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森の案内


僕はひたすらに森には行くまいと説得を試みた。


今から森に行くなんて、よし今から一緒に魔物に喰われに行くぞ!って言っているようなもんだ。


でもやっぱりお偉いさんは頑固と言うかなんというか、僕の有難い忠告など全く気にするつもりがないようで、今から出発するの一点張りだ。


「あの、もう一度言わせていただきますけど、日が落ちれば周りなんて見えませんし、夜目のきく魔物の格好の餌ですよ。」


「わかりました。それで、準備はまでできていませんか。出来れば早いところ出発したいのですが。」


だめだ、会話が全く成立していない。


僕は思わずあきれと共にため息をつく。


それを見ていたのか、今まで会話に入ってこなかった2人の騎士のうち1人が言葉を発する。


「まあ安心しろ少年。俺たちは少なからず王都では名の知れた精鋭だ。魔物数匹ぐらいどうってことはない。」


魔物数匹で済めばいいのだけれど、あいにくあちらは集団で動くみたいだし、そんなに悠長に構えてると痛い目を見る気がする。


...なんて口にしちゃったら怒られそうだもんなぁ。


「そう...ですか、それなら安心ですね。準備でしたらもう大丈夫ですよ。元々何か森に持っていくってわけでもないので。」


もはや仕方ない。ここまで言っても聞いてくれないんだし、僕が折れる以外に道はないのだろう。


僕が諦めて了承するや否やまともに会話ができていなっかたリーダーっぽい彼が勢いよく立ち上がる。


うちの椅子、ボロボロで壊れやすいからもっと丁寧に扱って!!


「よし、ではあの忌まわしき森に向かいましょうか。」


その言葉に他二人の騎士さんたちも立ち上がり身支度を始める。


といっても結局持ち物とかはそんなにないみたいで、ごっつい剣を腰につけて、あとは見たことのない、でも明らかにおいしそうな保存食に似たものをぶら下げているくらい。



森に向かう道中、彼らは僕にはよくわからない会話をしていたので、おいしそうな保存食についても、なぜ森に行かなければならないのかの質問もさせてもらえなかった。若干一名いまだに口を開いてすらいないけれど。


