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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第二章 いたずら心に勝るものなし!
8/122

村にて


 ヴォール領地のとある小さな村。



 昼間、外では子供たちが駆けまわっている。

 暖かな日常。大人たちはその微笑ましい姿を見守る。しかしなぜか、その表情はどこかぎこちない。

 と、一人がやってきて大人たちに耳打ちをする。

 それにより場の空気が一変する。


 子供の母親たちは自分の子供を連れて家の中に入っていく。


 そして一番奥にある村長の家から居る全員で肉や野菜などを運びだし、入り口のところにある大きな籠に入れる。


 しばらくして入り口のところに三人の兵士が現れる。その纏っている鎧にはヴォール王国の紋章が刻まれている。

 その男たちを見るなり、村人たちの表情が曇る。


 兵士たちは入り口の籠を見る。そして鼻で笑い、


「これだけかよ」


 蹴り飛ばす。


 村の民が育てた作物が、土の上にぶちまけられる。その行為に村人全員が硬直する。

 その蹴とばした兵士はにやりと笑みを浮かべる。


「もっとあるだろ!」

「こ、これ以上は、私たちの食べる分がなくなってしまいます!」


 村長が震える声で訴える。それに対して兵士の中の一人、作物を蹴り飛ばした兵士は、村長のところへ歩いていき、


「……村長」


 薄笑いが……消える。


「ふざけるなよ。俺たちが持って来いってんだ。黙って持って来いよ」

「え……う……」


 その獣のような威圧に気圧(けお)され、村長は何も言えなくなってしまう。

 その兵士は再び薄ら笑いを浮かべ、村長を軽く突き飛ばすと、


「もっと身を削れ! お前たちはヴォールの国民という自覚がないのか!」


 それに横にいた二人が「さっさと持ってこい!」「でないとお前らを国家に対する反逆とみなすぞ!」と騒ぎだす。



 戦争のための物資の提供。



 村人たちは言われたとおりに作物を差し出し、落ちたものを拾い上げる。

 惨め。

 窓からその光景を見ていた少女は、それ以外に思い付く言葉がなかった。

 どうしてあんな奴らに自分たちの食べ物を渡さなくてはならないのだろう。


(どうして大切に育てた作物を……)


 少女は小さな拳を握りしめることしかできなかった。


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