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第二話

文体が安定してないのでちょっと読みにくいかもしれません。

ギシギシ。ミシミシ。


鬱蒼とした森を抜け目の前に高く聳え立つ古城があった。

少女は手馴れた動きで巨大な扉を開くと俺を中に招待してくれた。


しかしなんと言えばいいだろう。

入る前からうすうす気がついていたのだがこのお城ちょっとばかしぼろい。

廊下を歩けば一歩踏み出すごとにキュッキュといやな音がするし、屋根から雨漏りがしてるのか水滴が数秒に一度は垂れてくる。


これはあれなのか。鴬張りの素敵なお城ですねと褒めればいいのか。それとも自然を意識したすばらしいつくりだと称えればいいのか。俺は内心自分のおかれた状況に戸惑っていた。


というかすでにこのお城ちょっと傾いているんですけど。イタリア式にピサの斜塔並みにアレンジしちゃったのかな。とりあえず何かボケてないとやってられない状況にまで俺は追いこめられていた。

俺、人の話もろくに聞いてなかったからか実はかなりピンチじゃないのか。女の子に誘われたからって安易にホイホイついていくのは考えなしだったんじゃないか。


少女は俺の前をスタスタと歩いている。先ほど見せてくれた懸命さや可愛らしさはどこに行った。いや後ろから見ても姿かたちはとても愛くるしいんだけどね。気持ちの問題です。


「こちらにお入りください」

少女の言葉に俺は足を止めた。どうやらここが城の最奥部のようだ。扉には緻密な装飾が施してありかつては腕のいい職人を雇えるほど城の主には権力と財力があったのだろうと察することができる。それはともかく中に入るとするか。


「ようこそわれらが魔族の長たるベルゼブブ家の屋敷へ」

書斎と思しき空間でこれまた華のある妙齢の美女が俺を待ち受けていた。メリハリのある体型を更に強調する布地少な目な黒いイブニングドレスを身にまとい、肩に届くか届かないかくらいの長さに短く切りそろえられた黒髪に、切れ長の深紅の瞳が印象的な女性だった。


「長旅ご苦労様。イーリスこの男が新たな下僕候補ってことでいいのよね」

「はい魔王様。私が先ほど話をつけてきました。ご本人からの了承はあいまいな形でしたが得ることができたので後は煮るなり焼くなり好きにしてください」


ちょっと待てええええ。なに愛らしい顔でえげつないこと言ってくれてるんだよ。あれ、俺告白されてたんじゃなかったっけ。小柄で華奢な女の子が満面の笑みを浮かべて言うセリフじゃないぞ。


対する女性はこれまた満足そうに目を眇めて俺を値踏みしている。おそらく彼女の中ではせいぜい使用人か家畜くらいの扱いなのだろう。それにしても今の俺の状況なかなか悲惨だぞ。


「あの少し聞きたいことがあるんだけど」

意を決して口を開くと二人が驚いた表情でこちらに視線を向ける。声にこそ出さないが何下僕が口利いてるんだよくらいのニュアンスが含まれた冷たい目だった。ひええ。まじで怖いよ。


「俺ってどうしてここに連れてこられたんだ?」

「イーリスから話を聞いてなかったのか」

女性は咎めるような口調で問うた。どうやら彼女の中ではすでに解決済みのことだったらしい。


「申し訳ありません魔王様。私は真剣に説明したのですがこの下僕には理解力がなかったようです」

「イーリス、責任を下僕に押し付けてはならないと何度も言ったでしょう。たとえこやつらにたいした知性がなかったとしてもしっかり教えてコンセンサスをとるのが我ら魔族の掟よ」

「はい考えが至らず申し訳ありません。そうでした、たとえ知性も品性も判断力もない人間風情にもコンプライアンスに従い同意を得るのが私の仕事でした。お恥ずかしい限りです」

更にひどい言葉になっているのは気のせいだろうか。


「ははっ分かればいいのよ。イーリスあなたは真面目で努力家ね。だが時折やりすぎてしまう節があるから注意しただけ」

「もったいなきお言葉。私もこれからいっそうの精進をせねば」

「よいのです、私はいつもあなたのおかげで助かっているのだから」

「魔王様からの賛辞のお言葉、身に余る光栄です」

もはや俺の存在を忘れているし。これ何の茶番だ。宝塚か。時代劇か。

自分だけ蚊帳の外なので俺はなすすべもなくぼんやりと突っ立っていた。


いやむしろこれは逃げるチャンスじゃないのか。ふとそんな考えが脳裏をよぎり忍び足で出口に向かう。

「じゃあそろそろ俺は失礼します」


そう告げるや否やのど元に硬く鋭利な刃物が二本当てられた。

「逃げるなんて選択肢下僕には許されていないの」

「逃げるなんて選択肢があると思って?」

少女と女性が艶やかな笑みを浮かべ耳元でささやく。かたや清楚なローブ姿の華奢な女の子に押さえつけられ、一方で豊かな胸が強調された黒いドレス姿の女性に脅されるような形で迫られる。なんともいえない心境だった。喜ばしい気持ちなど沸いてこない。ただ怖いだけだ。


「すみません、本当にすみません。許してくださいっ」

俺はガクガクと身を震わせ若干目に涙を浮かべて懇願するとようやく矛が収められる。

うん。もうどうにかなればいいんじゃないかな。


「分かればいいのよ下僕23号」

女性がニコリと笑う。とりあえず俺の前に同じ目にあった犠牲者が22人いたんだという知りたくない事実が判明したけど、それ以外はまったく理解できない。いや、理解したくない。


「それで俺はどうすればいいんですか」

そう口にするのが精一杯だった。


「あなたに与えられた任務はこの魔族を繁栄させることです」

少女が淡々とした様子で俺に告げる。初めて会ったときとは正反対の冷たい笑顔のまま。


こうして俺の下僕としての生活が始まったのだった。


今更気がつきましたがあらすじと微妙にずれてます…。生暖かい目で見てやってください。

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