アンブリアメンテ 【選ばれたピアニスト】 9
[場所:山道]
四季のピアノはそれぞれ、島の最北、東、南、西に存在している。で、そのピアノは小さな神殿のような中に置かれている。どうしてかは、分からない。俺が生まれた頃にはすでにそこにあった。当たり前か、何年も何年も繰り返してきたことだしな。なければ逆におかしいだろう。
ま、しかし、先輩が気になるのも分かるな。神殿の中に設置されてるピアノだからな、それなのにあまり詳しい文献が残されてない。浪漫があるもんな。真実を聞いてみたい気もする。
にしてもだ。
[舞羽]:「はあ、はあ……」
[セフィル]:「疲れたか? 舞羽」
[舞羽]:「あ、大丈夫です。はあ、はあ」
[繭子]:「ふーちゃーん、おんぶ~」
[吹雪]:「だー、もう少しだろう? 一人で歩け一人で」
[繭子]:「だってー、疲れたんだもん」
[吹雪]:「普通は教師が率先して生徒を心配すべきじゃないのか」
[繭子]:「今は教師じゃないもん、ピアニストだもん」
[吹雪]:「まだ弾いてもないくせに」
[繭子]:「おんぶして~、ワタシはお姉ちゃんだよ~」
[吹雪]:「関係ねぇだろそれは。ギャーギャー騒ぐんじゃねぇ」
[カホラ]:「相変わらず仲いいね、あの二人は」
[セフィル]:「……ふむ、カホラ」
[カホラ]:「何? お母さん」
[セフィル]:「疲れた、おんぶして」
「お母さんは真似しなくていいから!」
……………………。
[セフィル]:「よし、着いたぞ」
道が開けると、そこには立派な神殿があった。
[繭子]:「ふー、疲れたね~」
[吹雪]:「何が、疲れただよ、このチビ介が」
[繭子]:「ふーちゃん、ありがとね~」
結局俺は、マユ姉をおぶってここまで歩いてきた。
[繭子]:「さすがは男の子だー」
[吹雪]:「勝手に飛びついてきたんだろうが。もうしないからな」
[繭子]:「えー!? 横暴だよ~」
[吹雪]:「どっちがだよ! このままじゃあ俺の体が保たないだろ」
[繭子]:「大丈夫だよ、男の子じゃない」
[吹雪]:「男にも限界ってものがあるんだ」
[繭子]:「うー」
[セフィル]:「おい、吹雪、繭子、早く中に入るぞ」
[繭子]:「あ、はーい」
[吹雪]:「走れるんじゃねぇかよ」
何が一歩も歩けない、だよ……。
[カホラ]:「大丈夫? 吹雪」
[吹雪]:「あ、はい。何とか……」
[カホラ]:「ふふ、お疲れさま」
先輩に言葉をかけてもらいながら、俺は神殿の中に足を踏み入れた。




