インテレッセ・ベルディーテについて
「……どうしたのアニス? 急に頭が良くなったみたいに話し出して……」
「やばいぞ、酒のせいで変なスイッチが入っちまったみたいだ。こんな時間に医者なんてやってねえぞ!」
「はいそこ! さっきまでの空気は?」
まったく、とアニスはため息を吐く。それを見てレオンが、
「俺の気持ちが分かったか?」
と皮肉じみた笑みを向けると、彼女はフンとそっぽを向いてしまう。カリオスは慌てて彼女の機嫌をとる。
しばらくお待ちください―――――
「……で、話を戻すけど、」
アニスはコホンと咳払いする。
「その人に関する情報を集めてほしいの」
「は? 集めてどうするの?」
カリオスは彼女の話に大きな疑問を抱く。
死んだ人の情報を集めて、何になるというのだろう。そこでレオンがフッと鼻で笑う。
「そいつの遺産、的なものが目的だろ。それだけ言われる魔法使いだ。何か恐ろしい力を持った道具を作ってたに違いない」
「なるほど! じゃあその人が大事にしていた人とか当たってみる感じかな?」
「お、冴えてんじゃねえか! その受け取った子孫が宝物を持ってるってのは良くある流れだな! なら明日はその線で探っていこう!」
「二人で盛り上がり過ぎよ!」
「「宝探しは男のロマンだぜ!」」
「息ピッタリ……引くわ~」
と、そこではぁとレオンは一息を吐き、
「で、本当にその流れであってるのか?」
アニスに確認をとる。
彼女は頬を膨らませて、彼を睨む。
「まったく違うわよ!」
と枕に手をバンバンと叩きつけ、
「本人を探すのよ! ほ・ん・に・ん!」
「死体を探すの?」
それにカリオスは冷静に返す。そして、
「動物は大丈夫だけど、人間はごめんだよ?」
顔を少し青くする。それにレオンが反応し、
「お前、村で明らかに殺しにかかってきたよな?」
「あ、あれはみんなを逃がそうと思ってたかつい……ごめん」
「まあいい。特に気にしてないしな」
「ありがとう」
「インテレッセ・ベルディーテは生きてるわ」
もう構わないようだ。
少し寂しげな二人を無視して、彼女は続ける。
「すでに彼女は不老不死を手に入れている、というのがお城の書庫にあったものに載っていたわ」
「それは確かなものなのか?」
「不老不死って言うのは言い過ぎの可能性があるけど、記録では大戦終了までいたとされているわ。魔法が完成したのは大戦よりも昔なのによ?」
「まじかよ……」
「正気度もっていかれそうな話だね……」
二人の背中に寒気が走る。
しばらく部屋に沈黙が下りる。
突拍子もない話にその場が凍り付く。
コホンとアニスは咳払いをすると、
「大戦の後、彼女はヴォールから姿を消したわ。というわけで明日から彼女について調べることにします!」
それで再び空気が動き出し、二人は頷く。