僕の心は
敵を退けつつ、カリオスとプリュイようやく洞窟の中に入ることができた。
日の入らない、真っ暗な洞窟はひんやりとした空気が漂っている。が、どこか煙の匂いがあり、奥の暗がりの中には焚火の後が見える。残党たちはここを拠点に動いたいたことは間違いない。
なら、ケトニスを助けることは、同時に残党を追い出すことにもつながる。
「……残党狩りだ」
「……」
そう静かに決意を口にしたプリュイの横で、カリオスは何も言えず、とりあえず短剣を構える。
さっきの森での喧騒が嘘のように、洞窟の中は静かだ。
――――――静かすぎる。
どこかに待ち伏せしているのは間違いないだろう。
それを理解しつつも、カリオスの頭の片隅では、未だあの考えが仄かに渦巻いている。
……狩るか、退けるか。
……殺すか、生かすか。
少し考えてから、彼は首を振って思考を切り替える。迷いを孕んだままではやられる……いや、あの程度のレベルなら十二分に勝算はあるが、戦闘は何が起こるか分からない。
気を引き締め、戦闘の思考を再開する。
森で襲い掛かってきた彼らは確かにカリオスたちを殺す気で攻撃してきていた。
しかし、変な話だが、それほど必死さを感じられなかった。それは相手がカリオスだったからだろうか。
それとも……他に狙いがあるからだろうか。
警戒しながら二人は洞窟の奥へと脚を進める。
と、
「――――」
足音があった。
明らかにこちらに踏み込む重い足音が。
後方から。
「「ッ!!」」
それにカリオスもプリュイも気づき、振り返る。
カリオスは短剣を構え、
「誘いか!」
プリュイはそう叫び、振り返り様に矢を放った。
しかしそれは威嚇射撃に過ぎない。
矢は入口の方に跳んでいったが、カンッと高い音が聞こえた。見ると厚い鎧を着た兵士が数人、入口に立っている。プリュイの矢はあの鎧に弾かれたのだ。
プリュイは顔をしかめる。
挟撃だ。カリオスは理解した。
完全に誘い込まれてしまった。連中は初めからこの洞窟に僕たちを追い込むつもりだったんだ。
(もっと用心していれば……)
そんな後悔が脳裏を過ったが、しかしそのまま公開し続けるような時間はなかった。
入口の兵たちが、今度は矢を構えてきた。当然、カリオスらの方に向けて。
「ッ!! プリュイ!」
カリオスはプリュイの手を掴み、洞窟の奥に引っ張る。
そんな二人の前を、兵たちの矢が紙一重で通り過ぎていく。
洞窟の奥に向かいつつ、カリオスは思っていた。
(これもきっと誘いだ。僕たちは彼らの思うように動かされてしまってる)
そう分かっていても今は奥に進むしかなかった。飛んでくる矢を打ち落とすこともできただろうが、しかしそれも一本か二本くらいだ。
この狭い洞窟内で、あの入口を正面突破するのは難しい。
しかし……でも……それじゃあここから出られない。
「……いつまで引っ張てるんだよ!」
兵士たちが見えなくなったところで、プリュイは苛立ち気にカリオスの手を振り払った。
「あ……ごめん」
「……」
そうカリオスが謝ると、プリュイは呆れた顔になり弓の具合と矢の本数を数えつつ、戦況を分析する。
「これで敵の思うつぼになった。連中は洞窟の奥に僕たちを誘い込みたいらしい」
「うん……」
「……」
が、そうして分析と道具のチェックが終わると、カリオスに背を向けつつも、
「……まあ、さっきのは助かった」
「え……」
「だがお前が裏切者だということに変わりはない」
そう最後は冷たく言って「行くぞ」と先行する。
カリオスは自分でも変だと思う。こんな敵地のど真ん中で。
しかしカリオスはそれでも、嬉しかった。
初めてだ。
たった一言だったが、それでもプリュイが感謝してくれた。許したわけじゃないかもしれないが、それでもやっぱり嬉しかった。
「うん」
そしてカリオスも、プリュイに付いて洞窟を進む。
入口からかなり奥まで進んできた。そのせいで辺りは完全に暗闇に包まれている。
一零れの月明かりすらない、新月のときの森のようだ。
森に慣れているカリオスですら、目を凝らしてようやく洞窟の輪郭が分かる程度だ。
しかし、不可解だ。
(人の気配がない……?)
