アンダンテ 【吹雪の日常】 17
そして待つことしばし――。
[カホラ]:「私、入るわよ」
[吹雪]:「はい、どうぞ」
――いつものように威風堂々とした様子で、先輩は部室へと来てくれた。
[カホラ]:「こんにちは、みんな」
[舞羽]:「こんにちは、カホラ先輩」
[吹雪]:「こんにちは」
[カホラ]:「うん。今日も頑張ってるみたいね」
[愛海]:「せ、先輩、私は?」
[カホラ]:「愛海もいたのね、二人の邪魔はしてなかった?」
[愛海]:「い、いきなり疑いから入るなんて、そりゃないですよ~」
[カホラ]:「いつも邪魔をしてる印象があるからついね」
[愛海]:「も、ものいいがストレートだわ……」
[カホラ]:「ごめんごめん、で? 本当はどうなの?」
[愛海]:「そりゃもちろん――全力で尽力してましたよ」
嘘つけ、と言ってやりたかったが、途中からは少し大人しくなったからよしとしておこう。
[カホラ]:「ならよろしい」
[舞羽]:「今日は、授業が長引いたんですか?」
[カホラ]:「そうね、もう少しでシーズンだし、今が書き入れ時だからね」
[吹雪]:「そんな時にすいません、何度も来てもらっちゃって」
[カホラ]:「気にすることはないわ、私も来たくて来てるんだし、それに、そこまで勉強に力を入れることはないから」
[愛海]:「カホラ先輩、さすがです」
[カホラ]:「まあね、うふふ」
くすくすと笑っている様子は、親しみやすいことを象徴するようだった。
沢渡・E・カホラ(さわたり・エレディ・カホラ)、俺たちの一つ上の先輩で魔法研究部の前部長だ。性格と人柄の良さを併せ持ち、さらには頭も良い、部が誇る素晴らしい逸材だ。多くの人から尊敬されるのもうなずける。今はもう部活を引退しているんだが、時折こんな風にチョクチョクと部に顔を出しに来てくれる。何故なら、もう次の進路が決まっているから。
[愛海]:「私もカホラ先輩のような人になりたいです」
[カホラ]:「あら、そう?」
[愛海]:「それはもう、カホラ先輩は女子の鏡みたいなものですから」
[カホラ]:「それは言い過ぎじゃない? 愛海」
[愛海]:「いえいえ、全然全く。学園のみんなもそう思ってるはずです。ね? 吹雪くん」
[吹雪]:「何故男の俺に聞く!?」
女子の鏡だと言ってたじゃないか。普通そこは舞羽だろう。
[カホラ]:「吹雪、いいツッコミね」
今日は随分とツッコミを褒められるな。
[愛海]:「で、話を戻すと――私は、カホラ先輩になりたいです」
[カホラ]:「あら? 随分話が曲解してない?」
[愛海]:「私も思いました」
[カホラ]:「言ったの愛海じゃない」
[愛海]:「んー、まあいいや。とにかく、近いうち手解きをお願いします」
[カホラ]:「今度ね、別にいいと思うんだけどね、私を真似なくても」
[愛海]:「カホラ先輩だから真似たいんですよ」
[カホラ]:「ありがとね」
さすがだ、笑顔を絶やすことがないから、見ていてすごく穏やかになる。




