告白
3月になって、加藤さんが異動することがわかった。
3月31日。加藤さんと一緒に仕事をする最後の日に、あたしはある行動に出てしまっていた。
定時が過ぎて、目の前には、机周りの片付けをしている加藤さん。
あの、と、あたしは声をかけた。
ん?と振り向く加藤さんに、告白をしてしまっていた、
「私、と、付き合っていただけないでしょうか。」
ちょっとびっくりした顔の加藤さん。
「俺、で良いの?」
どうせ、また、鈴木さんが変なこと言ってるな、くらいなんだろう。
「加藤さんが、好きなんです!」
顔が赤くなる。
胸がドキドキする。
嫌われたって良い。
どうせ、明日からは違う所属に行くんだもん。
これが、最後だ。最後なんだ。
あたしがじっと見つめていると、加藤さんは困ったように笑った。
ずきん、と胸が痛む。
あたし、加藤さんを困らせている。
どんな返事が返ってくるのか怖くて、あたしはぎゅっと目を瞑った。
「良いよ。」
暗闇の中で聞こえる加藤さんの声は優しかった。
………え?
「まー、お互い、独身なんだし?」
そっと目を開けると、にこにこ笑っている加藤さんが目の前にいる。
「…そ、そのまま、ゴールまで行けば良いんだし?」
恐る恐る呟く。
あぁ、これは、いつかの時の。
あの休みの日の会話だ。
ぼうっとした頭で、ぼんやりとあたしは考える。
「そうそう。ま、他の人には内緒ね。」
なんだか、夢みたい。
「夢じゃないよ?」
出た、加藤さんお得意の心を読む。
「俺、次の所属近いし、引っ越さないから。四月のどっかでまた会いましょう。連絡するよ。」