というか本当に僕は必要なんだろうか、結局この道をまっすぐ行くと森につきます。って言った途端、あのよくしゃべるリーダーっぽい人が先陣を切って前を歩いている。


これでは僕は案内人でも何でもないし、いまゆっくりと家に戻ってもばれないんじゃないだろうか。


そうこう考えているうちに森までついてしまった。


「少年、ここから案内を頼みます。」


「案内って、一体どこまで行けばいいんですかね。残念ですけど国境近くぐらいまでしか案内出来ませんよ。」


そもそも薬草が国境近くにあるからいつも仕方なくそこまで行くのであって、出来ることならそんな危ない所までは行きたくはない。


「ああ、そこまで行けるなら十分ですね。」


「わかりました。あ、あとここからは魔物出るんで静かにしてくださいね。」


僕の有難い忠告に、リーダーさんは苦笑の表情を浮かべる。


「いや失礼、今まで幾度となく魔物を炙り出して討伐してきた私たちが、魔物の出現に怯えて進まなければならないというのが、滑稽でして。」


あ、はい、そうですか。

こちとら魔物なんぞ慣れちゃいないんですよね。


「少年よ、魔物魔物というがどの種類の魔物かわかるか?」


お、筋肉系お兄さん、討伐する気満々かな。


「確かグルウルフとかいうらしいですけど、本当かどうかわかりません。誰からの情報かも覚えていませんし。」


筋肉系のお兄さんとリーダーはよくわからないという顔をするけれど、フードをかぶった一言も話さない方は明らかに反応を示した。


「うーん、聞いたこともない魔物だなあ。べレスさんはどうですか。」


「いや、私も聞いたことがありませんね、まあそもそも殺した魔物の名前すらも記憶していませんが。」


「ガラガルはどうだ、お前は何か知らないか。」


お、ここでようやくフード男に話が振られた。


「私も、知らない。」


おお、思ってた以上に低い声だなあ。

というか絶対何か知ってるでしょ、あの反応で知らないは変すぎる。


「まあ本人も曖昧だと発言してるわけですし、そもそもそこまで気にすることではないでしょう。それによって何かが変わるわけでもないですし。」


「確かにその通りですかね。少年、なんにせよ我らにかかれば問題ない。」


だといいですけど。まあ逃げられる準備だけは常にしておこう。


「はい、その時はお任せしますね。」


その時、なんて縁起でもないことを言ってしまった。頼むから出てくんなよ。





森に入ってからも、僕らはただ一直線に進むだけだった。

本当にこんなことで税金をなくしてくれるのか不安でしかないけれど、とりあえず今は先導して案内っぽくするしかない。


「少年、あとどれくらいで国境手前ギリギリにつく。」


筋肉の兄さんアホなのか!? この静かな森にただでさえ足音を立てているというのに、そんなバカでかい声出したら魔物の格好の的になるじゃないか。


僕は一度止まって振り返ると満面の怒り顔で口に人差し指をあてる。


「ああ、失礼した。」


こいつ頭まで筋肉かよ。


と思ったら頭筋肉はこいつだけじゃなかった。

「えっと、それであとどれくらいなのか教えて頂けますか。」


「だからうるさいって言ってるんだけど!!ねえ、魔物がくるの!オツムゆるゆるのおバカさん集団ですかね!?」


思わず頭にきて大声を出してしまう。

一度冷静にならないとまじで死んでしまう。死んでしまったら貧乏もくそもない。


「はぁ~、ふぅ~。今ここが薬草地帯なので、」

生えている薬草を一束つかんで見せる。


「まあ、あと10分北に進めば国境手前ぐらいだと思いますよ。」


リーダー、筋肉はきょとんとした顔でこちらを見つめているけれど、正直僕が激怒した理由くらい言わなくともわかっていただきたいものだ。


ほら、フドーマンなんて腰の武器に手をかけて、明後日の方を見つめているじゃないか。


...ん?それ何やってるの。


「魔物、来る。」


そう発するのとほぼ同時に、今まで僕らが通ってきた南の方からグルウルフが何匹も顔を出す。


終わった。そう判断しつつも全力で走って逃げる体制をとる僕とは違い、筋肉が背中にしょった大剣を構える。



「魔物っていうのはこいつのことか、なんだ熊のような巨体を想像していたのだがこれは残念だ。」


いやウルフ、狼って言ったじゃん。お前の頭が残念だわ。


「まあすばしっこそうですし、見たところ7、8匹ぐらいはいそうです。油断しないで確実に倒していきましょうか。」


お前らやっぱり戦うのね。うん、頑張って。応援してる!


僕は逃げるけど。



僕が背を向けたと同時に、おバカさんたちは魔物にとびかかる。といってもリーダーの方は魔法使いなのか、武器は構えず詠唱を始めた。


あれ、お前自分で王国の騎士とか言ってなかった?騎士が魔法使うってなんかおかしくね。


っと早く逃げよう。取りあえずグルウルフたちとは反対の、北の方へと全力で走る。


その瞬間、僕の前を、僕よりも必死の形相で、一人のハゲが走り去る。



顔とか見えてなかったから一瞬わからなかったけれど、こいつあのフードマンだ。


え、こいつ戦わねえの?仲間おいて逃げるの?僕も人のこと言えないけど。


僕はすぐにフードに追いつくと、横から話しかける。



「あれ、フードさん戦わなくていいんですか。」


「あれは、だめだ、でも走っても、追いつかれる。とっても素早い。今まであれと遭遇したとき、どうしてきた。」


おお、こんなときだけれど、あのフードマンがこんなに喋れるなんて、なぜか感動しちゃう。


「いや、別に、走って逃げてきましたけれど。じゃあすみません先行きます。」


驚きを全面に出す彼をおいて、僕は全力で走り始める。


「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」


後ろを振り向かなくてもわかる。筋肉と偽騎士リーダーがやられた。


僕はより一層死に対する恐怖に襲われ、ただひたすらに、一直線に走り続けた。



どれだけ走ったかはわからないけれど、少なくとも1分近くは走っていただろう。


まあ追ってきている様子はなさそうだし、よっぽど大丈夫だとは思うけれど。


それにしても全然知らない場所だ。いつもの森であることは間違いないのだろうけど、明らかに生えている草木が違う。


まるで、そうまるで別の国の森にでも来たかのように...


瞬間、

「ドスッ」

鈍く重い音が響き渡ると、僕の意識は暗闇に呑み込まれた。



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