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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第三章 『十字に仇なす怪物たち』前編
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レオンはいい人?

「ぎぼじわるい……」

「何で一気飲みなんてしたんだよ」

「僕は完全に空気だった……」


 宿の部屋のベッドでアニスはぐったりとしている。額には脂汗を浮かべ、顔色も悪い。


「うげ~死ぬぅ〜」

「頼むから吐くなよ」


 そういうとレオンは部屋を出ていこうとする。


「どこに行くの?」


 椅子に座って「存在感かぁ……」と遠い目をしていたカリオスはそれに気付き、尋ねる。

 レオンはそれに振り返り、


「小腹が減ったからなんか買って来るだけだ。お前もなんかいるか?」

「ん~、特に今はないかな」

「そうか。じゃあ行ってくるわ」

 そう言ってレオンは廊下に出る。そして宿を出て町に出た。


 日は傾き、辺りは少し薄暗くなってきていた。


 そんな夕日に背を向け、レオンは町を歩く。


(さて、久しぶりにブラブラするか……)


 せっかく久しぶりに町に来たのだ。

 アニスがあの様子では、酒場でしていた話を聞いてなかっただろうし、話しても無駄だろう。

 彼女が落ち着くまで適当に時間を潰そう。と適当にぶらつくことにする。


(といっても……どこに行こうか)


 目的地もなく足を進める。

 と、さっきの繁華街に行きついた。通りは夕方ということもあって、食材を求めてくる人でいっぱいだった。


 レオンはその通りに入っていく。


 客に合わせるように、通りには食べ物を扱っている店が多く出ている。

 様々な匂いが立ち込めるように漂っている通りをレオンは進む。と、缶詰を売っている店を見つける。


(保存にもいいし、いくつか買っていくか)


 空気に触れることもないし、干し物ばかりでは飽きるだろう、とレオンはいくつか購入する。

 しばらく歩くと、今度はパン屋を見つける。

 香ばしい香りが鼻をつつく。

 レオンは当初の目的通り、小腹を満たすために買おうと店に入る。

 何かないかと店内を見回してみると、ふと大きいパンが目に入った。

 レオンはそれを見て悩む。


(これを買っていけば、全員で分けても十分だな)


 値段を見るとそれほど高くない。むしろ安い。

 レオンはそれを購入し、店を出る。

 そして少し歩いたところで、


「ったく、俺はなにをやっているんだ……」


 壁に手を突き、うなだれる。

 盗賊ともあろうものが奪うのではなく与える方に気を遣ってしまってどうする。

 子分たちに合わせる顔がない……、と肩を落として町を歩く。


(いや、まあ……その子分らもはじめはこんな感じだったか)


 夕方の太陽は早く帰宅したいらしい。地上はあっという間に闇に包まれてしまう。


 レオンは「そろそろ酔いも醒めただろう」と宿に足を進める。

 さっきまで賑わっていた通りは静まり、店もほとんど閉店してしまっている。

 少し肌寒くなってきたこともあり、レオンは急ぎ足になる。


 と、


「……ん?」


 一瞬、何かが視界の端で動いた気がした。

 大きさはさほど大きくない。


 夜の街。


 その意味を、実際に体験したレオンは知っている。おそらく彼と同じ者の類だろう。

 レオンは特に気にすることなく、その場を後にした。



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