表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/51

五日目 2

 第三の推理――。

 これも雅夫を数に含める推理。

 この場合、雅夫の遭難だけを別なものとして、悪魔とは切り離さなければならない。

――メモは雅夫の筆跡だったんだろうか?

 残されたメモとリュックの場所から、雅夫が山小屋に入った可能性はないと考えていた。だが山小屋に入っていたとすれば、メモに書かれていたことが怪しくなる。

 しかもだ。

 メモが宮村の息子が書いたものなら、そうしたこともつじつまが合う。つまりメモは、雅夫が山小屋に入っていないというアリバイ作りである。

――調べてみる価値があるな。

 あとでメモの筆跡のことを、星野さんに確かめてみようと思った。

 可能性が一番あるのは第三の推理であろう。

 だが実際に悪魔に遭遇した山田さんとしては、悪魔と切り離すこの推理に納得がいかなかった。

――数さえあっていれば、アイツがミツエだと言い切れるんだがな。

 七人分の人骨は同じ場所にあった。雅夫の遭難だけを別なものにすることにはどうしても抵抗がある。

 だとすれば、次は第一の推理となる。

が、これについても疑問がぬぐえない。

 遭難者が行方不明になり始めたのが五年前からということだ。雅夫のときからなのだ。

 今回のことは、雅夫の遭難とミツエの自殺を抜いては考えられない。

――どうして七体分なんだ?

 山田さんは迷路の出口を探し出そうと、それからも推理をめぐらせることに没頭したのだった。


 雨は昼前にやんでいた。

 星野さんには室内電話で話があるからと伝え、わざわざ部屋まで来てもらった。

「テレビでみたんですけど、この村、すごいことになりましたわ」

 山田さんの顔を見るやいなや、星野さんが興奮した口調でしゃべる。

「ええ、ほんとにおどろきですよね」

「みんな、びっくりしていますわ。人の骨が、いっぺんに七人分も出てきたんですもの」

 やすらぎ旅館の従業員たちの間でも、この怪事件の話題でもちきりだそうである。

「ミツエさんの復讐だって、そんなことを言ってる人も。そうじゃないのに」

「ええ」

 山田さんはあいまいにうなずいてみせた。

 真実は語れず、悪魔のことを口に出せないもどかしさを感じながら話す。

「ただですね。今回のことを五年前の事件と結びつけると、つじつまが合うんですよ」

 ここで。

 第三の推理だけを話すことにした。悪魔のことは抜きにして話せるうえ、可能性も一番ある。

「あくまでもボクの考えなんですが……」

 山田さんは話しながら、頭の中であらためて、この推理の整理をしていた。

 メモから雅夫は、山小屋に入っていないと考えていた。しかし、メモが偽装なら話は変わる。残された リュックの場所にしろ、宮村の息子が偽装工作をしたと考えれば筋が通る。

 宮村の息子がなんらかの理由で雅夫を殺害し、山小屋の床下に埋めた。その息子をかばうため、父親の宮村議員が村長らに登山記録を抹消させ、事件の真実を闇にほうむったのであろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