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ペニー・レイン  作者: 青木勇気
11/22

【11】

「そもそも、あまねが卒業して以来、どこか釈然としないものがあるんだよね。しっくりこないって言った方がいいかな」

響太は、頬杖をつき小さくため息を吐いたあとで、おもむろに切り出した。


「何が?私と?」

「そう。やっぱり、関係性が変わったよ」

「具体的にどう変わったの?」

「馴れ合いの関係になった、かな」

「そう?」

「うん」

「それで?」

先刻とは打って変わって、あまねが迫るような形の会話になっていた。響太は、脱脂綿を詰められているみたいにもごもごと口を動かし、あまねはその要領を得ない態度がもどかしかった。


「うん、だから……」

「だから?」

「だからもう、終わりにしよう」

あまねは、ただ「終わりにしよう」という単語を反芻した。頭の中には、言いたくもない言葉が次々と浮かび、彼女の理性を蝕んだ。


「好きな人でもできた?」

「違う」

「じゃあ、いきなりどうして?」

「いきなりではないよ。このまま続けていても向上しないというか、とにかくお互いコンディションがよくないと思ってた」

「私はそう思ってないし、ちゃんと話し合えばいいでしょ?」

「そういうことじゃなくて。とにかく、一度リセットしたいんだよ」

「リセット?もう気持ちがないってこと?」

「そうじゃない」

「どうしたいの?」

「だから、さっきから言ってるように……」

「分かった」

「分かった?」

「いい、そうする」

あまねの熱を帯びた瞳には、表面張力に耐えかねた涙が溢れ返り、見かねた響太はその涙から目を逸らした。


「そっか」

「でも、あまりにも一方的だから納得できないよ」

「どうしたら、納得できる?」

「できない」

「じゃあ……」

「だっておかしいよ。こんなのズルい」

「ズルい、か」

「そう思わない?」

「思うよ」

あまねは、嫌というほど響太が本気だと感じていた。今までも何度かこういうやり取りはあったが、今回は抜き差しならないものがあった。責めたところでどうにもならないこの状況で、あまねが知り得たものといえば、とりあえず冷静になるしかないという、切なさだけだった。


「ちょっと考える。それで、もう一度会って」

「分かった」

響太はそう言うと、二度と喋らないのではと不安になるほどに固く唇を結び、深々とソファーに沈み込んだ。


「十一月十一日」から今まで、響太のいる生活を疑わなかったあまねには、現状を正確に理解することはできなかった。ただ、それでも別れというベクトルはそのエネルギーを明日へと傾け、二人を着実に飲み込んでいくようだった。

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