アンダンテ 【吹雪の日常】 5
[翔]:「しかし、どうすっかな~。こりゃ制服が使い物にならねぇな」
[吹雪]:「「自業自得だろ、それは」
[翔]:「オレがいい男なばっかりに、こんなことになるとは……ああ、かっこいいって罪だな」
[吹雪]:「アホ」
[翔]:「吹雪ちゃん冷たい!」
[吹雪]:「一般的な返答をしたつもりだが」
[翔]:「ひょっとして、須藤もそう思ってる、の?」
[舞羽]:「え? ……あ、あはは」
[翔]:「ぐおお……肺に、肺に穴が……」
舞羽は引きつった笑いを浮かべていた。
[吹雪]:「とにかくだ、あんまり目立つようなことはしないほうがいいんじゃないか? また捕まっちまうぞ」
[翔]:「ええ? できねぇよ、そんなこと~。これ、オレの生きがいみたいなもんだぜ~? それを取り上げる=オレに死ねって言ってるみたいなもんだぜ」
[吹雪]:「そんなんで人間は死にゃあしねぇよ」
[翔]:「物の例えだよ、オレの有り余るリビドーが、オレにそうしろって訴えかけてくるんだ。だから、簡単にはやめられねぇよ」
[吹雪]:「……教師として、この発言はどう受け止めますか? 繭子先生?」
[翔]:「え? 先生?」
[繭子]:「うう~~~~」
[翔]:「あ、マユちゃんいたんだ」
[繭子]:「か~け~る~く~ん」
[翔]:「ひょっとしてオレ、ヤバイこと言った?」
[吹雪]:「……かもな」
仮にもマユ姉は教師だからな。風紀の乱れは見逃すことはできないだろう。
[繭子]:「よくも、よくもよくも~」
[翔]:「えっと、その……あ、あはは」
[繭子]:「よくもワタシを無視して話を進めたわね~~~~!」
[翔]:「って、そっちかよ!?」
問題はそこじゃないだろうが!
[繭子]:「ずっとワタシ、ここに居たのに、ワタシのことには一切触れずにふーちゃんと舞ちゃんと楽しそうに話して~。ワタシを仲間はずれにするなんてあんまりだよ~」
[翔]:「す、すいません。つい同級生のほうに目が入っちゃって」
[繭子]:「もう、注意してよね? ワタシだって、会話したいもん」
[翔]:「はい。じゃあトーキングしましょう」
[繭子]:「うん、しよしよ」
[吹雪]:「……待てい、馬鹿もん」
[繭子]:「ぐええ、ぐ、ぐるじい……」
[翔]:「おお、吹雪の得意技が出た……」
[吹雪]:「マユ姉、あんたの仕事はなんだ?」
[繭子]:「き、教師です」
[吹雪]:「なら、こんなところで翔とトーキングしてる場合じゃないよな?」
[繭子]:「う、はい、おっしゃるとおりです」
[吹雪]:「言うべきことがあるだろ? 分かるよな?」
[繭子]:「はい、はい! 言います、ちゃんと言います」
[吹雪]:「吹雪くん、すごい……」
マユ姉は翔に向き直った。
[繭子]:「か、翔くん。あんまり、そういうことはしちゃいけません。いいね?」
[翔]:「……ここは時の流れに身を任せてこの場をやり過ごすのがよさそうだな、はい、注意します」
[吹雪]:「聞こえてるぞ? オイ」
[翔]:「じゃあオレ、先に行ってるな? じゃあ、トゥービーコンティニュー」
その台詞は一体なんだ!?
[舞羽]:「行っちゃったね」
[吹雪]:「相変わらず、忙しい奴だ……」
[繭子]:「うう、苦しかったよ~」
[吹雪]:「もう少し教師としての自覚を持てよ、マユ姉」
[繭子]:「厳しいな、ふーちゃんは」
[吹雪]:「教師を甘く見んなってことだよ」
[繭子]:「はーい、努力します~」
[舞羽]:「――あ、五分前だ。吹雪くん」
[吹雪]:「ああ、行かないとな」
[繭子]:「あ、ワタシは歩いて――」
[吹雪]:「あんたも急ぐんだよチビ介!」
[繭子]:「やー、首根っこ掴まないでよ~」
俺はマユ姉を引き摺って校門をくぐった。
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…………。
……。