14ボーグ 何が必要だと思うかね?
「それではここで、本大会の主催者である、王立魔法剣士団トォツェギ支部支部長兼、トォツェギ領領主、ネギス・ウーメ様よりご挨拶を賜ります!」
会場の視線が、観客席最上段にしつらえられた、豪奢な一角に注がれる。
そこに優雅に座されていた、ネギス支部長がおもむろに立ち上がる。
会場が水を打ったように静まり返った。
流石名実共にトォツェギ領のトップなだけあるな。
貫禄がパない。
「――欲しいものを手に入れるには、何が必要だと思うかね?」
「「「――!」」」
バリトンボイスのイケボが響き渡る。
「言わずもがな、それは『力』だ」
「「「……」」」
「財力、権力、知力、武力……。それらの力がなければ、何を得ることもできない。それがこの世の摂理だ」
摂理、ね……。
まあ、それはそうかもしれませんね。
「国の治安を維持する上でも同様。力がなければ、国家の平和を守るなど絵空事でしかない。正義を貫くためには、相応の力が要るのだよ」
あんなに騒がしかった会場が、固唾を呑んで支部長の演説に耳を傾けている。
これがカリスマ性ってやつか……。
「だからこそ私は、力のある者を評価する。是非諸君らには、何があろうとも揺るがない、確固たる力を見せてほしい。――期待している。以上だ」
会場がワッと大歓声に包まれた。
カッケェなぁ……。
俺もあんな大人になりたいもんだなぁ。
『大丈夫だよボーズ。おめぇさんもいつか辿り着けるさ、あの高みへな』
『そのキャラ何!?』
ある意味ルイカに対するツッコミが一番体力持ってかれるんだけど!
「ネギス支部長、金言をありがとうございました! ではここで、決勝トーナメントのルールを説明させていただきます!」
ふぅー、いよいよだな。
「ルールは例年同様、非常にシンプルなものです。――降参するか、俵から一歩でも場外に足が出るか、私が戦闘不能と判断するか、死んだら負け。以上です」
「「「――!」」」
相変わらず物騒なルールだよな。
殺しちゃうのもアリなんて。
一応国家の治安維持組織である、王立魔法剣士団主催の大会なのにいいのかな?
まあ、大抵の場合、死人が出る前に試合が止められるみたいだけど。
去年も死人は出なかったしな。
「トーナメントの組み合わせは、公平を期すために、都度私がクジで対戦相手を決めます。1回戦は4試合行われ、勝ち上がった4名で準決勝。そこでまたクジを引いて、準決勝の対戦相手を決定し、勝ち上がった2名で決勝戦を行うという形式でございます! さあ、勝負から降りるなら今ですよ? みなさんお覚悟はよろしいですか?」
「「「……」」」
まあ、ここまできて怖気づくような人は、ここにはいないよな。
ぶっちゃけ俺は、少しだけ怖いけど……。
「では早速ですが、1回戦第1試合を始めさせていただきます! まず1人目はこちら!」
コトウさんが手元の抽選ボックスから、1枚のクジを引いた。
「おおっとこれはいきなりの注目株。ウノウ選手です!」
「えっ!?」
お、俺!?
『フッ、いよいよ公衆の面前でのデビュー戦だな。――君ならきっとやれる。自信を持ちたまえ』
『っ! ――ミネさん』
はい、ミネさんに貰ったこの身体で、負けるわけにはいきませんからね。
『勝ちます。相手が誰でも』
『フッ、その心意気や良し!』
「さあて続いての2人目は――。おお! これは面白い組み合わせですね! ――バヤシ選手です!」
「――!?」
「ハァッハァ! 降参するなら今の内だぞ、小僧?」
――くっ!
よりにもよってバヤシ隊長かよ……。
『早速のざまぁ展開キターーー!!! ――やっちゃえ! サノウさん!』
『ざまぁ展開とは!?』
まあ、こうなったら徹底的にざまぁしてやるよ!(ざまぁの使い方これで合ってるかな?)