洞窟が隠れるところがない一本道だということもあるが、しかしそれでも奥から敵が迫ってくる気配すらない。
洞窟の奥と入口からの挟撃かと思ったが、そうじゃない雰囲気が漂い始めている。
いや、今思えば入口の弓を持った兵士も違和感があった。
彼らは厚い鎧をまとっていた。あれは本来前衛に立つ重装備の兵士が付ける鎧のはずだ。
つまり接近戦用の鎧。
本来、弓兵にそんな鎧を着せる意味はない。後方からの攻撃になるため、そもそもそれほど強力な攻撃を受ける心配が少ないからだ。あくまでも前衛に比べれば、だが。
だとしてもあの装備は弓兵にしては過剰だ。
ということはどういうことか。
(……彼らは弓兵じゃない)
例えば前衛だった兵士が何らかの負傷をして戦えなくなり、やむなく弓を使うことにした、とか。
カリオスの攻撃による足の負傷など。
入口から追ってこないのも、足を負傷しているからと考えると自然だ。
だとしても……
(なら、奥から人の気配がしないのはどうして?)
微かに血の臭いはある。しかし人の気配はない。
ならこの血の臭いは死体か? いや、だったらなぜ僕たちをここに誘導したんだ?
挟撃じゃないのか?
何かを見落としている。
何かを勘違いしている。
しかしその何かが分からないし、確証がない。
そんな漠然とした不安がカリオスの胸中に充満したとき、
「―――――待て」
プリュイが立ち止まった。
そこは曲がり角になっているところ。
そしてカリオスも理解した。思考に集中していたため、気が付かなかった。
人の気配だ。耳を済ませば呼吸の音も聞こえる。
この曲がり角を曲がったところから、人の気配がする。
―――どうする?
その意図を込めて彼はプリュイに視線を送る。
それにプリュイは少しだけ逡巡した後、指で『行くぞ』と合図を出す。
そして、
二人は曲がり角から躍り出た。
そこは洞窟の最新部の、少しだけ開けた場所。
その中心付近に、腰掛けられる程度の突起がある。
そこに、
「ようやくお出ましか、魔族ども」
一人の男が腰かけていた。
プリュイは警戒して矢を構える。引き絞られた矢の先端には、確かな殺意が宿っている。
カリオスも同じように警戒してナイフを構える。が、殺意、敵意の前に違和感を覚えた。
目の前の男は武装をしていない。鎧を来て、腰に短剣が在るのがみえるが、しかし剣や槍などの武器が見当たらない。
「ケトニスを何処にやった?」
「ケトニス?」
プリュイの問いに男は首を傾げる。それに彼は苛立ちを隠せず、声を荒げる。
「お前らが連れ去った魔族の少女だ! どこにやったんだ、答えろ!!」
矢の先端が男の蟀谷に向けられる。今すぐにでも射出されそうだ。
しかしそれでも男は動じず、「ああ」と呑気に答える。
「あの少女なら解放した。心配するな」
「解放、した?」
カリオスは思わず問い返す。どういうことだ? 彼らは何が目的なんだ?
