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第18話

勇者ハロルドの城はすっかり静まり返っていた。

俺の目が覚めたとき正月はおろか鏡開きまで終わっていてしかも前の世界のとある東京とかでは雪まで降ってたんだってさ。まあ俺の世界のほうが若干早かったけど。東京のやつも二番煎じはやめてほしいものだよ。


ついでに俺がグンニグルで尻をぶっ刺したケンタウロスさんは

「ふんごっふんふふんっふんごおおおおっ!」

訳:便秘が治って助かったラッキー!でもお駄賃とかもってないからサヨナラー


といって帰ってしまったようだ。ちなみにグンニグルは馬の糞まみれだったのを勇者ハロルドが洗っておいてくれたらしい。イケメンで気が利くとか俺の勝ち目ないじゃん、この中二病患者めっ!しかもしっかり女の子には一切手も出せなかった模様。この中二病患者めっ!奥手とかいって純情ぶってるんじゃねえイケメンのくせにいいい!この中二(以下略)


「目が覚めましたか。気分はどうですか」

久々のイーリスの冷たい発言。顔つきがどこか険しい。

「ああ便秘が治ったような気分だ」

「また汚い発言ですね」

少し怒ったような声だった。

「まあどこぞのお馬さんの二番煎じだけどね」

「知ってます。あとそれ全然うまいこと言ってませんよ」

イーリスはだんだん俺に詰め寄ってきて。

「あなたは最低です」

「どうして」

いつもの毒舌は絶好調なはずなのにどこか感じる違和感。

「あなたはいつもトロいはどんくさいは常にどこかずれていて感性も斜め三十度くらい傾いて汚れきった眼をして人を妬んだり勝手に一人で突っ走ったり周りのことは置いてけぼりなのに時々いいこと言ったり人を助けたり相手のことなんて何一つ考えてなくて自分勝手で、とにかく最低です」

「ははっ悪いな」

イーリスの声は震えていた。

「いくら馬鹿が取り柄だからってこんなことってないじゃないですか。久しぶりの再開を楽しみにしていたらケンタウロスの尻に剣刺してしかもそれ握ったまま気絶とか」

「それも悪いな」

一応俺がんばったつもりなんだけどな。女の子って時々厳しいよね。

「普通の馬鹿はこんなことしませんよ。そもそも普通の人ならきちんと連絡なり入れて時間通りに来れるはずでしょう」

「仰るとおりです」

「そういうところが最低なんです」

可憐な少女の顔がさらに近づく。

「だっていくら待ったって全然目を覚ましてくれないんですよ」

よく見れば彼女の目元は赤かった。

「もう死んでしまったのかと思って」

イーリスがすすり泣く。声を殺しながら。まるで顔だけは何事もなかったかのように無表情に。

「せっかく理人さんに買ってもらったものも全部そろえたのに」

ん?一瞬おいしい気がしたけど。

「もう最低ですっ。私が馬鹿でした」

ぷいと顔を背けられてしまう。

「こんな馬鹿でどうしようもなくて自分のことしか考えてない人のことなんて嫌いです」

こういうときってグサッと刺さるものがあるよね。

「もう実家に帰りますっ」

「実家って」

「魔王様のところですよ」

なんだろうこの尻に敷かれてる感じ。恋人どころか夫婦だよね。プロポーズもしてないのに。

「えっ実家って」

「私がいたお城です」

ぷりぷりしつつも答えてくれるあたり優しいけど。

「分からず屋っ」

いきなり大声出されても。というかイーリスの実家ってどこだっけ?たしか昔教会にいてベルゼブブ家の養女になったんじゃなかったっけ?

「だから実家の魔王様のところに行くって……」

イーリスは言ってから自分の発言に気がついたようだった。

「別にあなたが雇ったグリフォンさんから手紙が届いたんですよ。実家から仕送りだって」

彼女はクローゼットから上質な白いドレス一着ともうひとつ男性用の礼服が。

「これってどういうこと?誰かの結婚式の準備?俺司会とか絶対無理だからね」

「もうっ」

再び怒りが再燃してしまったようだ。

「あとミノタウロスさんから大量の白菜と大根、あとお米。ファーブニルさんからはご祝儀が来たんですよ」

そして。

「最後に魔王様から言伝も」

イーリスは一拍間を空ける。

「私たちは家族だからあなたも幸せになりなさい、だそうです」

再び訪れる沈黙。

「だからっ」

頬を紅潮させながら彼女は続ける。

「告白の続きをあなたがしてください」

イーリスの片手には指輪の入った小さな包みがあった。俺が眠っていた間大事に持っていたのだろう。彼女はそれを強く握り締めいていた。

ちょっと待て。さっきまで勇者ハロルドをディスっていた俺だぞ。しかもすっかり頭から抜け落ちていたし。

「もう私だって一人で勇者ハロルドさんの周囲を探ったり、町を歩き回ったり、セシル様の呪いの原因を探ってクタクタだった上に理人さんに倒れられるのなんて……」

そのまま抱きつかれる。

「だから好きって言ってください。それだけで今までの頑張りとか疲れとかどうにかなりそうですから」

ぽたりと肩に雫が落ちる。


そうか。彼女は泣いていたのか。

俺は全然気がつかなかった。

「やっぱ俺って最低なのかも」

「そういうところも嫌いです」

嗚咽を漏らしながらも言い返す姿に俺は言葉に詰まった。本当勇者ハロルドのこと笑えないな。

「あのさイーリス、俺好きとか全然言わなかったし、よくよく考えると失礼なことばっかしてたけどさ」

彼女が俺の腕の中で震えている。

「やっぱり君のことが好きだよ」

聖夜には間に合わないのが俺らしいけど。やっぱりのろまで間抜けだけど。

「君にあえてよかった」

腕にありったけの力をこめる。だけど相手が壊れないように。でも彼女だって強いはずだ。

「だから受け取ってください」

小箱から指輪を取り出してイーリスの薬指にはめる。

「……はい」

そう答える姿は照れくさそうだけど。どこかうれしそうでもあった。



っていい話で終わりそうだったけどセシルの呪いとか大事なこと聞き忘れたあああああ

こういうことってよくあるよね?えっ?場に流されるのって俺だけなの?

聞きたかったけどいい雰囲気だから誰にも質問できない一夜でしたとさ。

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