アンダンテ 【吹雪の日常】 4
[場所:校庭]
[繭子]:「到着~」
[翔]:「ねえ、いいじゃないですか? ね? 少しだけ、少しだけ俺に付き合ってくださいよー?」
[女子生徒]:「いやよ、あなたみたいな不埒な男なんて」
[翔]:「オレの何処が不埒ですか? 何処をどう見てそんな発言をするんですか?」
[女子生徒]:「全てよ、全て! あっち行きなさいよ、着いてこないで」
[翔]:「そんな言い方しなくたっていいじゃないですかー? オレ、こう見えてエスコートは得意ですよ?」
[女子生徒]:「……いい加減にしないと、炎の槍をお見舞いするわよ?」
[翔]:「それは、オレに対する愛情と受け取ってもいいんですか?」
[女子生徒]:「……炎の精霊よ、我の身を脅かす輩を焼き払いたまえ」
[翔]:「あれ? ちょっと、お嬢さん? それ、マジで――!?」
[女子生徒]:「灰になりなさーい!」
[翔]:「ぎょええええーーー!?」
[吹雪]:「あーあー」
またやってるよ、アイツ……。
[翔]:「おお、何て熱さだ、まるで火だるまになってるみたいだぜ」
正しく火だるまになってるんだけどな。
[翔]:「でも、これだけオレのことを思ってくれてるなんて、何てオレは幸せなんだ」
一体どう解釈すればそんな結論に至るんだろう。
[翔]:「う、でもちょっと熱すぎるよな……アツアツアツ!? あつい~~」
[舞羽]:「ふ、吹雪くん。あのままだと――」
[吹雪]:「ああ、焦げちまうな」
世話の焼ける奴だ。
[吹雪]:「水の精よ、もう一度我に力を与えたまえ――そらっ!」
今日二回目となる水のボールを、ナンパ野郎に落としてやる。
[翔]:「ふー、一瞬でクール……お? 吹雪じゃねぇか。お前が冷やしてくれたのか?」
[吹雪]:「ああ、まあな」
[翔]:「ありがとよ、さすがは吹雪なだけあるぜ」
[吹雪]:「名前は関係ないだろう。というより、また朝っぱらからんなことやってんのか? 翔」
[翔]:「当然だ、オレが誰だか分かってんのか?」
[吹雪]:「翔だろ」
[翔]:「ああ、翔だ。翔=恋、この法則をお前は知らないのか?」
[吹雪]:「初めて聞いたぞ。な?」
[舞羽]:「うん、そうだね」
[翔]:「おお、須藤も一緒じゃないか? これはグッドモーニング」
[舞羽]:「う、うん、おはよう」
[翔]:「朝から須藤に会えるとは、今日はなかなか付いてるじゃないか、オレ」
[吹雪]:「いや、ここで会わなくても教室で会うだろ」
[翔]:「分かってないな、吹雪。美少女とは数分でも他の男より早く会うと幸運を分けてくれるんだぜ」
[吹雪]:「いやいや、ねーよ、んなもん」
[翔]:「あるよ、オレがあるって言ったらあるんだ。そう決まったんだ」
[吹雪]:「何じゃそりゃ、単なるお前の思い込みじゃないか」
[翔]:「まあ、そうとも言うかもな」
[舞羽]:「あ、あはは……」
相変わらずだな、コイツは。
島貫翔。クラスメイトで、キレイな女性に目がないトラブルメーカーだ。悪い奴じゃないんだが、暇さえあればナンパしたりしていい女を手に入れようとしてる。その行動が女性を寄せ付けなくしてるって事実には、どうやら気付いてないらしい。