アンブリアメンテ 【選ばれたピアニスト】 11
[場所:神殿・外]
[セフィル]:「さて、次のピアノの所に向かうぞ」
[繭子]:「ええ!? まだ歩くんですか~?」
[吹雪]:「当たり前じゃないか。全てのピアノを回らなければ意味がないだろう」
[繭子]:「ふーちゃん――」
[吹雪]:「却下だ」
[繭子]:「まだ何も言ってないのに~」
[吹雪]:「言わなくても分かるわ。何があろうとも俺はおぶわん」
[繭子]:「大丈夫、ワタシ軽いよ? 40くらいしかないよ?」
[聖奈美]:「そ、それしかないんですか? 先生は」
杠、何故そこに食いついている。
[繭子]:「うん、そうだよ? え? 聖奈美ちゃんは」
[聖奈美]:「え? あ、その……てい!」
[吹雪]:「がっ!? な、何すんだよ」
[聖奈美]:「何でもないわよ、別に」
[吹雪]:「じゃあどうして叩く!?」
[聖奈美]:「仕方なくよ」
[吹雪]:「仕方なくて叩くな!」
[セフィル]:「うん、私もそれくらい軽くなりたいな」
[カホラ]:「お母さん、お母さんがそんな軽くなったら骨と皮しか残らないわよ」
[セフィル]:「そうか?」
[カホラ]:「そうよ、吹雪と同じくらい身長あるんだから。繭子先生が軽いのは小さいからでしょ」
[セフィル]:「そうか、なら現状維持で大丈夫か」
一体何でこんな話になっているんだろう。
[繭子]:「ほらふーちゃん、おんぶ」
[吹雪]:「やらん」
[繭子]:「何で~? こんなに軽いのに~」
[吹雪]:「軽かろうが重かろうが、もう俺はおぶわん。もうしないって言っただろうが」
[繭子]:「えー? もうこれ以上歩けないよ」
[吹雪]:「さっき走ってただろうが。嘘を言うな嘘を」
[繭子]:「走ることはできるの。でも歩くことはできないの」
[吹雪]:「何だよそれは」
[繭子]:「とにかく疲れたのー、何とかしてー」
[吹雪]:「だー、くっつくなー!」
[舞羽]:「でも、確かにここから全てのピアノの場所までは距離があるね」
[カホラ]:「そうね、疲れるのは無理ないかもしれないわ」
[セフィル]:「そうだな、よし、じゃああれを使うか。おーい、繭子、吹雪、こっちに来い」
[吹雪]:「え? はい」
[繭子]:「んぎぎー、くふぃが、くふぃがー!」
俺は学園長のところに向かう。
[セフィル]:「三人もこっちに来るんだ」
[舞羽]:「は、はい」
俺たちは学園長の周りに集まる。
[セフィル]:「よし、じゃあみんな目をつぶって、そして集中するように」
[聖奈美]:「え? は、はい、分かりました」
学園長の言従って、俺たちは目をつぶった。
[セフィル]:「エル・エルプリウス……………………はっ!」
……………………。
…………。
……。
[セフィル]:「よし、目を開けていいぞ」
[舞羽]:「……え? ここは?」
[セフィル]:「もちろん、神殿だ。ここは夏を司るピアノがある場所だ」
[吹雪]:「なるほど――ってそれもそうなんですけど、どうして俺たちここにいるんですか?」
[セフィル]:「ん、ああ、転移の魔法を使ったんだ。これなら移動時間もかからないからな疲労も軽減できるし一石二鳥だろう」
[聖奈美]:「学園長、転移魔法を使えるんですね」
[セフィル]:「まあな、これでも魔法は結構得意だからな」
[聖奈美]:「さすがですね」
でも、ちょっと待てよ?
[吹雪]:「学園長」
[セフィル]:「ん? 何だ?」
[吹雪]:「転移魔法を最初から使っていれば、もっと疲労も軽減できたんじゃないんですか?」
[カホラ]:「そうね、別に桜花のピアノまで歩いていく必要はないはずだものね」
[セフィル]:「…………」
[吹雪]:「…………」
[セフィル]:「よし、中に入ろうか」
なかったことにした!? でもまあ、運んでくれた人に文句はつけられまい。
[カホラ]:「……とりあえず、入りましょうか」
[吹雪]:「そ、そうですね」
俺たちは神殿に足を踏み入れた。




