になっている?人もいるんだからね!」

「分かったよ。」

未波の家からの帰路、俺は一人になりたくて普段使われていないような狭い路地に入った。その時、前を笑顔で横切る一人の少女がいた。だが、入っていった場所は壁だった。俺は好奇心からその壁に触れてみた。すると、手はスルスルと透き抜けていった。その中へ入ると大きな下り階段があった。その階段を下ると話し声が聞こえてきた。

そこには…

未離が二人いた。


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