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第一話

「あの、付き合ってください」

目の前にはつややかな黒髪が印象的なローブ姿の少女が一人、照れたような表情で俺に白い封筒を手渡してきた。

これはあれか?いわゆる告白的なやつか?


リア充爆発しろ的ななにかでしょうか。

ええ俺には何がなんだかさっぱりです。

だって前回のプロローグとテンションが大違いだからな!


と前説明もなしにモノローグもとい独り言を繰り返している哀れな俺に対して

ちょっと引いてる読者の皆さん改めて自己紹介をさせてください。


えっ何を今更?そもそもそれってもっとさりげなく地の文で入れるものだよね

と思いました?ええ俺だってそう思ってるんですよ。


はい、この辺で俺という人間の面倒くささがわかった方は大変すばらしい。

俺以上に聡明な方だとお見受けします。

俺に権力と地位と名声があれば国家勲章でも差し上げたい気持ちでいっぱいです。


というわけで以下俺の自己紹介です。興味のない人は適当に読み流してくれ。


俺はついこの間まで日本のとある地方都市で高校生をやっていた。

ひょんなことから事故に合い多くの方が尽力してくれたが

結局間に合わず命が途絶えてしまいました。

そして今転生してこの異界で勇者なんぞをしているわけです。

ちなみにランクはかなり低い。下から数えたほうが早いくらい。

しかもギルドに入ってるわけでもなくただのソロプレーヤーです。

この辺は現実世界とあんまり変わらないけど。


そんな俺の日課は森で狩ったモンスターを捌いて素材として売ること。

これが意外と商売になるんだよ。

だって多くの勇者たちは毎日大物と戦いに行くのに忙しい。正直言ってこんなちまちましたことに時間を使う暇なんてない。まあスーパーのお惣菜買って夕飯のおかずにしちゃうのも仕方ないよね、という感覚で俺の素材を狩っていくのだ。本当なら彼らも自分でやりたいとは思っているんだろうけどさ。


そんなこんなでニッチな隙間産業それほどでもないけどをメインに俺はそこそこの暮らしをしていた。

そして俺は今村のはずれの小さいけど作りはしっかりしている小屋を一軒構えて今日も今日とて適当に狩ってきたウサギの皮を剥いでいたのだ。


で本編に戻る。


「あのっ、付き合ってください!」

ほっそりとしなやかな体躯、華奢なつくりだがどこか芯の強さを感じさせる立ち振る舞い。そして可憐な翡翠色の瞳と肩まである豊かな黒髪が目を引く美少女が俺に謎の白い封筒を差し出してきた。


「私、以前からあなたのうわさを聞いて、是非とも会いたいと思っていたんです

 お願いします私と付き合ってください」

正直生まれてこの方女子という女子に縁がなかった俺に拒否するなんて発想はなかった。だってさ、その、可愛い子に告白されて悪い気がするやつなんていないよね?

だからこのときの俺は、はっきり言えば何も考えていなかった。


「もうあなたしか考えられないんです。あなた以上にふさわしい方はいません」

うんうん。ここまで一生懸命になられるとついつい鼻の下が伸びちゃうな。

女の子にしてはまだ未発達というか、まあ端的に言えばツルペタなそれがちょっとお労しいけどありがたいみたいな。

そう俺は人生初の告白に舞い上がっていた。


だから大事なことを聞き逃していた。


「……して…ほしい……ですけど、一緒に来てくれますよね」

勢いよく手を握られ顔を寄せられると甘い香りがした。女の子特有の清潔感のあるふわふわした匂い。

やばい、近すぎてどこ見ていいかわからない。


右よし、左よし、おっと前方注意!

ええ正面衝突ぎりぎりブレーキかけて引きとどまりました。


「……ですけど……いいですか?」

はい大丈夫です!美少女と二人きりまったく問題ない。むしろ間違いがあっても問題ない!

少女は小首を傾げ少し心配そうに俺を見上げていた。そこがまた小動物のようで可愛らしかった。

だから俺は内心動揺しまくり何でも来い状態でぼんやりと話を聞いていた。


「あの…具合でも悪いんですか、だったらまた今度に……」

「いや是非ともお願いします」

ここで気がない返事をしたらチャンスは二度とやってこない。そんな勘違いをした俺は二つ返事で承諾した。こういうとき必死になってしまうのが寂しい人間の特徴なのである。


「ふふっ。ではお時間少しいただいてもよろしいですか」

少女は柔和な笑みを浮かべ話を続ける。うん、やっぱり清楚な女の子っていいよね。

俺はとるもの手につかず、気もそぞろで彼女の話を熱心に聴いているふりを続けた。だってほら言ってることよく分からないし何より会話の合間に揺れる綺麗な黒髪とか少し潤んだグリーンの瞳とか他に気になるものがあったし。しかもさっき顔が近づいたとき一瞬小さいけど柔らかく、ささやかに自己主張する存在に触れたような気がしたし。……多分気のせいだろうけど。


「……で……しましょうか」

「ああ、そうですね」

ふんふんとうなずく。うんさっぱり分からない。

要は俺に彼女の言葉は馬の耳に念仏だったということなのだ。

それはこういう女性慣れしていないタイプの人間にありがちなことで、下手すると英会話の教材とか素敵な水晶とか前衛的な絵画とかとコンニチワしちゃったりするんだよね。


そうして二人手を握り合いながらという不思議な構図で仲良く談笑しているうちに彼女のお家に向かうことが決定した。

うんうん初めてにしてはなかなか上出来だ。


「では行きましょうか、私たちの城に」

少女に手を引かれ俺は深い霧に包まれた森に連れて行かれる。

この先に待ち受けるものの存在の大きさを知りもせずに。


ちょっと投稿の仕方であやふやになってしまいました…。設定も次回から付け足していきます。

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