訳が分からない。
「ふざけるな! 信じられるかそんなこと!」
プリュイにそう言われ、男は肩を竦めて笑う。
「なら俺が何を言ったところで意味ねえじゃねえか」
そうしてため息を吐き、そして男はカリオスを見る。
目が合ったカリオスは、その男の目の光を見た。
ギラリと光る、危ない光。しかし恐ろしく冷たく、静かな光。
絶望したものが持つ、希望とは真逆の光。
「俺はお前に会いたかったんだ」
「え……」
「あの女の子と仲良さそうにしてたのが見えたからな、だから攫ったんだ」
その言葉に嘘は感じられない。
男はそうして自分の鎧の脛当てを外し、膝を露出させる。
そこには、深い傷があった。
そしてその傷を見て、カリオスは理解した。
「それ……僕が付けた……」
「そう。俺はお前にやられた。ま、顔は鉄仮面をしてからな、覚えてないだろうが」
カリオスは膝やアキレス腱を攻撃して無力化していった。
男はその一人だ。
「俺はお前と話したかった」
男はカリオスを見て言う。
「お前は魔族だろ?」
そして問う。
「……どうして、俺を殺さなかったんだ?」
「……」
それは魔族からも訊かれた。
まさか人間からも訊かれると思っていなかったカリオスは面喰う。
「どうしてって……」
「……殺す価値すらない、ってか?」
男は腰掛けた状態から動いていない。しかしその言葉だけでにじり寄ってきているような錯覚を覚える。
「それとも何かの儀式に使うつもりだったのか?」
「……」
「それともあの化け物みたいな動物の餌にするつもりだったのか?」
「……」
「……」
「……何か答えろよ」
そう急かしてきたのは、プリュイだった。
彼の顔を見る。弓と矢に手がかかっているが、眼はカリオスの方に向けられていた。
訝る、様子を伺う、疑いを孕んだ視線。
返答次第では……、とその目が言っている。
どうする。
「……僕は」
どう答えればいい。
何を答えてもどちらかが何かしらのアクションを起こすだろう。
本心を言えば、ただ殺したくなかった。それだけだ。
しかしそれを言えばプリュイから、そして他の魔族から敵視されてしまう。
かといって適当な理由を言ってもすぐにバレてしまう。
何にせよ、僕は非常に危険な状態になってしまう。
―――いや、もとからどっちつかずの危険地帯だったんだ。
人間の味方をしていた魔族が、臨時で魔族の味方をしていた。まるで目的のないスパイだ。
ただの邪魔者でしかない。
だからこんな状況になってしまった。自分で作った墓穴に見事にはまってしまったのだ。
仕方ないことだ。
「…………僕は」
―――――けれど、と。
ふと、思う。
脳裏を、あのいつも得意げで、明るい笑顔が過った。
彼女なら、なんていうだろう。
天真爛漫なあの王女様なら、なんていうだろう。
アニスなら……
「……」
背筋に悪寒は走りっぱなしだ。
それでも、
カリオスは、胸を張った。
そして、
「僕は、誰も殺したくなかった。それだけです」
瞬間、プリュイの目が見開かれた。
同時に怨みの業火が彼の瞳の奥で燃える。
「カリオスッ!!」
矢がカリオスに向けられる。
「自分が何を言ってるのか分かってるのか!」
そう激昂するプリュイとは真逆に、男は黙って聞いていた。
カリオスはそんな二人を交互に見て、
「僕は誰も殺さないし、誰にも死んでほしくない」
そして、胸に手を当てて、誓うように言う。
「僕は、平和を目指して戦っています! 魔族だけの平和でも、人間だけの平和でもない。皆が平等で幸せに暮らしている世界を目指して戦っています」
「だから、俺たちを殺さなかった、か……その意味を分かってお前は喋っているのか?」
今度は男が静かな口調で問う。
「お前は今、そこの魔族と敵対し、かつ俺たち人間とも敵対した存在になろうとしているんだぞ?」
「違います」
