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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第七章 『思惑と思い』
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各者の思惑

「さて、と」

 ドルン城。王の執務室の席にレーエンは腰かけていた。ドルン陥落直後の机は、上には何も残っていなかったが、中には様々な資料がギッシリ詰まっていた。

「三日かぁ……さすがに目が痛いな」

 そこに腰掛けてからずっと、彼はこの部屋にある資料等々に目を通していたのだ。レーエンは椅子にどっぷりと体重を預けて「本当に良い椅子を使っている」なんて呟きながら眉間を揉む。

 そこに「入るぜ」と入口の扉が開き、トレラントが入ってくる。

 彼にレーエンは一息吐いて座ったまま体を向ける。

「皆の様子は?」

「傷の手当は大方済んでいる。が、移動をするならもう一日欲しいってところだ。明日には魔獣の補充も済むだろうしな」

「武器はここので間に合ったか?」

「そっちはバッチリだぜ! 『魔銃マギードロップ』はこの部屋にあった一つだけだ」

 それにレーエンは引き出しを開けてその一丁を机の上に出す。回転式拳銃(リボルバー)だ。これは最初から机の中に入っており、グリップにはこの国の紋章とヴォールの紋章が掘られている。二国間の友好を示す証だったのだろうか。

 その紋章を見てトレラントは鼻で笑い、

「有効に使わせてもらおうぜ」

 その皮肉にレーエンも「そうだな」とクスリと笑う。

「これは俺がもらうが、いいか?」

 そう訊く彼に異論はなく、トレラントは「ああ」と首を縦に振る。

 レーエンはその『魔銃マギードロップ』を自分の腰に差す。と、一拍して、思い立ったように椅子から立ち上がり、廊下に出て行く。廊下からは中庭と他の廊下が見える。

 それを見て、それらを見てレーエンは表情を硬くし、少し拳に力が入る。

「……ここからだ」

 その背中にトレラントも、

「ああ。ここからが始まり、だな」

 強国の一つを倒した。ヴォールの魔法兵たちにも遅れはとらなかった。

 だがそれで終わりではない。満足などしている暇はないのだ。

 それに何より、

 『先行魔法騎士団』

 彼らには一度も勝っていないのだ。完敗だった。

 それにブリッツは深手を負ってしまった。

「ッ―――――」

 そのことが、レーエンにとってはそのことが何よりも腹立たしかった。

 仲間を、それも『十字に仇なす怪物たちムタツィオ・ウン・ティーア』結成の頃から連れ添った仲間だ。

 先導する者に強い感情は毒だ。

 そうは分かっていても抑え切るのが難しいほどに彼は怒っていた。

「レーエン」

「――――!」

 名前を呼ばれて少しハッとする。

 そして自分のさっきまでの状態を反省すると同時に小さく深呼吸して気持ちを整え、

「悪い。どうした?」

「今後のプランはどうする、っていうのは決まってるのか?」

 そう訊くトレラントにレーエンは「ああ」と首を縦に振り、次いでニヤリと悪戯気な笑みを浮かべると、再び執務室に戻り、引き出しからある紙を取り出し、彼に見せる。

 それは、

「『連合各国への協定文』だ」



      ・・・



 ドルンは魔族の手に堕ちた。

 あの戦いで拮抗していると聞いたときから最悪の場合は考えていたが、しかしそれでも少々驚いた。正直侮っていた。

 しかし堕としたといってもそれで彼らは疲弊しているはず。傷もまだ癒えていないだろう今、この総攻撃に耐えられるわけがない。そしてもし下手に撤退しようものなら今度は国家連合軍かれらに地下の世界を発見されかねない。

 それだけはなんとしても避けなければいけない。

「さて……」

 どうするか、とリューゲは執務室の椅子に腰かけてため息を吐く。

 ひずみとゆがみばかりの計画。

 ここが修羅場であり正念場だ。

(とにかく今は……)

思考を巡らせているところで、部屋のドアがノックされる。そして使いの者が入ってきて、

「リューゲ・ヴォールさま。そろそろ会議のお時間です」

「うむ」

 彼は席を立つと、重い足取りで部屋を出て、あの『会議室』へ向かう。

 赤い絨毯の末端。扉を開けて彼は魔方陣を起動ずる。

「『皆話の魔法ディスカスター』起動」

 周りの魔法使いたちが詠唱を始め、部屋の中央に光の球が出来上がる。

 そして各国の国王たちが光の板の上に映し出される。


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