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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第二章 いたずら心に勝るものなし!
15/122

企て -3

 作業も終盤に差し掛かったころ。アニスは立ち上がって全員の注目を集めた。


「みんな聞いて!」


 そして全員が自分の方を向いていることを確認すると、


「みんなのおかげで準備がとても捗ったわ。大幅な時間短縮になった。ありがとう」


 汚れまみれで胸を張るその姿は、王女様というよりは大工の現場監督のようだ。

 それで、とパンと手を叩き、


「明日の作戦に参加する人数を決めたいの。なるべく少人数で必要最低限の数に収めたいわ」

『ええ~』


 それを聞いた村の子供たちは全員不満そうな顔をする。中からは「何で~」「俺やりたーい!」「私もやりたーい」などと積極的な声が飛んでくる。

 アニスはそれをしばらく聞いていたが、「いや……」と口の端を歪め、


「大切なのは実戦班じゃないわ」


 その言葉に、一瞬場は静かになり、徐々にざわつき始める。

 皆実際に行動する方がいい、という意見を持っているようだ。

 アニスはコホンと咳払いをすると、


「残りは大人の相手をして欲しいの」


 その発言にざわつきの話題は変わる。「大人? 盗賊のことかな?」という声が中から聞こえてくる。

 彼女は声を張って、


「大人は村の大人のこと。実戦班になった人が何でいないかということを村の大人たちに隠して欲しいの。いわゆる……」


 そこで止め、彼女は口に人差し指を当て、口の端を吊り上げる。


「隠蔽班ね」


 かっこいいッ!! という目を何人かがする。

 食いついた、と言いたげにアニスは笑みを浮かべる。


「実戦班は弓を使える人が一人、あとは多数決で一番多くの票を集めた人五人にするわ。選ぶ基準は度胸があり全体的に信用できると思う人」


 それを聞いた瞬間、「俺ッ! それ俺のこと!」と手を上げる男の子が何人か。アニスはそれを見て「はいはい」と流すと、


「多数決は作業が終わるころにやるわ。それまでに各々で心から信頼できると思った人を決めておいて」


 以上、と言って話を終わり、


「ちなみ『俺の時に手を上げろよ』って言って根回しした奴は度胸がないからアウトね」


 それだけ付け加えると作業に戻る。それを聞いて何人かドキッとした顔で作業に戻ったのが見え、カリオスは心の中で「ドンマイ……」と呟き、皆と同じく作業に戻る。


 そして作業が終わったころには真夜中になっていた。


 すべての準備が終わり、全員クタクタとその場に腰を下ろす。アニス、カリオス、ススキも腰を下ろす。

 しかし、アニスはすぐに立ち上がり、


「みんなお疲れさま」


 と礼を述べるとともに、


「お待ちかねの多数決を始めましょ」

『よっしゃあああああッ‼』


 彼女の言葉に歓声が巻き起こる。ついさっきまでくたびれていたのが嘘のようにはしゃいでいる。


「これは期待できるんじゃない?」


 カリオスはこそっとアニスに耳打ちする。彼女は笑い返すが、その顔は疲労感でいっぱいだ。


「アハハ……はぁ。私は年なのかしら」

「同い年もいっぱいいるじゃん」


 アハハ、と彼女は笑う。そして、


「スピーzzz……」


 寝た。


「アニスッ!?……立ったまま寝てる……」


 カリオスは一瞬驚いたが、眠ったと分かるとホッと胸を撫で下ろす。

 驚きの声を聴いてやってきたススキは「あちゃ~」と頭を掻く。


「作戦に夢中になって病み上がりなこと忘れてた」


 とススキはアニスの体を持ち上げると、


「よいしょっと!」


 自然な流れで、


「僕の背中に置くの!?」

「私じゃ背負って移動できないし、仕方ないと思って」

「……まあ、しょうがないか」


 カリオスは「よっ!」とアニスを背負い直すと、


「じゃあ後の収拾は任せていい?」

「え、あたし?」

「他に誰がいるの?」


 え~、と彼女は少しごねるが、


「……まあアニスがそれじゃあ仕方ないか」


 分かったよ、と請け負う。

 それに礼を言うと、カリオスはススキの家に向かって行ってしまった。

 残されたススキはため息を吐く。


「はい。じゃあみんな、推薦する人とその理由を言ってって」


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