7ボーグ 古代語で『何でもアリ』っていう意味ですから
「レディイスエェンドジェントルメェン!! 大変長らくお待たせいたしました! 場売闘奴参加者のみなさん、お時間となりましたので、只今より予選を始めさせていただきまーす!」
「「「――!!」」」
突如よく通る女性の声が、辺り一面に響き渡った。
……ふぅ、いよいよ、か。
「司会進行役は今年もこの私! 王立魔法剣士団トォツェギ支部広報担当、コトウ・ミユギが務めさせていただきますよろしくどーぞ!」
「「「うおおおおお!!!」」」
コトウさんは美人なうえ人当たりもいいので、トォツェギ支部の中でも男性ファンが多い。
司会進行役はうってつけだろう。
『サノウさん、私あの人とは気が合いそうです!』
『それは気のせいだ』
コトウさんはお前と違って、ウザくはないからな。
「それでは早速ルール説明に移らせていただきます! 毎年様々なルールで行われる場売闘奴の予選ですが、今年はここビダ山脈で、『ムァツ茸狩り』をしていただきます!」
「「「――!!」」」
何……だと……。
「ええ、ええ、みなさんがそんなお顔をなさるのも無理はありません。ムァツ茸といえば、文字通り幻の食材。熟練の職人でも、1日1本見つけられるかどうかというところ」
そうだ、しかも……。
「しかもここビダ山脈は、山奥に進めば進むほど危険な魔獣に遭遇しやすくなるという、トォツェギでも屈指の危険地帯! なかなかの無茶ブリをしているという自覚はございます」
「「「……」」」
「――ですが、みなさんはトォツェギ中から集まった、押しも押されもせぬ腕自慢ばかり! みなさんならきっと、ムァツ茸を手中に収めてくださると私は信じています!」
「「「――!!」」」
コトウさん――!
「私も心を込めて応援しておりますので、どうかみなさん頑張ってくださいね!」
「「「うおおおおお!!!」」」
会場は大盛り上がりだ!
流石トォツェギ支部のアイドルコトウさん、乗せ上手だぜ!
『フー、前言撤回。やっぱあの人とは相容れないっすわ』
『露骨な僻みやめろ』
器の小さいやつめ。
「ルールは至ってシンプル。ムァツ茸を私のところまで持ってきてくれれば予選通過です。先着で8名までが明日の決勝トーナメントに進出できますので、早い者勝ちですよー」
8名か……。
単純な戦闘力だけでなく、探索力も必要なのがネックだな。
俺、探索系の任務も苦手だったんだよな(まあ、得意な任務なんてなかったけどな!)。
「ヒャッハー! ちょっと質問いいかあ、ヒャハいねーちゃん」
――!?
さっきのモヒカン3人組のリーダー格っぽい男!?
「はいはーい、何でしょう」
「ムァツ茸狩りの最中は、他者に対する妨害はアリかぁ?」
「「「――!」」」
「いい質問ですね。――もちろんアリでございます!」
「「「――!!」」」
……マジかよ。
「場売闘奴は最も強い者を決める大会ですからね。ここで言う『強い者』とは、『如何なる状況であれ目的を達成する力のある者』を指します。ですので、妨害、奸計、権謀術数、オールオッケー! どんな手を使ってもよいので、ムァツ茸を私のところまで持ってくれば予選通過です。そもそも『バウリトウド』って、古代語で『何でもアリ』っていう意味ですから」
そ、そうだったのか。
知らなかった。
「ヒャッハー! よーくわかったぜぇ。こりゃヒャハいムァツ茸狩りになりそうだ」
「ヒャッハー!」
「ヒャッハッハー!」
っ!
モヒカン3人組が、下卑た目で一瞬俺のほうを見た気がした。
……まさかな。
「他にご質問はございませんね? 予選通過者が出るたび、花火でお知らせいたしますので目安になさってください。――それでは場売闘奴予選、スタートです!」
えっ!?
もう開始なの!?
ま、まだ心の準備が……!?