アンダンテ 【吹雪の日常】 13
[場所:部室]
[吹雪]:「おいっす」
[舞羽]:「こんにちは~」
[愛海]:「あ、来たわね」
座って待っていた女子が一人、こちらに向かって歩み寄ってくる。
[愛海]:「遅いわよー二人とも。何処で油売ってたの?」
[舞羽]:「ちょっと探し物してて」
[愛海]:「何探し物って? 恋? 愛? 優しい心?」
[吹雪]:「何でそんな目に見えないものばかりだよ」
[愛海]:「うん、今日も鋭いツッコミね、大久保くん」
[舞羽]:「相変わらず元気だね、愛海は」
[愛海]:「当たり前じゃない毎日全力で生きなかったらもったいないじゃない? 今日と言う日はもう今日しかないんだから。そこんとこ分かってる? 二人とも」
[吹雪]:「まあな」
[舞羽]:「うん」
[愛海]:「ならもっと楽しそうな顔して、笑って、泣き笑って」
[舞羽]:「な、泣く必要はないでしょう」
[愛海]:「そう? 何か感動シーンっぽくなるでしょ? 泣き笑ったら」
[舞羽]:「今はそんなシーン必要ないでしょ?」
[愛海]:「サービスショットじゃない? ユーザーに対しての」
[舞羽]:「な、何の話?」
[愛海]:「ま、とにかく。二人とも、笑って過ごしたほうがいいよ。アンダースタン?」
[吹雪]:「ああ、努力する」
[舞羽]:「分かった」
[愛海]:「よろしい」
――日野愛海。舞羽の友達で、同じ部活の仲間だ。いつも元気なのがトレードマーク、少し翔と相通ずるものがある。こんなんだから、部の雰囲気はいつも明るくなるんだ。
[吹雪]:「そろそろ入れてくれないか? 中に」
[愛海]:「合言葉」
[吹雪]:「何だよそれ!?」
[愛海]:「部に入りたいなら、合言葉を言いなさい」
[吹雪]:「き、聞いてないよーそんなの」
[愛海]:「うん、だって今思いついたから」
[吹雪]:「思いつきかよ」
[愛海]:「いいからー、合言葉。行くわよ? ――山」
[舞羽]:「えっと……川?」
[愛海]:「ブッブー、舞羽ハズレ~」
[吹雪]:「いや、ハズレじゃないだろ。山っていったら普通は川なんじゃねぇのか?」
[愛海]:「大久保くん、私がそんなノーマルな答えを望むと思う? 答えは捻って、捻って編み出すものよ。はい、山?」
[舞羽]:「……分からないよ~」
[愛海]:「はい時間切れ~。答えは――上憶良でしたー」
[吹雪]:「分かるか、そんなもん!」
[舞羽]:「分からないよー!」
[愛海]:「おお、ダブルツッコミ、やるわね二人とも」
[吹雪]:「もっと簡単なのにしてくれよ」
[愛海]:「うーん、じゃあ……私の好きな食べ物は何でしょう?」
[舞羽]:「あ、それなら私が分かるよ」
[愛海]:「はい、じゃあ答えをどうぞ」
[舞羽]:「確か……カステラとチーズケーキだったよね」
[愛海]:「ブッブー」
[舞羽]:「え? 何で?」
[愛海]:「確かに大好きよ、その二つは。でも、私が望んだ答えじゃなかったわね」
[舞羽]:「え? 何だったの?」
[愛海]:「正解は――男の子です」
[吹雪]:「食う意味違うわ、馬鹿チン」
ビシッ。
[愛海]:「おおー、炸裂したわね、吹雪チョップが」
[吹雪]:「まだ昼間だ。下ネタは夜まで我慢しろ」
[愛海]:「もう午後じゃないのー。午後になったらこっちのものでしょー?」
[吹雪]:「一応公共の場なんだから、大概にしとけよ」
[愛海]:「楽しいのになー、残念」
[吹雪]:「というか、本当に入れてくれよ。日野の問題は難しすぎる」
[愛海]:「ウソー? これでも簡単に作ってるつもりよー?」
[吹雪]:「日野の簡単は俺たちにとっての難しいに値するんだよ」
[愛海]:「これが個性って奴なのね。みんな違ってみんないいなのね」
[吹雪]:「丸パクリじゃねぇか」
[愛海]:「by、日野愛海」
[吹雪]:「勝手に著作権を略奪すんな」
ビシッ。
[愛海]:「あーん、容赦ないわねー、大久保くんは」
[吹雪]:「もういいだろ? 入れてくれって」
何だかんだ言って、少々人に見られているんだ。




