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獅子の皮を被った紅魔王  作者: ベベワオン
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PrologueⅡ -日常と金髪少女―

とりあえず、話が続くよう出しときます。

PrologueⅡ -日常と金髪少女―


ブンッブンッブンッ

陰る空の下、一人の青年が木刀を手に素振りをしていた。

さて、こんな朝早くに素振りなんてやっている俺の名前は〝朝倉春人〟。

性が戦国の武将と同じなのが少し自慢な剣道大好きっ子である。ちなみに名前は春に生まれたからと安直感漂うネーミングだ。

昨晩、俺は変な夢を見た。燃えた屋敷の中で悪だと言わんばかりの黒い騎士を相手にする夢。

(どうせ夢を見るなら戦国時代を背景にした夢を見たかったぜ。本能寺の変の信長みたいな)

ちょっと期待外れな夢は朝稽古を知らせる目覚まし時計により閉幕。そして、早朝の日課である素振り千本をこなしていた。

幼いころから俺は剣の道に惹かれていた。幼少時代、普通なら【~レンジャー】や【~戦隊】を見るだろう。

だが、じっちゃん子だった俺は祖父と一緒に時代劇を見るのがなにより好きだった。悪党をズバズバと倒すところは今見ても最高だ。

そんな俺だからこそ、心地よい木刀の風切り音が耳に入るたびに気分が高揚として、疲れなどなんのそのだ!

「ふうっ」

 素振りを終え、木刀を庭の木に立てかけ近くに置いてあるやかんを手に取り、中に入った水をグビリと飲む。

「ぷはあ。今日は曇りのち強風……嫌な天気だ。それはそうと学校の行く準備をしないとな」

 汗をかいたら朝シャン!それでシャワーを浴び終わったら、風を引かぬよう濡れた髪や体を拭きとる。

無論、体はムッキムキの腹筋シックスパックにオオコブ上腕二等筋だ!

「朝食ができたわよ。早く席に座りなさい」

 洗面所から母さんの声が聞こえた。俺んちの家系はもちろん本物の朝倉家……だったら、よかったんだろうけど、残念ながら縁も血筋も全く皆無の平凡な出だ。

「炊き立てご飯に鮭の照り焼き、味噌汁。ザ・日本のご飯万歳」

「何を馬鹿なことを言っているの。さっさと食べて学校に行きなさい。もう、お父さんは仕事に向かったわよ」

「おっけ~」

 毎朝素振りして、学校へ行き、勉強をする。そんで、授業が終わったら剣道部に行く。

それが俺の日常。そんな日常の中で部活の時間こそが、学校での一番の楽しみだ。

けれど、最近はつまらなく感じている今日この頃。俺が全校の剣道大会で準優勝した後、部員たちは委縮して相手をしてくれない。したとしても負けるのが当たり前になっている始末だ。

 その事を思い出すと今の天気のように心がどんよりと灰色気分になる。

「はあ~」


つうか、灰色からブルーな気分になってきそうだ。『そんな雨模様な気分が天気にも影響するかも?』とおちゃらけては気分一掃。一応傘を持って家の玄関を出た。登校の道のりを俺はぼんやりと空を眺めながら、ため息をついた。

「あ~あ、次の大会までこんな気分が続くのか~。欲求不満で暴漢になっちまいそうだぞ!」


 そう。それは優勝を取りこぼした前大会。前項の猛者の中で一際強かったあの優勝者。名前は高橋……なんとかだったっけ?

まあ、とにかくその試合は久々に熱く燃えた。試合後にも(強引に)挨拶をしてきたし、互いにも紹介し合った仲になった。そして、高橋はとある道場で稽古をして強くなったらしい。滝沢流って名前の素手や武器なんでもありの流派だって話だ。


さらに、驚くことにその道場では一つ年上でありながら、高橋よりも強い男がいるというのだ。道場主の孫だそうで、彼の武勇伝は都市伝説になっているんだとか。


「自分よりも強い男が間近にいるなんて羨ましすぎるぞ、高橋!はあ、どこかに剣道が強い屈強な男は転がっていないかな~」

 そんな馬鹿げた事を言っていたら、ポツポツと雨が降ってきた。

「お天道様まで不機嫌になっちまったか」

俺はすぐさま傘を開く。すると、数刻も経たないうちに雨が降り始めた。

 天候が本格的に荒れるよりも先にさっさと学校に向かおうと思った。


その時だった。

ふと、向こう側の歩道を歩く少女に目がとまる。

長い金髪の髪に白いコートを着た背丈140ちょいの少女。顔は距離が離れていて見えない。

「こんな路地で外人さんを見るなんて珍しいな」

 というか、この町で初めて外国人を目にしたぞ。まさか、昨晩の洋式映画の夢はこれを予言してなのか!?


