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ぼくのこうはいについて

下僕22号(犬)視点です。再びシリアス風味。ちょっと説教くさくなってしまいました…

「ワンワン」

ぼくがほえるとこうはいのげぼく23号がこまったようなかおをしていた。

「もうすぐ勇者の塔に着くからな。そしたらお前にうまいもの食わせてやるから」

「もう、下僕さんは甘やかしすぎです」

あたらしく入ったげぼく23号はさもぼくの飼い主といったくちょうでなでめ、それに対してきびしくつっこむ魔族の養女のイーリスさまといった構図も気がつけばみなれたものになっていた。


そうぼくたちは今魔王さまの弟のセシルさまをさがしに旅に出ているのだ。ぼくのすこしせんぱいである使い魔さんが彼らをふたりにしておくのは心配だからというりゆうで、ぼくにとてもだいじなお仕事をまかせてくれた。


それは旅のさいちゅうふたりがこまらないようにみまもること。イーリスさまはしごとねっしんだけど、ときどきがんばりすぎてかなしいきもちになってしまう。どうしてだろう。使い魔さんによるとそれはイーリスさまがさびしいひとだからだそうだ。

さびしいとなんでがんばるんだろう。ぼくがイーリスさまだったらそのへんでねころがってごろごろしたあと、いっぱいほえてほめてくれるのを待つんだけどな。人にはじじょうというものがあるらしい。犬のぼくにはわからないんだけど人とはむずかしい生き物なんだとおしえてもらった。イーリスさまが特にむずかしいのもあるんだけど、とも付け足された。

あたらしいこうはいはそのことを知らない。でも彼も彼でとてもきむずかしいかおをしていることがある。くわしいことは知らないけど、こうはいも前にいたせかいでかなしいことがいっぱいあったんだって。普段はでりかしーのないことばかりいってるし、根に持つわりにけっこういいかげんなやつだから全然いめーじにあわないけど。使い魔さん曰くそれはじこぼうえいなんだって。人っていろいろ大変なんだといってた。みんなにがてなこともあるし、よわいところもある。だからぼくが二人をふぉろーをしないといけないのだ。

「えらいわねー下僕22号」

使い魔さんのおはなしをいっしょうけんめい聞いていたらあたまをなでられた。

どうやらぼくを、げぼくとしてゆうのうだとみとめてくれたらしい。うれしいのでぼくはえっへんと胸をそらし、使い魔さんはそんなぼくをいっぱいほめてくれた。


「おーい、急に走り出すなって」

「ワンワン」

おもいだしたらいちもくさんに丘の上まで走りたくなってしまった。ぼくは犬だから足がはやいし人を待つのがにがてだ。だから人を困らせてしまうことがおおい。

「っ待ってください!」

うしろからイーリスさまの声がする。ごめんなさい。やっぱり困らせてしまった。

「クーン」

耳をさげてあやまっているとこうはいがよしよしとあたまをなでてくれる。

「急ぎすぎだって。あんまりしょんぼりするな」

ここで待っていればいいとおしえてくれた。そうか。ぼくは急ぎすぎたのか。すこしはんせいした。

「結構歩いたことだし、イーリスが来るまで休憩するか」

わがこうはいながらとてもいいことを言う。

「空が綺麗だな」

丘の上で二人して寝転がり空を見上げる。今日は空気がすんでいていい昼寝日和だった。

「このまま寝て仕事もサボりたいなー」

ぼくのこうはいはやっぱりとてもかしこい。ぼくとおなじことをかんがえる。

「まあそれは無理か」

こうはいはため息まじりにつぶやく。うーんむりなのか。こうはいのくせにあきらめのはやいやつだ。ぼくだったらもっとがんばるのに。

「はあ。俺も急に下僕になんてなるから慣れないことばかりだし。疲れたなー。今日はいい天気だし少しくらい休んでも罰は当たらないだろ」

こうはいはそのまま目を閉じた。どうやら寝るつもりらしい。僕は彼をすこし見直した。晴れた日の昼寝をするのは下僕として大事なことなのだ。うん。わがこうはいながらあっぱれ。

そよ風がなびき近くの草木が揺れ、葉っぱがいっぱい飛んでくる。やっぱり休憩はやめた。僕は追いかけっこを再開した。

「ワンワン」

僕は犬だからひとつのところにとどまるのがにがてなのだ。だから休もうとしてもすぐにあきてしまう。だってほかにおもしろそうなことがあるのにがまんなんてできない。

「ワン」

一枚の葉っぱが鼻先に落ちてくる。

「くしゅん」

うーん。鼻がむずがゆい。やっぱりがまんしたほうがよかったかも。僕はその場でうずくまり鼻を押さえた。

「くしゅんくしゅん」

くしゃみはくるしい。あそびたいのにうごけなくなるし、そして何よりむずがゆい。

「もう、駄目ですよ下僕22号」

かおをあげるとイーリスさまがあたまをなでてくれた。言い方はちょっときびしいけどイーリスさまはやっぱりやさしい。すぐに薬箱から僕専用のおくすりを取り出してくれた。

そのまま二人で丘の上まで一緒に歩く。丘の上ではこうはいがいびきをかいてぐっすりと寝ていた。

「早く起きてください。勇者ハロルドの塔までこのままだと間に合いませんよ」

「うーんあとちょっと」

「もう早くしてください」

イーリスさまが怒ってこうはいが適当に言い返す。二人は仲がいいんだなってぼくはすこしだけうらやましくなった。ぼくも人間になっておしゃべりがしたい。

「あとちょっ……」

「いい加減にしてください!」

ぽかっと一発こうはいの頭にくりーんひっと。ちょっと痛そう。うーんやっぱり人間になるのはよそう。

「私は先に行きます」

イーリスさまは怒ってしまったらしくぷりぷりしながら先に歩き出してしまった。でもどうしてかそうやって怒ってるほうが普通の女の子みたいで可愛い。

「ああ、怒らせちゃったか」

こうはいは頭をかきながらイーリスさまの後を追う。僕も一緒にワン、とほえてついていった。

「待ってくれよ、イーリスー」

「私は知りませんっ!」

三人で追いかけっこ。イーリスさまとこうはいと僕とで。こういうのをしあわせだと感じるのは僕だけかな。

さいきんうれしいことがつづいている。あたらしいこうはいが入ってからお城のみんながうれしそう。だからぼくもとてもうれしい。イーリスさまはあたらしいげぼくのことが気に入ってるみたいだし、魔王さまもイーリスさまにおともだちができてやっぱりうれしそう。

みんなで笑えるようになってお城の中が明るくなって。魔王さまの弟のセシルさまはいないけど、それだってみんなでがんばればどうにかなるんじゃないかな。

人ってむずかしいけどたのしいことだっていっぱいある。ときどき犬の僕はそう思います。本当はちょっとうらやましくなったり。でも僕は犬でまんぞくです。

犬だから二人をみまもることもできます。


いっぱいお城のみんなのことを書いたけどそのことはないしょにしてください。

今日も僕はお仕事いっしょうけんめいがんばります。

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