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空海なら、現代日本で何をする?
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平成二十五年十月二十一日。
今日は、空海のバイトデビューである二十日・二十一日の「須〇のお大師さん」の縁日二日目であった。
「あった」というのは、もう今は午後六時を回っているからだ。彼の話しでは、もう仕事は終わっているハズである。
俺自身のバイトは昼のシフトだったので、彼より遅く出て、早く帰って来ていた。
俺は、空海のデビューを祝う為、〇番しぼりを奮発した。あと刺身の盛り合わせ。ご飯も炊いて、味噌汁も作った。
ややあって、空海が帰って来た。手にはビニールの手下げ袋を持っている。
「おお、お帰り」
「帰ったで。これ、お土産」
「なんやこれ」
「晩ご飯やて。須〇寺の役僧さんは『ヘビ』ゆうてたわ」
袋の中を見てみると、プラスチックパックの中に、うなぎの蒲焼きと白ご飯が入っていた。
「なるほど。ヘビな」
俺は笑ってしまった。
「でも、おもろかったでバイト」
空海は笑いながら言った。
「ほうか、良かったなあ」
「何と言うか、千年経ったらこんななるんやな思て」
「空海にしか言えん感想やな」
「でもな、先祖とか、死んだ親とかに、あいさつするみたいに供養するの、良いかもな、とも思たわ」
空海は言いつつ、テーブルに着いた。先ず〇番しぼりを開ける。
「カンパーイ」
二人して缶を当てると、のどにビールを流し込む。
「プハーッ!」
二人で大きく溜め息をついた。
「やっぱりビール美味いな」
空海がニンマリとして言った。
「発泡酒とはちゃうな」
俺も首を振りながら言う。
「で、どないやったんバイト?」
俺はワサビを醤油に溶かしながら尋ねた。
「二日とも経木供養やったんやけど」
「キョーギクヨー?」
「板塔婆の形したうっすい板があんねん。それに戒名とか、何々家先祖代々とか書いて、お経上げて供養すんねんけど、これが結構いっぱい来んねん。ずっーとお経上げっ放しや。ノド渇れるか思たわ」
「ヘー、結構忙しかってんな」
「でな、これが法礼、つまりはバイト料やな」
空海が、オレンジ色の封筒をヒラヒラとさせながら言った。
「なんや、給料袋やないんや。てゆうか、なんやその封筒?」
「『〇戸市仏教会の花まつり』って書いたあるな。廃物利用って事かな」
「結構いい加減やな、須〇寺」
「ところで、この絵、お釈迦さんやんな?」
「多分な。知らんけど」
「お釈迦様の誕生日って、灌仏会の事やんな?何で花まつりなんや?」
「俺に聞くなや。ググッたらええやん」
「ホンマや。ググッたらええんや」
空海はタブレットを取り出した。
「えーっと、『花まつり 明治時代のグレゴリオ暦導入後、4月8日は関東地方以西で桜が満開する時期である事から浄土真宗の僧侶安藤嶺丸が「花まつり」の呼称を提唱して以来、宗派を問わず灌仏会の代名詞として用いられている。』Wiki〇ediaより、か。成程な」
「『サタデー・〇イト・フィーバー』やな」
「何やそれ?」
「トラボルタやん」
「ますます判らん」
「ググッたらええやん」
「ホンマや」
空海はタブレットで検索を掛けた。
「花まつり。おしゃかクン=J,トラボルタ説 - いか@ 武相境斜面寓 『看猫録』ってのがヒットしたで。あ、この下の写真がトラボルタか」
空海はぶつぶつ言いながら、今度はトラボルタを調べている。次は『サタデー・〇イト・フィーバー』。そこからYou〇ubeで動画へ。次から次へと検索が広がって行き、空海はその作業に没頭して行った。
「おーい、汁、冷めんで」
俺は一応声を掛けたが、空海はすっかり検索のチェーンリアクションにはまっている。
最後には、全然関係の無い『コーラにミントを入れてみた』みたいな動画を見て、大笑いしていた。
20180522