テヌート 【ハーモニクサーの鍛錬】 6
[聖奈美]:「――ふう」
数分して、一旦杠の演奏は終わった。
[聖奈美]:「どうだったかしら?」
[吹雪]:「その前に一つ、いいか?」
[聖奈美]:「え? 何よ?」
[吹雪]:「お前、ピアノの経験者なのか?」
[聖奈美]:「ええ、そうよ。それがどうかしたの?」
[吹雪]:「いや、どうしたっていうか……」
[聖奈美]:「あたしがピアノ経験者だと、何か問題でもあるの?」
[吹雪]:「いや、そういうことを言ってるんじゃなくて」
[聖奈美]:「じゃあ、何?」
[吹雪]:「いや、特にはないんだけど」
[聖奈美]:「興味本位ってわけ?」
[吹雪]:「まあ、うん」
そうなるの、か?
[聖奈美]:「ま、別にいいけど。そうよ、あたしはピアノ習ってたわ。小学校の頃からかしら。歴としては6年くらいってところかしら」
[吹雪]:「そうなのか」
[聖奈美]:「これで満足?」
[吹雪]:「え? あ、ああ」
[聖奈美]:「じゃあ、話を戻すけど、どうだった? 聞いた感想は?」
[吹雪]:「ああ、普通に上手だったと思うが」
[聖奈美]:「……ちょっと大久保、もう少し真面目にしなさいよ」
[吹雪]:「え?」
[聖奈美]:「あたしはそんな解答を求めてないの。何かしらあるでしょう? ここはこうしたほうがいいとか。本当にそう思ったのなら、あまり強くは言えないけど、そんな生易しさでクリアできるほど、この行事は甘くないわ」
[吹雪]:「あ、ああ、そうだな」
[聖奈美]:「もっと突っ込んだ意見を言ってちょうだい。でないと、あたしのためにならないわ」
[吹雪]:「そうだな、悪かった」
こんな形で反感を買ってしまうとは、ちょっと予想外だ。確かに、こんな曖昧な意見じゃあこいつに失礼か。次はもっと真剣に意見を出すとしよう。
[ダルク]:「ドンマイ、吹雪」
[吹雪]:「おう」
[ダルク]:「じゃあ、もう一回、今弾いたとこまで弾くから」
杠はもう一度鍵盤に向かった。