その言葉に、カリオスはしっかりと首を振る。
「僕は、プリュイやケトニスたちの味方であり、魔族の味方であり、そして人間の味方です」
「……」
「……」
男も、プリュイもカリオスの言葉を黙って聞いていた。
しかし、
「……――――裏切者ッ!!」
そうプリュイが矢をカリオスに向けた。
そして同時に男が、
「魔族どもが」
手を挙げた。
誰かに、何かを指示するように。
刹那、
洞窟入口の方から巨大な音が響いた。
カリオスも、矢を放つ寸前だったプリュイも放つのを中断してその音の方を見る。音はすぐには止まず、徐々に奥のこの部屋に向かってきている。
「何をした!?」
カリオスが問うと、男は笑いながら、
「魔族の部隊は、質は良いが数が少ないと聞いている。そしてお前たちはここに来るまでに俺の部下を退けてきた。それだけ人間の脅威になると判断した」
故に、と。
「ここで生き埋めになってもらう。火薬は多少余っていたのでな」
「「ッッ!!」」
はめられた。
ようやくそのことに気が付いた二人は、男を放置してすぐに入口に向かおうとする。
が、
目の前に崩れた土砂が迫っていた。
「!!」
間に合わない。
そうカリオスが思った瞬間、
「こっちだ!」
プリュイが叫んだ。カリオスは急いで彼のもとに向かった。
そしてカリオスが近くにくると、彼は魔法を発動させる。
「『盾』!」
それは最も初歩的な防御の魔法。
魔力で生成された硬質な膜が、カリオスとプリュイを中心に半球状に展開する。そうして落ちてくる土や岩を防いでいく。
同時に、男の姿が土砂で見えなくなった。
さっきまで余裕があった広間のスペースは、今やこの『盾』の効果範囲のみの狭い空間となってしまった。
しかし、
「ぐっ……重い」
その『盾』すらも危い。
「大丈夫プリュイ?」
「ふざけるなよ裏切者。大丈夫そうに見えるか?」
そう彼は冷たく言い放つ。
しかしこの魔法の中から追い出すようなことはしなかった。
どうして……
カリオスは思う。
(僕は裏切者なのに、裏切者と言ったのに、どうして……)
どうして守ってくれているのか。
それが不思議でならなかった。
そんな彼の顔が目に入ったプリュイは、舌打ちをして、
「……彼女の為だ」
「彼女……?」
「ケトニスだよ!」
そう叫んだプリュイの顔は、どことなく赤い。
しかしそれが魔法に力を入れているが故なのか、それとも他の要因故なのか、カリオスには分からなかった。
戸惑うカリオスに構わず、プリュイは続ける。
「お前が死ぬとケトニスが悲しむ。だから助けたんだ」
そして、
「僕はケトニスに悲しんでほしくない。ホントはこんな戦争に参加してほしくなかったんだ」
彼は心の内を零す。
それと同時に、『盾』に亀裂が走り始める。小さな亀裂が、ゆっくりと、徐々に広がっていく。
「ぷ、プリュイ、魔法が……」
「黙れよ。今は僕が話している」
心配するカリオスの声を、プリュイは遮った。
そして一拍の後、再び彼の話に戻る。
「だから僕は、この戦争に参加しようと思ったんだ。僕が全線で頑張れば、ケトニスの負担を少しでも軽くできるんじゃないかって……適性検査に受かったから、そう思って、信じて戦った。敵を倒した…………殺した」
殺したんだ、と。
彼は無意識に歯を食いしばっていた。
そしてカリオスを見る。
「けどお前はケトニスに選ばれてここに立ったんだ! 適性検査なんてどうでもいい判断じゃないくて、お前はケトニスに選ばれたんだ! あの戦場で、ケトニスはワザワザ戦闘を中断して、幻鷲を使ってまでお前を連れてきたんだ!! この意味が、お前は分かってるのか!!」
プリュイはカリオスの胸ぐらを掴む。
「平和を謳うのは良い。正直お前が魔族の敵になろうが人間の味方になろうが何になろうがどうでもいい」
けどな、と。
「ケトニスを裏切るのだけは絶対に許さない」
