ネーベル王宮にて
第四章スタートです!
「ふむ、なるほどね」
報告を受けた後、自室で王妃『シャオム・ネーベル』は化粧台に座り、考えを巡らせる。
(ツュンデンの町長が殺されたか……彼の担当していた研究施設が破壊したのと同一犯だと考えられるわね。今のところ他の場所に被害はない)
ツュンデンの襲撃事件。そして町長であるローダンの死。
そしてそれより前に、彼が関わっていた研究施設も襲われた。
内密に送られてきたこれらの情報をもとに、シャオムは推理する。
(しかもあそこは城に一番近いところ。だとするなら……これは宣戦布告? 誰への? この研究への、ということなら……)
彼女は口の端を吊りあげる。
「次は私の首かしら?」
魔女のように、否、悪魔のように。
ニタリと、真っ赤な口紅を塗られた口元に、粘性を感じされる笑みが浮かぶ。
しかしシャオムはすぐにその笑みを消し!化粧を済ませて、部屋を出る。
いつもより高価なドレスを着ているのは今日が月に一回の謁見の日だからだ。
これは民の声をよく聞けるようにと王『バンク・ネーベル』が始めたことだ。
廊下には使用人が待機しており、付き添う。
そして移動の途中で彼女そっと囁く。
「ーーーローダンの死体の状態は、顔面を刃物で激しく刺され、原型を留めていなかったようです」
「それ以外は?」
「使用人と客人に重軽傷者が多数。死者はローダン以外には居ません」
「客人というのは?」
「ローダンが図書館で知り合った者たちだそうです。今回の件では彼を守ろうとしていたらしいです」
「犯人の目星は?」
「今のところは何とも……」
(私にではなく、ローダンに恨みをもっているものがいるってこと? それとも彼が監視をしていたから? 研究所とで考えるなら後者でも辻褄が合うけど)
「そもそも『ローダン』というのはどういう人だったの?」
「使用人たちの話では、人当たりも良く、人から恨みを買うようなことするような人ではなかった、と聞いております」
(ということはやはり研究の方か)
「分かったわ」
と、そこで夫、バンクの部屋の前に着く。彼女は聖母のように自然で温かな笑みを作る。
使用人はドアをノックし、
「失礼しますバンク・ネーベル様。シャオム・ネーベル様がお見えになられました」
「おお。入ってきなさい」
「失礼します」
使用人が扉を開ける。シャオムは部屋に入ると、
「おはようございます。あなた。あら『リベルテ』。あなたも一緒だったのね」