「な~んて、まさかな~。って、おいおい」

驚いたことに金髪の少女はこの雨の中傘もささずに歩いていた。まるで映画で彼氏にこっぴどく振られた女性のよう。

「なんかショックな出来事でもあったのか?でも、さすがにこの土砂降りの中を放置はよくないよな」

 遅刻するも覚悟で彼女のいる歩道へと走る。下心なんてありませんよ。純粋に人を心配する日本人の優しい気心ですとも。俺は仁義に熱い男なんだ!・・・・・・ホントですよ。


 あと、10メートルまで来たところで、ようやく金髪少女の顔を拝めた。そんで見た俺は二度驚いた。

めちゃくちゃ美人だった。いや、美少女というべきか。外国人は元から顔が整っているらしいが、実際でみると納得できてしまう。セミロングの金髪とグリーンの瞳に服装は女医さんが着るような白のロングコート。彼女は頭に羽織る物がなく、その綺麗な髪は雨更紙になっているのだが―――

(あれ?気のせいだろうか。雨を浴びてるのに、濡れている形跡がないような)

綺麗な金髪や白のロングコートは濡れるどころか、水滴さえついてないように見える。まるで見えない膜に遮られているかのようだ。


(海外の防水加工ってすごいな。っと、待て。このまま、あんな美少女に話しかけようなんて、ナンパ目的の下心で近づこうとしてるようで恥ずかしいな~。けど、ほっとくことの方が酷いよな。というか、考えている時点で下心があるようなもんか。なら、さっさと傘あげて退散する方向で)

 流石に如何に防水加工が施されても、雨ざらしにしてたら風邪をこじらせてしまう。せめて、風邪をひかぬように傘を手渡そうと歩み寄ろうとした時だった。

 

 彼女が十字路の横断歩道に差し掛かった時に事件は起きた。


「ん?あの車ちょっと早すぎやしないか」

俺から見ての真正面から赤信号だというのに、スピードを落とさずに突っ込んできたトラックを目にしたんだ。

ひとつめの横断歩道は無視し、彼女の歩いている二列目の横断歩道へ差し掛かる。金髪の少女が正面にいるのにトラックは方向転換する気配もない。


「あぶないっ!」

 刹那、俺は叫んだ。だが、こんな一瞬に警告を促しても反応できるはずがない。その判断が頭に浮かぶよりも先に俺の体は反射的に彼女へと駈け出していた。


「くそっ!」

 俺の日ごろ鍛えた体は自慢に思っているが、流石に10mの距離を一瞬で詰める事は出来ない。


まるで走馬灯のように周囲の速度が遅く感じた。だが、そんな世界でも俺の肉体は彼女へと辿り着けない。俺は自分の無力さを痛感したまま彼女がそのまま轢かれる惨状を目に焼き付ける―――ハズだった。


次の瞬間。俺は驚きに目を見張った。なぜなら、金髪の少女と暴走トラックが5mともない距離で金髪少女の姿が忽然と消えた。その刹那、まるで最初からいたように横断歩道の向こう側にその金髪少女がいた。まるで映画のワンシーンを切り取っては繋げたように金髪少女が現れたのだ。


(瞬間移動?テレポート?なに、どこかの戦闘民族か?)

いつの間にか歩道へと渡り切っていた金髪少女に驚きを隠せないでいたが、なんにせよ。トラックに轢かれそうになった金髪少女は安全区域にいるんだ。俺は心の中でほっと胸を撫でおろした。


だが、その安堵の溜息も次の瞬間に引っ込むことになった。


 キキキィ

(ん?)

 唐突に聞こえるブレーキ音に眉を潜ませた。

 暴走車は遅れながらも金髪の少女を避けようとしたのか、横断歩道を避けるように、歩道へ乗り出した。


(おいおい。今更方向転換って遅すぎるだろう。まあ、乗り出したのが金髪少女のいる歩道じゃなくて、反対側の俺がいる歩道だったからよかったものの・・・・・・って!)


 そう・・・・・・トラックが乗り出した進行方向にはまさに駈け出している最中の俺がいる。歩道を彩る小さな植木をバキバキと踏み砕きながら突き進む。そして、突っ込む暴走トラックの前には急に進行方向を変えたトラックを避ける暇もない走っている俺がいた。


(これって!この走馬灯って、俺かあああああああぁぁぁっっ!!)


 ダアンッ

 目まぐるしく回転しては飛び跳ねる世界。

 

 ようやく世界が止まったと思ったら、節々から感じる激痛に叫びあげながら転げまわりたくなる。だが、自分の喉からかすれた声と内から溢れ出る血反吐しかでない。自慢の肉体はピクリとも反応せずにただ激痛だけを伝えてくるだけだった。


 雨がシトシトと降り注いでは痛みで焼ける様な肉体を次第に覚ましていく。そして、徐々に感覚が鈍く……薄まっていく。


そして、俺は理解した。『ああ、俺は車にひかれたんだ』と・・・そして、死ぬのだと。

今更な思考。景色は徐々に真っ白にフェイドアウトしていく視覚。


 そんな薄れゆく意識の中で最後に目にしたのはアスファルトの灰色に、自分から溢れ出る血の赤。


 そして、自分の前に立っている誰かの可愛らしいピンクのスニーカーだった。


次回は一週間後に

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