「ッ」
カリオスは、何も言い返すことができなかった。
何かをしゃべらなくちゃ、と思っても、言葉が出て来なかった。
ただ無力に、金魚のように口を開閉することしかできなかった。
結局カリオスは、どうあれケトニスを裏切るような宣言をしてしまったのだから。
アニスなら、と思って発言していたが、カリオスはアニスではない。
当然だ。人間皆違う。
否、カリオスはそもそも人間ではない。
魔族なのだから。
「……僕は」
「……もうしゃべるな」
カリオスが口を開こうとした時、プリュイはそう制止する。その時、既に亀裂は『盾』全体に広がっており、今にも壊れそうになっていた。
土砂はさすがに止まっていたが、この亀裂は上に乗っかっている土の重みのせいだ。
完全に埋まってしまったようだ。
あの人間の男は既に土砂に飲まれてぐしゃぐしゃだろう。しかしこの『盾』がなくなれば、カリオス達も同じ運命をたどることになる。
「一か八か、か」
そうプリュイは冷静な口調で呟き、カリオスの腕を掴んだ。
そして、
「なあ、魔族になんで角があるか知ってるか?」
「角?」
「進化の過程で必要のないものは退化していく。人間の尻尾や水掻きがそうだったように。魔族だって角を日常生活で使わない。むしろ引っかかる時だってあるくらいだ。なら本来退化しているはず。しかしなぜ残っているのか……」
そうプリュイは語った後、
自分の角の片方に手をかけ、
「ッ!」
バキッ―――――、と。
折った。
その瞬間だった。
彼の体を中心に、魔力が渦を巻いた。
魔力の奔流。
プリュイの体から、全身から魔力が溢れ出る。通常ではあり得ない量だ。普段の倍以上、いや、十倍以上だろうか。
その溢れ出た魔力だけで『盾』は自動的に修復され、かつ強化されて、土砂を押し広げて範囲を広げる。
「人間も魔族も、自分の体内だけで魔力を生産するんじゃない。魔法を使うときは少なからず自然界から取り入れて、それを体内の魔力と混ぜて発動している。魔族は人よりも自然界から魔力を取り入れやすい体質になっている。故に角は体への負荷を和らげるために、魔力を溜めるための貯蔵庫になっている。覚えておけ」
なんて、彼は余裕気な表情で言うが。
「プリュイ、体が!!」
突如溢れた魔力に耐えられない体は悲鳴を上げて、所々裂け始めていた。
両腕両足だけでなく、頭からも出血し始めている。
しかし、
「問題ない」
彼はそう言って魔法を操り始める。
そうして『盾』の魔法の形状を変化させ、半球状だったものを円柱状にして、頭上に積もっている土砂を押し退けて地上まで伸ばしていく。
そして十メートル弱伸ばしたところでようやく空の青が見えた。
「空だ!」
思わずカリオスはそう叫び、プリュイも安堵して頬を綻ばせた。
しかし問題はまだ解決したわけではない。
どうやってその高さを上るか。
(『盾』の壁を蹴って昇る方法は……脚を引っかけられるような場所がない。なら一度魔法を解いて、この円柱状にくり抜かれた土の壁を上っていくのは……ダメだ。柔らかい土が多い。魔法を解けばすぐに崩れてしまう)
どうすれば……、そうカリオスが悩んでいたときだった。
「『巨人の溜息』」
殴るような突風が吹いたのは。
唱えたのはプリュイ。
「ッッッ!!?」
突風によりカリオスの体は宙に浮き、円柱の中を上って地上に射出された。
まるで大砲の球のように。
そして下を見ると、プリュイの姿が一気に小さくなっていく。遠ざかっていった。
その間に、カリオスは確かに見て、聞いた。
プリュイの表情と声を。
「ケトニスを、頼んだ。僕の敗けだ」
同じ魔族であり、裏切り者とカリオスを嫌悪していたはずの彼の、
最後の表情は、
諦めたような、降参したような、微笑みだった。
そしてその笑みのまま、プリュイは魔力を使い果たし、土の中に飲まれていった。