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第二十七話

勇者ハロルドの元同僚たちの復讐劇は失敗に終わった。彼らは周囲を馬や牛に囲まれ逃げ場はない。

「もはやこれまでか」

最後の勇者も力尽きてその場で立ちすくむ。


「ハロルドのやつも案外大したやつだったのかもな」

乾いた笑いが漏れる。

「最後にとんだ爆弾を残していってくれた」

「ああそうだな」

俺も相手に同意する。互いに敵だった。だが少しだけ同じものを持っていた。

「というかあいつ元から結構すごいぞ。超絶自惚れやの俺が嫉妬するくらいには」

「知っている。というかお前の嫉妬とかどうでもいい」

こいつも勇者ハロルドににてめんどくさいやつだ。

「あれっ悔しくないのか?」

「めちゃくちゃ悔しい。でもなんだか納得した」

男は一人で頷く。


その間にも周囲では復旧作業が続いている。

まずは勇者ハロルドの治療。これはセシルの出番だ。

その姿を魔王様と使い魔さんが優しく見守っている。


次は粉々になった荒れ地の回復。

これはミノタウロスさんと下僕二十二号に頼む。案外二匹はうまくやっていけるのかも。


関所の開通と、家畜たちの帰還はファーブニルさんとグリフォンさんに。


最後はもちろんイーリス。

「だから心配かけないでと言ったじゃないですか」

少女は年相応の表情で涙を浮かべていた。

本当に不安だったのだろう。

「いつも悪いな」

「その謝るのやめてください」

冷たい言葉とは裏腹に彼女が身を寄せてくる。

「誰も悪くないんです」

「でも心配かけた」

俺は自分の頭をかく。

「今日なんとなく分かったよ。イーリスが心配してくれる意味が」

そして再び彼女を抱き寄せる。

「俺たちは仲間だ。だから時々嫉妬したり、逆に助け合ったり。矛盾してるけどそういうことを繰り返す」

それが人間なんじゃないのかな。

「誰かに嘘をついたり、かばったり。逆に恨んだり憎んだり、そういうくだらないことばっかりするけど」

自分だって相手だってやり直せる。好きなように生きることができるのだ。

「信じてくれるかな」

当たり前だけど難しいこと。できそうで案外できないこと。

「こんな弱くてわがままな俺だけど、好きでいてくれるかな」

右手で彼女の輪郭をなぞり、口づける。

「俺はあなたのこと、たぶんずっと好きでいると思います」

長い間身を寄せて抱き締めあう。

「一緒に幸せになりましょう」

そうして俺たちの物語は幕を閉じたのであった。


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