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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第三章 『十字に仇なす怪物たち』前編
22/122

町にて

 ヴォール領の最南端に位置する町『ツュンデン』


 ここはヴォール王国と隣接している『ネーベル王国』との架け橋として有名である。


 カリオス一行は森の中でアニスの『変化の魔法(トランス)』を使い、バレないようにそれぞれ姿を変えた。


 カリオスは前の少年の姿に、

 アニスは長身金髪の女性に、

 そしてレオンは、


「そのままでいいんじゃないかしら?」

「話が違うだろ!」


 というわけでレオンは更けたおじさんに変身する。

 一行のタイトルは『旅する家族』だ。


「この町にいる間この姿かよ……」


 門を潜ったレオンはため息を吐く。


「早くこの町から出ようぜ」

「その前に情報ね。それ次第よ」

「ならさっさと済ませよう」


 そう言ってレオンは足を進める。


 一行は繁華街の方に進んでいく。

 さまざまな露店が並び、多くの人で賑わっている。

 露店には肉、野菜、料理が多い。しかし店には武器屋や防具屋、雑貨屋などもある。


「「おお! お店が並んでる!」」

「おいおいやめてくれよ。田舎丸出しじゃないか。こっちが恥ずかしくなる」


 カリオスとアニスは通り過ぎる店々に目を輝かせる。

 そんな二人にレオンはため息を吐く。

 と、若干先輩ぶって振り返ると、


「ああこの魔杖! この掘り方! いい仕事してるわ!」

「ああこのナイフ! この装飾! 刃の仕上がり! 欲しいなぁ」


 アニスは魔杖の店の、

 カリオスは武器屋の店の窓を食い入るように見ていた。


「ほ、欲しい」

「アニス! 所持金は?」

「バッチリよ!」


 近寄ってきたカリオスに、彼女はグッと親指を立てる。


「『バッチリよ』じゃねえよ!」


 その二人の頭にレオンは拳を下ろす。

 鉄槌を食らった二人は頭を押さえて蹲る。

 特にアニスは不服なようで、すぐさまレオンに抗議の視線を向ける。


「何するのよ! 親にも殴られたことないのに!」

「当初の目的を忘れてんじゃねえよ! ほら行くぞ!」

「あちょっと! 引っ張らないでよ!」

「クソッ。お前元のサイズに縮め。無駄にデカくて運び辛い」

「あ、女の子にデカいって言った! セクハラよセクハラ!」

「あ? そういうのはな、あと二十年経ってから言え! ていうか本当に縮め、マジで引っ張りづらい」

「だから引っ張らないで! もう! あ……ならあなたを巨人にすれば楽になるんじゃない?」

「……本気じゃないだろうな?」


 その言葉にアニスはニヤリと笑う。

 こいつは本当にやりかねないから怖い、とレオンは思う。 

 とりあえず引きずることをやめて、手を離す。

 まったくもう、とアニスは立ち上がり、服の埃を払って、


「さ、行きましょ」


 と何事もなかったかのように振る舞う。

 それにふつふつと怒りが湧いてくるが、グッとこらえる。町の中で騒ぎなんて起こしたら大事になりかねない。


「アハハ……ごめん」


 起き上がったカリオスはレオンの様子を見て、謝る。それを見て彼はため息を吐き、


「よくあんなのに付き合えるな」

「アハハ、僕はあんまりいじられないから。レオンはいじると面白いからね」

「早々にこのパーティから立ち去ることを考えよう」


 と、三人は途中で裏路地に入る。


 その瞬間、空気が変わる。


 繁華街の活気溢れる空気とは打って変わって、そこはまるで沈んだように暗く、陰湿な感じ空気が漂っている。


 そんな中をレオンはサクサクと進んでいく。二人もそのあとについていく。

 そしておかしなことに、道を少し戻っているようだ。


「ねえ。戻ってない?」

「そう頼まれてんだ。場所を誤魔化すためにってな」


 と、少しすると、さっきのアニスが覗いていた店の裏に着く。


「……着いたぞ」


 レオンは裏口のドアを開ける。

 中は小屋程度の広さで、木箱が所々に積んである。物置として使われているようだ。


 レオンは中に入ると、「手伝ってくれ」と部屋の右端にある木箱のところで手招きをする。

 二人は言われるがままその木箱のところに行き、持ち上げていくつか移動させる。すると、その下扉が出現し、 それを開けると階段があった。


「ここだ」


 レオンはにやりと笑うと、下りていく。

 階段はそんなに長くなく、すぐに床が見えてくる。そして目の前には一つの扉があった。

 そこでレオンが声を掛けてくる。


「アニス」

「何?」

「『変化の魔法(トランス)』を解いてくれ。ここには顔馴染みもいるからな」

「分かったわ」


 彼女は了承し、レオンにかかっている『変化の魔法(トランス)』を解く。

 彼は深呼吸をすると、ドアを開ける。


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