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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第五章 『魔剣の鍛冶屋』
48/122

ヴーレンにて

文章力と物語を作るセンスが欲しい……(泣)

精進します!

「うう~……」

「大丈夫アアニス?」

「うう~じぬぅ~……」

「なら死んだら教えてくれ。俺は今のうちに睡眠とっておきたい」

 そう言ってレオンは横になって目を瞑る。

 彼らは今、馬車の中に居た。

 幉を握っているヌルデはうめき声を聞いて振り返ると、

「右の横腹を下にして寝るといいらしいよ」

「え。どうしてです?」

 それにカリオスが代わりに反応する。

「胃袋の入り口が左側に、右側が下りてく方に、つまり腸の方に繋がってるらしいよ」

「だってさアニス」

「う~」

 そう呻いて彼女は右を下にして寝転がる。それを見てヌルデは再び前に向き直る。

 カリオスはその背中をさすってあげる。

 あ、とそこでヌルデは思い出したように声を上げ、

「背中を擦る行為は『ブツ』を吐かせやすくする行為らしいから気を付けなよ」

「…………うっぷ!!」

「アニス! アニスうううううううううううううううううううううううッ!!」

 何て事をやりながら今日で三日。

 その間に当然『変化の魔法(トランス)』はバレるわけで、あとで厄介になる前に彼女には説明しておいた。

 彼女は「へぇ~」と耳くそを飛ばし、

「何だ。インテレッセ・ベルディーテの子孫とかそんなのかと思ったよ。残念だ」

 そして自分たちのことを黙ってもらう代わりに、ヴォールの城の本を自由に読んでもいいということで交渉成立した。

「もう少しで着くはずだから。アニス頑張って」

「目が回る~。視界が霞む~」

 完全に末期状態だ。

 もはや手遅れかもしれない。もう見ていられなくなり、カリオスは思わず目を背けてしまう。

 その時、

「お、見えたよ。あそこがケーラの町『ヴーレン』だ」

 ヌルデの声でカリオスはその方向を見る。それにアニスも這い上がる形で顔を出す。

 その町には、後光が射していた。

「と、『変化の魔法(トランス)』……」

 アニスは最後の力を振り絞って全員に『変化の魔法(トランス)』をかける。

 町に入ると、とりあえず彼女をおろし、日陰に寝かせる。

「うう~」

「まだ酔ってるのか」

 町に入ってから起床したレオンは、間もないせいか少し眠そうに欠伸をする。

 ヌルデは馬を預けると、彼女の目的に買い出しに向かう。

 そして彼らは日が暮れるまで買い出しに付き合わされ、

「後はっと」

「お、重い……」

「クソあの女。自分が持たねえからってバンバン買いやがって……」

 カリオスとレオンは腕いっぱいに大量の荷物を抱えていた。中身は食べ物から飲み物から何から何から。

 だが、一番多いのは本だ。そしてそれが一番重い。

「文句言わない! 紅茶を家にあるだけ全部飲んだあなたたちが悪いわよ」

「だって……なあ」

「セルフって言われたし……ねえ」

「グダグダ言わない。さっさと歩く!」

「お前も持てよ! 持ってるの本の入った袋だけじゃねえか!」

 そう叱っていたアニスの手には一つの袋がある。その中には分厚い本が二冊ほど入っている。

 袋を指摘され、彼女は明後日の方向を向き、口笛を吹く。

 かすれた口笛を。

「吹けてないよ」

「カリオス。ああいうのは黙って見守ってやるものだぞ」

「そこ! 聞こえてるわよ!」

「どうでもいいけど本だけは落とさないでくれよ?」

 というわけで宿まで来る。今日はもう暗いので宿に泊まることにする。

 部屋は二人一部屋でとり、男女に分けた。こう分けた瞬間に違和を感じたのは、その旅の形に慣れてしまっていたからだろう。

 男子部屋。

 二人はそれぞれのベッドを陣取った後、今後の予定を決める。

「さて。どうするかだな」

「また図書館かな」

「あの女に知り合いとか居ねえのか?」

「僕に言われても……」

「「ん~」」

 そこにドアをノックしてアニスとヌルデが入って来る。

 彼女はベッドの上であぐらをかいて腕を組んで唸っている二人を見て、

「何を悩んでるの?」

「明日の予定だ。そういえばヌルデはこの町に知り合いとか居ねえのかよ?」

 レオンのその言葉を聞き、女二人は「「ふふ~ん」」と得意げに胸を張る。レオンからしてみれば一人でもウザかったのに、二人になると単純計算二倍になり、余計に腹が立つ。

「実はヌルデが『魔剣の鍛冶屋』について詳しい人に~……心当たりがあるようなのですよ!」

 ヌルデはアニスに手を持たれ、その場で社交ダンスのようにくるりと回り、彼女の腕の中に倒れ、

「「ジャーンッ!!」」

「「……」」

 沈黙が場を満たした。

 この状態を、霊が通ったというのだろう。

 しばらくしてレオンは短剣を抜き、

「言い残すことは?」

「すいませんでしたッ!!」

 カリオスとアニスは目撃した。流れるようにスムーズな、まったく無駄のないフォームで行われた、まさに芸術品ともいえる見事な……土下座を。

「こ、これは……」

「今まで見てきた中でも五本の指に、いや、最も美しいわ!」

「お前らもいい加減にしろ!」

 頭にゲンコツを振り下ろされ、現実に帰って来る二人。アニスは起き上がったヌルデを見て、

「危うく幻想世界に誘われるところだったわ」

「レオン。まだアニスが正気に戻ってないみたいだよ?」

「いや。あいつはあれで正常なんだ。忘れたか?」

「明日はどんな生物に変えてほしい?」

「何で怒ってんだよ! あまりにも理不尽だろ!」

「アハハ、本当に楽しそうなパーティだね」

「ヌルデさんは明日僕たちと行動してくるってことですか?」

「ん? そういうことになるね」

「帰りはどうするんですか?」

「ん~、ネーベルに入るまででいいから送ってほしいな~」

 と、彼女は期待を込めた瞳でアニスの方を見る。もちろん彼女は、

「もちろんよ! 大船に乗った気でいて!」

「「残念それはタイタニ―――」」



 しばらくおまちください――――――






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